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着物ってなんであんなに高い?

新年明けましてあめでとうございます
今年もどうぞ宜しくお願いいたします!

さて、1月11日は成人の日ですね
成人式といえば、そう「振袖」です

(今年は成人式の中止を決めた市町村もあるとか・・・
私も卒業式で袴を着ることは叶わないだろうと諦めています涙)

私も数年前、振袖を着て成人式に参加しました

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今でこそ成人式でのきもの着用率はほぼ100%ですが
実は「振袖を着て成人式」と言うのは
【この40年で定着した文化】なんです
(ちなみに花火大会で浴衣も最近の文化)

実はこの振袖は

「何度か着るならレンタルよりお得!」
「将来自分の娘にあげることができるから」

と母が買ってくれたものです

しかし、私は心の中で

【何でこんなに着物って高いの!?】

と愕然としていました・・・。

今回は着物は何であんなに高いか問題についてお話ししていきます

振袖:未婚女性が「ハレの日」に着るきもののこと
   煌びやかで袖が長いのが特徴

今回の記事は『きもの文化と日本』日経プレミアシリーズを参考にしています


■着物が高い理由①:素材が絹(シルク)

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着物の素材のほとんどが絹でできています

蚕が作った繭をほどき、糸にし、
それを織ることで初めて布になります

手間をかけて作った絹の布地は独特の光沢を持ち
「繊維の宝石」と呼ばれるほど昔から重宝されてきました

「そっか、絹だから高いのか」
と納得してはいけません

元々着物の素材は木綿・ウール・麻など
バリエーションがありました
(現在一部のメーカーではこれらの素材も扱っている)

【着物は必ずしも絹で作らなくてもいいんです】

「いやいや、特別な時に着るものだから
良い素材のもの選びたいじゃん」

と思われるかもしれません
勿論、意図的に絹を選ぶのは悪いことではありません
私もハレの日に麻より絹を着たいと思いますからね

しかし、「絹だから高くて当然」
その認識を利用して高い価格設定をしている呉服屋が存在します
(勿論全てではありませんが)

・シルクのシャツ 9900円(100グラムの絹)
・着物には1000グラムの絹が使われるから9万9000円
絹が沢山使われるから高い(シルクのグラム=衣服の値段)
**こんな価格設定は他のアパレルではされません
『きもの文化と日本』より

そして絹だから高くて当然、
と着物を販売する小売メーカーは
「着物は特別な日のためのもの」
だから高価で当たり前と考えていることが多いのです

■着物が高い理由②:着物のフォーマル化

「着物は特別な日のためのもの」
というのは呉服屋の戦略です

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明治時代以降洋装が広まり、
昭和以降は着物を着る人は少数派となりました

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鬼滅の刃公式から配布されたヘッダーです。

それまで着物は日常的に着られている服でした
大正時代をテーマにした『鬼滅の刃』でも
多くの登場人物が着物を着ています

‪禰󠄀豆子‬も普段着として着物をきていましたよね

現在の形の着物が定着したのは江戸時代
小袖(元々は十二単の一番内側の肌着)が大衆の普段着として定着し
服(着るもの)といえば小袖というのが定番でした
次第に小袖は着るもの、つまり「着物」と呼ばれるようになります

着物が着られなくなったのは昭和以降のことになります

洋装が一般化し、着物を着る人が少なくなった時
呉服屋は着物を売る方向性を「フォーマル」に向けました

着物を日常着として売るのをやめ
特別な日に着る、つまり「フォーマル化」を進めました

これには洋服に日常着という市場を占領されていく中
着物は日常着で勝負するのではなく、
【着物はフォーマルで勝負する】と呉服屋が考えたことにあります

日常着であれば消費者は定期的に購入します

しかしフォーマル用の服の購入頻度は高くありません

そこで利益を出すためには
「安いもの」を何度も売る(薄利多売)ではなく
「高いもの」を数回売る(厚利小売)を目指しました

また、フォーマルというのはルールがつきものです
「こういう形式でないといけない」
とすれば呉服屋も着物だけでなく他の装飾品
(長襦袢や足袋、帯など)も自然に勧めることができます

また「特別な日の為だから」と勧められたら
高いものでも人間買ってしまいますよね

着物=フォーマルであることは着物の値段をあげることになるのです

■着物が高い理由③:古い流通システム

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着物の値段ってどのように設定されるか正直素人にはわかりませんよね

特に大半の消費者は「よく分からないけど着物=高いもの」と認識しています

理由としては上記の着物が高い理由①②であげた
「絹だから高い」「フォーマル着だから高い」
と説明されてきたことにあります

ここで【着物が高い最大の理由:流通システム】についてお話しします

上の図は消費者に着物が届くまでの流れです

①着物は糸を染め、②その糸で布を織り、
③二次加工(生地を湯通しして防染糊を落としたり、刺繍をしたり、金銀の箔をつけたりする)を経て反物になります

そして反物は④メーカーから産地問屋に卸されます
この産地問屋は減少傾向にありますが、
有名なのは西陣・十日町・沖縄・米沢などです

その後⑤産地問屋から大都市に存在する前売問屋へ卸され
⑥前売問屋から地方問屋もしくは呉服屋に卸されます

そしてこの流通にはマージンがかかります

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一般的に産地問屋から前売問屋へ卸す時
産地問屋は20%のマージンをつけて売ります

前売問屋から地方問屋へ卸す時
前売問屋は35%のマージンをつけます

そして地方問屋から呉服屋へ卸す時
地方問屋は20%のマージンをつけ

呉服屋は消費者に売る時
50%のマージンを乗せます

【仮に職人が10万円で反物を売ったとしたら、
図のように消費者に届く頃には約30万円になる】
のです

この流通システム自体は江戸時代に確立され
当時は非常に効率的で画期的なものでした
(交通の便が悪い時代、問屋は流通の重要な鍵であった)

しかしながら時代は変わったにもかかわらず
そのシステムがいまだに変わらないのに加え
マージンも昔のまま・・・
(Amazonプライムが当日・翌日配送の時代です)

だから着物は高くなってしまうんです

■まとめ

以下3点「素材は絹」「着物のフォーマル化」「古い流通システム」から着物の価格が他の衣服に比べて高いことをお伝えしてきました

本記事は着物は高いから良くない!と言っている訳ではありません

着物は一枚の布に画家が絵を描きつくられます
したがって【絵画を着る】なんて言われ、
とても素敵な日本の服です

そんな着物が何でこんなに高いのか、
という点を知っていただけたらと思いこの記事を書きました

「他のアパレルだってぼったくりだ!」
「商社だって問屋みたいに中抜きしている」

なんて批判もされそうですが、
その点に関しては私も勉強を進め、
商社の役割をしっかり考えていきたいと思います

ここまでお付き合いいただきまして
ありがとうございました!

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