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Libya Updates #36: December 2020 Week 2


こんにちは🕊
今週もリビアをめぐる動きを整理します。

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リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進む一方、現地での戦闘を繰り返してきた。


■リビアで起きていること

■先週のアップデート


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1. 国内の動き

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和平へ向けた動きが進んでいる。
国連が中心となり進めている政治交渉の第4回が1日、オンラインで始まった。

メンバーらは3日、首相など高官の任命や選出の方法に関する提言を採決するための投票を行った。案は全部で9つあるという。


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リビアの中央銀行の東西の支部の役員らは7日、会合を開いて物価の安定や銀行の統合に向けた議論を交わした。
2つの支部は分裂状態にあり、両者が集うのは数年ぶり。

両支部はこの数週間の間、リビア国有石油会社 (LNOC) への石油・天然ガス収入の支払いを巡り対立。お互いが虚偽の申請をしていると主張しあっている状態にあった。
国連が中心となり同国の経済の立て直しを目指すワーキング・グループが両支部に対して交渉を行うよう求めていた。


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一方、武力衝突も起きている。
GNA軍は6日、ハフタル勢力の民兵組織が南部のウバリにある軍のアリ・カナ キャンプへの攻撃を行ったと発表した。同軍が反撃し、民兵組織は撤退したという。

GNAが5月にハフタル勢力をトリポリから掃討して以来、同勢力によるアリ・カナ キャンプへの攻撃は初めて。


2. 国際社会の動き

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GNAとイタリアは4日、軍事協力に関する合意を交わし、軍事訓練やノウハウの共有などを共同で行うことを決定した。
両国はリビアから地中海を渡り欧州を目指す移民・難民の移動の管理のほか、国境管理、地雷の撤去などの分野でも協力を行うという。


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GNAは5日、トルコとの安全保障や軍事に関する協力は「合法で国際法に準じている」との立場も表明。
国連リビア特別ミッション (UNSMIL) のステファニー・ウィリアムズ暫定特使が2日、同国に2万人いるとされている外国人傭兵について「リビアの主権に対する恐ろしい侵害」と警告したことを受けたものと見られる。

GNAの外務省でスポークスパーソンを勤めるモハメド・アルカブラウィは、「リビアとトルコの合意はハフタル勢力が傭兵や武器といった形で受けている複数の外国からの支援と同一視することはでいない」と主張している。

トルコはGNAを支援しており、ハフタル勢力による軍事侵攻に対抗するため武器などを提供してきた。これが国連のリビアに対する武器禁輸措置に反するとして、EUなどが批判を続けてきた。
同国は未成年を含むシリア人の傭兵を派遣してきたことも分かっている。


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ハフタル勢力は7日、リビア東部デルナ付近を通行していたトルコの船を拿捕したことを発表した。
同勢力によると船はミスラタを目指しており、17人の船員が乗船していた。9人がトルコ、7人がインド、1人がアゼルバイジャン出身。ジャマイカの旗を掲げていたという。


これを受けてトルコは8日、ハフタル勢力を批判するとともに、報復を行う可能性を示唆した。
同国のチャヴシュオール外務大臣は声明で「リビアでトルコの権益を狙うことは深刻な影響をもたらすだろう。(トルコ船を狙った) 勢力は正当な標的と見なされる」と話している。


ハフタル勢力は10日、船を解放したことを報告した。


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一方、GNAは10日、ロシア出身のマクシム・シュガレイとサミール・ハサン・アリ・セイファンを解放したことを発表した。
2人はロシアの国益や文化を守る活動を行っていると主張する団体「国の価値の保護基金 (Foundation for National Values Protection)」のメンバー。GNAはリビアの内政や選挙に干渉したとして、2019年7月から拘束されていた

解放後、シュガレイとセイファンはロシアへ帰国する予定だという。


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リビアにいる外国人傭兵を巡る動きもある。
スーダンの顧問弁護士、オマール・アルオバイドは1日、UAEのブラックシールド社がスーダン人の人身売買を行ったとして、国内外の10人に対する訴訟を行うことを発表した。
被告となるのはUAEのムハンマド・ビン・ザイド皇太子やハフタルのほか、ブラックシールド社と斡旋に関与したスーダンの旅行会社の責任者など。
アルオバイドは「スーダン政府が容疑者を訴えるべきだが、政府の態度はとても消極的。私が被害者らの利益を代表する」と主張。ICCにも訴えを行う見通しを示した。

国際NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチの11月の報告によると、スーダン人男性少なくとも270人ほどがUAEの企業に「警備員」の名目で雇われ、リビアで戦闘に参加させられていることが分かっている。

トルコのアナドル通信社は8日、UAEがスーダン人の傭兵をハフタルの要請に基づきリビアへ派遣していたことを示す文書の存在を暴いた。
文書はスーダンの指揮官、モハメド・ハマダン・ダガロへ11月6日に送られたもので、スーダンのニヤラからリビアのジュフラ軍事基地へ1,200人の傭兵を送る準備ができている旨が書かれていたという。

UAEはハフタル勢力に対して傭兵のほか、ドローン武器の提供などを行ってきた。
トリポリ近郊で2019年7月に移民・難民の収容施設が爆撃の被害に遭い、40人以上が犠牲となった事件などにも関与したと見られている。


3. 新型コロナ

感染拡大が続く

リビアでは10日 (現地時間) 時点で、累計88,522人の感染者が確認されいている。1週間の新規感染者数は4,435人。日に平均約630人以上の新規感染者が確認されている計算。累計死者数は1,261人で、1週間で61人の増加。


リビアでは5月頃まで、感染者数は数十人規模で推移してきた。爆発的な感染拡大が始まったのは6月で、新規感染者数は増加の一途を辿っている。

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同国の人口は689万人ほど。
情勢不安の続いてきたリビアでは、パンデミック以前より医療保険制度がきちんと整備されていない状態。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月には医療従事者や医療施設への攻撃も多発。6月以降は市民が地雷の爆発に巻き込まれる事態が相次いだ。


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「わたしたちが続けなければ、『彼ら』が力を持つ。ただ殺されるくらいなら、活動を続けるほかない」。現地で平和教育を続けるアジマールさんのお話です。

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