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Libya Updates #20: AUGUST 2020 Week 3


こんにちは🕊
この1週間のリビアを巡る動きをまとめました。

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リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進んでいるものの、現地での戦闘は収束していない。

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1. 国内の動向

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シルトで軍事的緊張が高まっている。
GNA側をトルコ、ハフタル勢力側をエジプトなどが支援。両勢力は軍拡を続けながら外交の道を模索し、衝突を避けようとしている格好だ。

シルトはリビア北部の中央に位置し、主要な油田へとつながる町。
カダフィが2011年、反体制派に見つかり殺害された場所で、2015年にはISが占領。激しい戦闘の末、GNA勢力が2016年に奪還している。


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リビア国営石油会社 (NOC) は先週、東部地域を中心に停電が続いていることに懸念を示した。
混乱の続く同国ではこれまでにも西部を中心に停電が頻発。だが8月に入ってから、東部でも同様の状態が起きている。停電は12時間ほど続くこともあるという。

ハフタル勢力が今年1月、油田につながる港を封鎖。NOCによると同国は現在、発電所を稼働させるためディーゼル燃料を輸入しているという。


同国の状況について、国際赤十字委員会も懸念を示している。
委員会は20日、紛争と新型コロナウイルスのほか、経済状況が人道危機を招いているとウェブサイトで言及。50万人以上が保険医療に関する援助を必要としていると指摘した。

国際赤十字委員会はリビアの赤新月社とともに、国内で食糧や資金援助のほか、インフラや医療施設に関する支援を行っている。


2. 国際社会の動き

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英国の元外交官が、ハフタルの印象改善を目的とした広告代理店の計画に関与していたことが判明した。
Middle East Eyeによると、元外交官で中東・北アフリカ地域を担当していたジョルヨン・ウェルシュ氏は現役時代に英国の広告代理店コンスラム (Consulum) で一時的に勤務。携わった計画はハフタルをリビアで信頼のおける指導者として押し出すもので、2019年5月にハフタル勢力側が提案したものだという。
同時期にハフタルが開始した軍事侵攻を受け、法的に懸念があるとして計画は白紙となった。

コンスラムは2012年に設立した広告代理店で、中東地域に多くの顧客を持つ。サウジアラビアのジャーナリスト、ジャマール・カショギ氏がトルコの領事館で2018年に殺害された事件後も、同国王室の改革に積極的な姿勢を押し出す支援などを行ってきたとして、批判の対象となってきた。


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英国のマンチェスターで2017年、22名が死亡したテロ事件について、ロンドンの裁判所は20日、主犯の弟の反抗を助けたとしてハシーム・アベディ容疑者に少なくとも懲役55年が課される見込みを示した。

アベディ容疑者は弟とともに、アリアナ・グランデのコンサートで事件を起こすことを計画し、準備を実行した。
兄弟はリビア出身の両親の元に生まれ、犯行の直前には同国に一時的に滞在していた。


3. 新型コロナウイルス

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リビアでは13日(現地時間)時点で、累計9,463名の感染者が確認されいている。前の週から新たに2,852名の感染が確認された格好。1日に約400名の新規感染者が確認されている計算だ。
死者は169名で、1週間で37名の増加


感染者数は5月まで数十人規模で推移していた。爆発的な感染拡大が始まったのは6月。1週間の新規感染者数が前の週を大きく超える状態が続いてきた。

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リビアの人口は665万人ほど。
GNA政府は7月30日、感染拡大防止のためのロックダウンを実施することを発表している。対象はトリポリなど同政府の支配する地域で、同国の一部に限られる。

情勢不安の続いてきたリビアでは、パンデミック以前より医療保険制度自体が弱い状態が続いてきた。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月にかけては医療施設への攻撃も多発。6月以降は市民らが地雷の爆発に巻き込まれる事態が相次いでいる。


4. 移民・難民

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イタリアの内務省は15日、地中海を渡り同国に到着した移民・難民の数がこの1年間で倍以上に増加したと発表した。
同国へは2019年8月から2020年7月までに21,000名の移民・難民が上陸。前の年と比較して148%の増加だという。うち8割以上がリビアとチュニジアから船で地中海を渡っている。

NGOなどはこの1年の間に地中海で5,000名以上を救出している。
ピーク時の2016年から2017年の間には、およそ183,000名の移民・難民がイタリアへ到着。同国はリビアの沿岸警備隊などと協力し、その数は減少に転じた。


リビア沖では17日、移民・難民らを乗せた船が転覆し、少なくとも45名が死亡した。国連と国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR)、国際移住機関 (IOM) が19日、声明で発表した。
今年に入って最も多くの死者が出た転覆事故で、45名の中には5名の子どもも含まれているという。

生存者は37名で、国籍はセネガル、マリ、チャド、ガーナ。地元の漁師らに救助されたとのこと。


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Also read:

リビアの4月からの新型コロナの感染拡大状況を整理しました。
6月20日は世界難民の日でした。リビアの難民・移民について、一緒に考えてみませんか。

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