ショートショート 面接

人見知りだということを長所にあげた彼女は、
「故に友達が少ないです」
とアピールし、
「人と目を合わせて話すのは苦手です」
と笑顔で言う。

それから彼女は、
親との関係が上手くいってないことを告白し、
「時折、殺したくなる」
などと正直な思いを述べ、
「親に対する感謝はありません」
とキッパリ言って笑顔を消した。

それに対して面接官は、
「なるほど、そうですか。
まぁ他人の家の親子仲なんてどうでもいいですが、些細なことからの言い合いには気をつけてくださいね。
包丁を手に取る可能性があると思うので、
そこは本当に気をつけてください。
それと長所が人見知りということで人と目を合わせて話すのが苦手とのことですが、
そのコミュニケーション能力の低さについては、止まない拍手を送ります。
素晴らしい、素敵です。
今もまともに目を合わせられない感じは
非常に良い。
人間、もじもじうじうじしているほうが
何かと高圧的に接せますからね。
パワハラしやすいです」
と賛辞を送り、
「それでは短所のほうも教えてください」
となったので、
彼女は声高に、
「短所はありません!」
とキッパリ言い、
「あっても教えません!
自分のマイナスポイントを教えるとか
ありえないです!」
とキッパリ断言していき、
「拷問されても言いません」
とキッパリ強い拒否反応を示しまして、
面接官を思いっきり睨みつけていく。

そこで面接官は、
「じゃあ拷問しましょうか?
シンプルに爪剥ぐやつ」
と言っていく訳ですが、
直ぐさま、
「いや、やっぱり辞めときましょう」
とその恐ろしい考えをやっぱり辞め、
やっぱり辞めたら至って冷静に、
「分かりました、いいでしょう。
短所はないということにしておきます」
と告げ、
「それでは、
今まで楽しかった出来事はなんですか?」
と聞いていきましたので、
彼女は迷いなく、
「小三の時にやったピンポンダッシュです」
と答え、
「今思い出してもニヤケが止まらないです」
と続けまして、非常にニヤニヤをしている。

それを聞いた面接官は顔をニヤッとさせ、
「小三ならではですね」
と言い、
「小四で滑り台を占拠ですよね」
と投げ掛けたのですが、
その瞬間、
彼女は笑顔を消し、
「意味わかんないです」
と言って全く共感せず、
「滑り台はみんなの物です」
と冷淡に言ってのけ、
「自治体も同じ気持ちだと思います」
としっかり批判の声を上げ、
目の前の面接官を睨みつけていく。

しかし、
そんな眼差しを向けられても意に介さない面接官は、顔色ひとつ変えず続いて質問に移り、
「将来の夢はありますか?」
と問うてきたので、
彼女はまた口角を上げ、
「お金持ちになりたいです」
と言い、
「お金が全てみたいな人を目指してます」
と正直に話し、満面の笑みを浮かべる。

その満面の笑みに
満面の笑みで返していく面接官は、
「そうですか、良い夢ですね。
私もお金持ちには憧れます。
お金持ちになってめちゃめちゃ貯金したいっていうのが私の憧れです」
と語り、
「お互い頑張りましょう」
と声を掛けていった訳ですが、
彼女はその声掛けに、
「嫌です」
即答し、
「頑張らずに運だけで成り上がりたいです」
と正直に述べ、
「風水だとかパワースポットだとか、
運を呼び込む努力もしない形での
運の上昇に期待してます」
と自身の運に期待をかけ、
「誰か兆くれないかなぁ。
億でもいいんだけど、できれば兆がほしい」
と大きな独り言を言い放ち、
「更にできることならば、今日ほしい。
今日しあわせになりたい。
今日財力を手にしたい」
と言って、
「だから結局」
とかなんとか独り言が止まらない。

その様をあたたかい目で
あたたかく見守っていた面接官は、
「美しくて、鮮やかで、綺麗な願望ですね」
なんて言って、あたたかい言葉を掛けていき、
「では最後に、何か質問はごさいますか?」
と彼女に問うていった訳ですが、
彼女は、
「あるにはありますけど……」
と言ったあと、
「別にしなくてもいいかなって感じなんで、
ノークエスチョンとさせていただきます」
と言い、面接官から、
「気になるなぁ。
あるにはあるって気になるなぁ」
と言われたものの、
と言った面接官が、
「でもまぁ、気にしないでおくのも一つの手だと思えば気にならないか。
じゃあ質問は無しということで」
と気にしない方向に歩みを進めまして、
「では、お疲れさまでした。
結果は後日お知らせします。
何がなんでも後日お知らせします。
ウチはもうずっと後日でやってきましたから、
後日以外はあり得ないです」
って念を押し、
最後に、
「神に祈ることをおすすめしますよ。
神はいつでも我々を見守ってくれてますからね。神への祈りは大切です」
とアドバイスを送った。

って訳だけど、
彼女は、
「嫌です」
と直ぐさま首を横に振り、
「圧倒的に嫌です」
とまで言ってみせ、
「神様に頼らない形での
良い知らせを待ってます」
と神様にお助け願うことを拒み、
「ありがとうございましたと言える人間じゃないので、本日はどうもという言葉で勘弁してください。それじゃ、本日はどうも」
と頭を下げ、部屋を出ていきました。

そして面接官は、
「はぁ……コーヒーでも飲もっ」
って言ってました。

ということで、
そんなどこかの面接の
一部始終をお送りしました。

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