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LIBYA UPDATES: May 2020 Week 2


こんにちは🕊
今週もリビア関連の主な動きをまとめました。

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これまでのリビア
リビアでは、2011年に40年続いたカダフィによる独裁体制が崩壊。その後、新たな政府樹立を巡り国が分断状態にある。
現在は首都トリポリを拠点し、国連の仲介で作られた国民合意政府 (以下GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府(以下HoR)、二つの「政府」が正当性を主張し合っている構図だ。
HoRとつながりを持つハフタル将軍率いる勢力は2019年4月、首都トリポリへの侵攻を開始。GNAに忠誠を誓う民兵組織などがこれに応戦し、軍事衝突へと発展した。 GNAにはトルコ、ハフタル勢力側にはUAE、ロシアなどがつき、軍事支援などを行っている。

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1. 戦闘

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今週も首都トリポリ周辺を中心に戦闘が続いている。

トリポリ郊外のミティガ空港では9日、ハフタル勢力がジェット燃料タンクへの爆撃を実施。

ミティガ空港はリビアで唯一機能してきた国際空港で、商用と軍用両方の用途で使われてきた。3月以降、爆撃の激化により商用フライトの運行は停止していたという。


トリポリでは10日にもハフタル勢力による大規模な空爆が行われている。

南部で武装勢力による水道施設の攻撃も起きたとのこと。ロイター通信がリビア北西部を管轄する水道局に取材して分かった。
近くで激しい戦闘の続くトリポリのアブ・サリム地区に暮らす市民は「生き残るためには逃げなければいけないけれど、一体どこに行けば良いというのか。露頭に迷うことになってしまう。希望がない」と話している。


こうした状態を受けてGNA政府は週の前半、「応戦するほか選択肢がない」との声明を出した。

シラージュGNA首相は同声明で、国際社会が沈黙していることにも触れ、批判した。


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欧州のシンクタンクでリビアを担当する研究者は10日、ツイートでハフタル勢力がトリポリ付近のどこを狙っているのかを示した地図を公開。
軍事的な標的があることもあれば、そうでない場合もあることが明らかになった。

右上のいちばん大きい紫色の丸がミティガ空港、二番目に大きい丸がアブ・サリム地区周辺。


2. 新型コロナと医療施設への攻撃

新型コロナの感染拡大状況

WHO東地中海事務所によると、14日時点で確認されているリビアの新型コロナ感染者は64名。1週間で新規の感染者が確認されていないこととなる。死者も先週からの増加はなく3名

リビアでは検査体制が整っていないことや、医療用防護服の不足が懸念されている。
WHOのリビア代表エリザベス・ホフ氏は2日、「リビアはまだパンデミックの初期段階にあり、感染拡大のピークには達していない」と述べている。検査数が増えなければ、感染拡大の程度や地域ごとの拡大状況を確認することは不可能」とのことだ。


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1週間の間に2度の医療施設への攻撃が起きている。

リビア第2の首都ベンガジで10日、アル・ジャラ病院のICUが無差別攻撃の被害に。医療従事者への被害もあったとのこと。
ベンガジはハフタル勢力側が支配下に置いている地域。


首都トリポリでも14日未明(13日?)、ハフタル勢力が病院を爆撃。病院はトリポリ最大級で、病床の数は925床、働くスタッフは5,000人以上にのぼる。


この攻撃で、少なくとも14人が負傷した。


SNSには爆撃後の病院周辺を映した写真が複数、挙げられている。


英国大使館も非難声明を発表。
「トリポリで昨晩起きた暴力に対して、最大限の強い言葉で避難する」


リビアでは今年、少なくとも17回の医療施設への攻撃が起きている。
国際連合人道問題調整事務所OCHAなどの情報を総合すると、同国では2019年4月以降、医療施設が30回以上攻撃の被害に遭っており、うち半分以上が今年起きたものということになる。


OCHAや国際移住機関IOMは合同で13日、声明を発表。紛争とパンデミックが人びとの命を大きく脅かしていると訴えた。

声明では特に国内避難民、移民・難民、女性や子どもが困難な状況に置かれていることを指摘。紛争に関わる全ての当事者に対して停戦を求めると同時に、国際社会に沈黙しないよう求めた。


3. 国際社会の動き

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中東をカバーするメディアAl-Monitorは8日、トルコがリビアのGNA政府側に送っているシリア出身の兵士たちの中に、未成年が含まれていることを報じた。

シリア関連の人権侵害を記録しているNGO、Syrians for Truth and Justiceのレポートによる。


トルコは最近、医療品などを外交の手段としてリビアやイラク、イラン、パレスチナなどに送っていることも報じられている。


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さらにトルコの外務大臣は12日、UAEがリビアをはじめ中東で混乱を助長させていると非難。

トルコはGNA、UAEはハフタル勢力に軍事を含めた支援を続けていた。両者は先週も批判合戦を展開している。


米国国務省のクリス・ロビンソン氏は7日、ロシアが「リビアの紛争を大きく激化させ、人道的な状況を悪化させている」と批判。

ロシアの民間軍事会社がシリア人を含む800人から1,200人の傭兵をリビアへ送っていたことが先週、国連のレポートで指摘されている


同国政府はハフタル勢力への関与を否定し、GNAも含めた交渉を支援する意思も示してきた。その一方、ハフタル勢力を支援しているとの見方は専門家やメディアからも根強い。

ただしロシア国内でも、エネルギー業界などからはハフタル勢力に懐疑的な声があるとのこと。ある人はAl Monitorに対して「ハフタルこそ建設的な対話と復興を阻んでいる」と懸念を示した。


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今週も最後は、紛争だけではないリビアの写真を共有して終わることにします。


こちらのまとめは自分の1週間のツイートをもとに作っています。
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「わたしたちが続けなければ、"彼ら"が力を持つ。ただ殺されるくらいなら、活動を続けるほかない」。現地で平和教育を続けるアジマールさんのお話です。

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