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アダルトチルドレン育ちが過保護に育てられた人間と出会って傷ついたこと。

炊き込みご飯といえば私の中では丸美屋の炊き込みご飯である。手作り炊き込みご飯なんて超料理上級者しかやらないと思っていた。


というのも、私の家は両親共に多忙かつ、父は出張と偽り風俗に行き、母は新興宗教にのめり込み家を空けていたので、基本鍵っ子でカップ麺か、菓子パン、もしくは自分で適当に家にある食材で料理して1人で食べる生活が当たり前だった。人より家庭環境が悪いとは思っていたものの、『ちゃんと3食用意されていて大学の学費まで出してもらえてるんだし』とも思っていてそこまで劣等感はなかった。
大学生活が始まって半年。趣味やセンスが似ている良い友人が出来た。彼女も地方出身で一人暮らししていて、私のご近所さんだった。一緒にスーパーで買い物したり互いの家で手料理パーティーをして楽しく過ごしていた。


そんなある日だった。その日も一緒にスーパーで買い物をしていた。その時の私には空前の炊き込みご飯ブームが到来していた。週に1回は必ず丸美屋のとり五目炊き込みご飯を食べていた。炊き込みご飯の素には具材も入っていて炊くだけで他におかずを作る必要もないから、一人暮らしの身としては便利で重宝していた。
かごに入れられた炊き込みご飯の素を見て友人は言った。『炊き込みご飯の素を買ったことがない』と。私はてっきり炊き込みご飯自体をそもそもそんなに食べないor好きではないからそう言ったのかと思った。だから私は『とっても美味しいよ、これ』と言った。友人は『じゃあ買ってみる』とかごにそれを入れて買い物は終わった。
明くる日、一緒に大学から帰る中、彼女がふと漏らした。


『炊き込みご飯、美味しくなかった。お母さんが手作りしてくれるやつの方が美味しくない?』


聞けば、彼女はカップ麺も菓子パンも体に悪いからと親が食べさせずほとんど食べたことがないそうだ。また、彼女の母は専業主婦で料理に凝る人で、家族仲は良好、休日は一緒に料理を作ったりするそうだ。毎日菓子パンばっかり食べてた私と違って彼女は舌が肥えてるんだろうとまず思った。だから〇〇の素のジャンキーさ、レトルト感が不味いと感じたのだ。彼女からしたら〇〇の素とかいうものは不味くて使う意味もないものだし、彼女の中には『時短料理』なんて概念はきっとない。
そして、私にこんなことを言えるということは、そんな家庭が当たり前だと信じて疑わずピュアに生きてきたのだろう。世の中にはお母さんが炊き込みご飯を手作りしない家庭があることに、毎食菓子パンで飢えを凌ぐ家庭があることに彼女は一生気づかない。目の前にいるのに。

何と返せばよいのかわからなかったから

『炊き込みご飯手作りしてくれるの!?お料理上手なんだね、〇〇ちゃんのお母さん!凄い!』

と褒めてみた。彼女は嬉しそうに

『そうなの!お母さんみたいに料理上手くなりたいなぁ』

とニコニコ笑顔でそう答えた。
なんて無邪気なのだろうか。それだけに私の心はずっとチクチクしていた。

帰り道、彼女と別れてから色々考えた。
毎日菓子パンを食べていた自分は異常だったんだと改めて思うのと同時に、『薄皮チョコパン美味しいけどな』と少しだけ思った。


※丸美屋さんの企業努力は素晴らしくとても美味しいと私は感じています。どれもこれも個人の感想です

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