テレンス・タオさんの記事を訳しました

こんにちは。飯田龍成です。今日は世界的な数学者でフィールズ賞も受賞されたのテレンス・タオさんのブログの記事のひとつを日本語訳しました。原文のリンクはこちらです。間違い・誤植などありましたら指摘して頂けると助かります。

高校生の拙い訳と思ってください。


この記事は、「ギフテッド教育」と呼ばれるアメリカを中心に行われている英才教育を話題として、テレンス・タオさんが教育について論じたものです。



ギフテッド教育についての助言


もし息子や娘にただ一つの贈り物ができるとしたら、熱意にしなさい。/ブルース・バートン

教育とは複雑で、多面的で、繊細な過程であり、ギフテッド教育も同じです。私はギフテッドを与えられた子供に対するどんな「銀の弾丸(*1)」に対しても用心します。それが専門学校であっても、個人指導であっても、ホームスケーリングであっても、飛び級であっても、なんであってもです。そこにはすべて優位や劣位を伴う選択肢があり、そして様々な子供、親、学校の要求や好み(学術的なものも学術的でないものも)に対して検証する必要があります。それぞれの子供においてこれは大変違ってくるので、私はギフテッドの子供に対して何か適確な助言を与えることはできません(特に、たくさんのすでにあるやるべきことと大量の依頼があるので、ギフテッド教育のどんな質問に対しても個人的に答えることはできません)。

とはいえ、一般的な助言を少しばかりすることはできます。まずはじめに、正確で人為的な基準、たとえば基準Xを高尚な直感Yに導かれてZ年以内に獲得しようなどというものであったり、Aだけの点数をBというテストでC歳までにとることであったりといったようなものに、あまりのめり込まないことです。長い目でみれば、それらの努力は子どものキャリアにとって最も大切で決定的な瞬間にはなりません。それに、そのような目標に向かう過剰な努力によって得るかもしれないどんな短い期間での優位も、そのようなゴールが持ち去った子どもの社会的、感情的、学術的、身体的、内面的成長などの子どもの他の側面を持ち去った時間やエネルギーに追い越されてしまうかもしれないのです。もちろん、望むのであれば子どもはかつ厳しく活動し、かつ競技に参加すべきでしょう。しかし競技や学術的な達成はそれ自体で終わるように捉えられてはいけませんし、むしろ子どものその分野の才能、経験、知識、楽しみを発達させる方法として捉えられるべきなのです。

次に、私は自分の取り組みを楽しむことが大切だと感じています。それが彼彼女のキャリア期間を通してその人を支え、その人に働きかけ、追い詰められて燃え尽きることから身をまもるものです。もし善意の親が、あまりに強く(あるいはあまりに弱く)子どものある分野の才能の発達を推し進めてしまうことで、間違えて子どものその分野に対する愛情をかき消してしまったら、それは悲劇です。子どもの教育の速度は親の熱望よりも子どもの熱望によって推し進められるべきなのです。

みっつめに、親は子どもの努力や達成(子どもが思う通りにできるもの)を褒め、生まれつきの才能(子どもが思う通りにできないもの)を褒めないことです。このポ・ブロンソンの記事(*2)はこの点を見事に説明しています。アメリカの「賢い子どもの育て方(*3)」という似た視点の記事もまた読んでみてください。

最後に、人は自分のゴールについて柔軟でなくてはなりません。子どもはXという分野で最初は天才かもしれませんが、Yという分野がさらに楽しかったりさらに適合していると決めることもあります。それはたぶん、たとえYという分野がXより「あまり高尚でない」としてもより良い選択でしょう。ときにはあまり知られていない分野ですが適任で居心地の良い分野の方が、「アツい」が激戦分野で向いていない分野の方がいいものです(リカードの比較優位の法則(*4)を参照してください)。

私自身の教育については次の記事(*5)に議論されています。私の中に方法を見つけるのはとても嬉しいことでありますが、一方で私は再びそれぞれの子どもにそれぞれの状況、強さ、そして弱さの違いがあること、そして私の経験が続く他の人たちにとって必ずしも最適の規範でないかもしれないことに警鐘を鳴らすことにします。

ギフテッド教育の専門の助言については、CTYを参照しました。私のキャリアアドバイスのページも見てください。

*1 実際にはあり得ない一発解決法。

*2 http://nymag.com/news/features/27840/

*3 https://www.scientificamerican.com/article/the-secret-to-raising-smart-kids/

*4 https://en.wikipedia.org/wiki/Comparative_advantage

*5

• “Terence Tao”, Ken Clements, Educational Studies in Mathematics, August 1984, Vol. 15, No. 3, 213-238

• “Parental involvement in Gifted Education”, Billy Tao, Educational Studies in Mathematics, August 1986, Vol. 17, No. 3, 313-321

• “Radical Acceleration in Australia: Terence Tao”, Miraca Gross, G/C/T, July/August 1986

• “Insights from SMPY’s greatest former child prodigies: Drs. Terence (“Terry”) Tao and Lenhard (“Lenny”) Ng reflect on their talent development”, Michelle Muratori, Julian Stanley, Lenhard Ng, Jack Ng, Miraca Gross, Terence Tao, Billy Tao, Gifted Child Quarterly, Fall 2006, Vol. 50, No. 4, 307-324


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