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遺伝子パワー

最近読んだ本でたびたび目にした『行動遺伝学』が気になって『運は遺伝する』という本を読むことにした。

まったく違うタイプの本を数冊読んでいて、その中で出てきた行動遺伝学は、どれも数行程度しか触れられていなかったが、間違いなくその路線はあるということだった。

あるスキルを手に入れるための教書の中では「この手の才能は正直、遺伝が関わる。しかしそうじゃなくても、ある程度まではスキルアップできるから、その範囲の話をする。』という書き方だった。

本当はもうなんだかんだ、人間の知能や才能、行動や思考は遺伝子で決まっているんだろうけど、それを言ってしまったら夢や希望がなくなるから言わないんだろうなぁ、と思う。

しかし研究は日々進み、無視できなくなってきている。どの領域のプロも、遺伝について触れずには育成やスキルアップに関する話ができなくなっている。世の中的にも、音楽の才能は9割遺伝だと聞いて多くの人が納得してしまうし、容姿に関わる仕事なら遺伝の力が存分に発揮されている方が圧倒的にスムーズなことを知っている。

しかし、この本にもあるが、これはかなり風当たりが強い話題である。

努力せよ!挑戦し続ければ、あきらめなければ夢は叶う!誰だって、何にだってなれる!
というメッセージを壊してはいけないから。

しかしこの先100年以内くらいには、この風潮ではないかもしれないし、むしろ「遺伝でしかない」とわかっている研究を世に出さないなんて、できないだろう。

ただ、これが卑下や何かの諦めになるかというと、まだわからない。むしろ、早く明らかにもっと明らかにした方がいいのでは?と思う。

最近見たドラマの中で「私はただあなたの子どもが産みたい」というセリフがあった。初対面でそのセリフから始まる2人の関係は、10年ほど発展するこもはなく、もちろん触れ合う事もない。最終的に相手の男性は、女性に興味がないことを告げる。彼女はショックを受け、もう二度と自分にチャンスがないと嘆いて彼から離れるのだけれど、しばらく時間を置いてあることに気づく。

彼女も「そもそも私はあなたの子どもが産みたいだけ。最初からこれしかやっぱりない。でも私自身、人に触られるのがすごく嫌い。」と言う。

結果、2人は体外受精で子孫を残す選択をする。

これから先、この関係がスタンダードであってもおかしくない。これは少子化対策の立派な案で、かなり現実的かもしれない。倫理観、価値観どうのを叫ばれてしまうから大海原に放たれないだけで。

この遺伝子を絶やしてはいけない、この遺伝子を残しておかなければいけない、というのが人間の本能だとすれば、人間という存在が生き延びるためだけに、この世の人間が生きている気がしてくる。

つまり、天命みたいなのがあるとすれば、遺伝子を受け、その遺伝子を存分に生かすことで楽にスムーズにこの世で暮らし、受け継ぐべき遺伝子に最適な組み合わせの遺伝子を見つけて新しい人間を生み出してこの世を去る。これこそが至極真っ当なのかもしれない。

遺伝子がもつ行動の先、どの要素には顕著に現れ、どの領域が後天的共同環境で突き抜ける可能性があるのか。この本の帯には『いかにこの地獄を生き延びるか?』と書かれていた。今この世を地獄だと思っている人が多いのだろう。明らかにして諦めること、新しい才能に気づけること、眠っていた遺伝子の力を発揮する可能性も見つかるかもしれない。

はっきり言って読みやすくはないけれど、研究結果や論文を読める人にはすごくおすすめです。おもしろかった!

運は遺伝する: 行動遺伝学が教える「成功法則」  (NHK出版新書)

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