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とるにたらないもの(たぶん13冊目)

大好きな江國香織さんの、「とるにたらないもの」を大事に大事に読んでいる。たぶん今年13冊目の本。

江國香織さんが「とるにたらない」と感じるものについて書いたエッセイ集。とるにたらないけど、好き。とるにたらないけど、気になるもの。とるにたらないけど、忘れられないもの。そんなモノやコトについて1つあたり2、3ページで書かれている。

この本のことについて考えるだけで心があったかくなる自分に今気がついた。それぐらい好き。

まず、「とるにたらない」っていう日本語が好き。
リズムがいい。Toruni Taranai。
声に出して読みたい日本語。

読んでいて、とるにたらないものこそむしろとても大事なものなのではないかと感じた。言語化するまでもない、語るまでもない、けど好き。

私の大好きな作品に、ドラマ「カルテット」がある。
たぶん5周くらい観ているのだけど、この前見返したときに、
「好きだってことを忘れるくらい、いつも好きです。」
というセリフが大好きだなと思った。
とるにたらないという言葉にはそれに通じるものがあると思う。

描かれているのは日常に結びついているものばかりで、本当にとるにたらないのだけれども、なくなったらとても寂しいのだと思う。

例えば目次に並んでいる言葉は、
「緑いろの信号」「輪ゴム」「小さな鞄」「固ゆで玉子」「りぼん」「日がながくなること」

こうして書き並べていると、緑色じゃなくて緑いろ、カバンじゃなくて鞄、卵じゃなくて玉子、リボンじゃなくてりぼんを選ぶ江國さんが本当に好き。

そして書き出しが素敵。
「無性に好きなものに、輪ゴムがある。」
「ケーキ、という言葉には、実物のケーキ以上の何かがある。私はその何かが好きだ。」
「幸福そのものだ、と思う食べ物に、フレンチトーストがある。」
もうここに私の江國さんに対する好きの全部が詰まってる。

エッセイや短編集はあまり得意ではないのだけど、長編だったら1つしかない江國さんの「書き出し」が1冊でこんなに味わえるなんて幸せすぎる。お得すぎる。

好きすぎて好き好きいいすぎて気持ち悪い文章になってきた。でも私は大好きな文章を読むときはいつもこういう気持ちで読んでいる。

「とるにたらないもの」の話はこの辺にして、次は私のとるにたらないものについて考えてみた。

・小さいいちご
スーパーに並んでいる同じ品種のいちごで、大きいのが少し入っているパックと、小さいのがたくさん入っているパックが同じ値段で売られていることがある。私はそういうとき絶対に小さいいちごがたくさん入っているパックを選ぶ。まず、見た目がかわいい。小さいいちごは木の実感、ベリー感がある。そして味もギュッと詰まっているような気がする。

・コーヒー牛乳
コーヒー牛乳とカフェラテは家で作る分には大体同じものなのに、コーヒー牛乳という名前の方が美味しそうに聞こえるのはなぜだろう。コーヒー牛乳が銭湯っていう幸せ空間とハッピーセットだということ。たぶん。あと親しみやすさ。日本人だから。

・四葉探し
私のおばあちゃんの家の前には、四葉が以上に多く見つかるクローバー畑があった。どれくらいかというと、1時間で7つという記録がある。そして四葉だけでなく五葉や六葉も見つかる。今はもうそこはコンクリ舗装の道路になってしまって存在しない。

とるにたらないものについて考えるの、楽しい。
皆さんもぜひやってみてください。



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