西河理貴(ニシカワリキ)

まだ何者でもありません

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  • ぼくを燃やして残るもの

    読んだ本とか見た映画とかの感想(論評)を書いていこうと思いました。個人の感想なのでお手柔らかにお願いします。

  • 【光原茉理の日記】

    ネットの深淵より発掘された、ある「事件」の真実に迫る、一人の──あるいは二人の、少女の日記。 ※『NovelJam2018秋』にて執筆した小説『【大好き】センパイを双子コーデでコロしてみた!』のサイドストーリーにあたります。併せてご購入いただくことをおすすめします(https://bccks.jp/bcck/156977/info)。本編と本作を同時収録した『舞台化記念版』もございます(https://bccks.jp/bcck/157106/info)。

最近の記事

書評#1 「月山」(森敦)──私小説的冥界譚という試み

ちょっとくれえ生きてる証拠を見せておかないとほんとうになにもせず死んでいくのではないかと思われていそうなので、2022年はすこしはnoteの更新をしていこうと思っている。ほんとうは年明けすぐに所信表明的なこともしようと思っていたのに気づいたら1月が終わりそうで唖然としている。開いた口が塞がらないまま1月が終わっては事なので、大急ぎで口を閉じて書き始めている。 社会問題とかには実作に落とし込んで首突っ込むのがワナビの流儀だと思っているので(自意識に絡めとられるくらいなら捨てた

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    • 劇団はるさめ『仮葬空間』に関する重大なネタバラシ、あるいは感染症禍における演劇について考えること

      この文章には、劇団はるさめ第2回公演『仮葬空間』(2020年12月26, 27日上演、下北沢・空間リバティ)に関する重大なネタバレが含まれております。 すでにご来場の意思が固い方は、ご覧いただかなくても問題ありません(ご興味があればご観劇後にお読みください)。 もしまだ本公演をご存知ない方、もしくはご来場に迷いがあり、その原因が主にこの情勢にある方、「こんな時期に舞台なんてけしからん」とお思いの方は、ぜひご一読ください。 結論としてたとえこの感染症禍がどれだけの困難を

      • 在宅ワーカーに教えたい、作業効率を爆上げするたったひとつの冴えたやりかた

        ツイッターなんか見てないで手を動かせ

        • 【1月31日 08:46】

           わ、昔の日記が出てきた。しかもちょうどぴったり1年前で止まってた。こんなグーゼンってある!?  最後の日記、由貴が出て行った日だったね。もう終わりにしよう、って言ったら、由貴はわかってたって顔でうなずいて、いそいそと荷物をまとめて出て行った。2LDKに残されたわたしはひとりぼっち、この広い家を持て余して暮らしてきたよ。  いまごろ由貴はどうしてるんだろう。あれから一度も連絡取ってないな。さみしくないって言ったらウソだよ。心にも一部屋ぶんスキマがあるみたい。  なんて、

        書評#1 「月山」(森敦)──私小説的冥界譚という試み

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          【1月31日 00:52】

           丸1日ばかり涙が止まらなかった。流石にもう枯れて、泣き疲れて倒れるように寝ていたら、もう1日経っていた。目をさましてからは、からっぽの頭で終わりのことばだけを考えていた。締め切った部屋で、そんなふうに時間感覚もなくしていたから、携帯見るまで日付がわからなかった。もう31日になっていた。  カーテンの隙間が白かったからたぶん今朝方、出かける直前だっただろうか、由貴がわたしの部屋の扉に向かって、小さく「センパイ」と呟いたのが聞こえた。ちょうど扉に背を預けて、由貴のことを考えて

          【1月28日】

           耐えられなかった。話している合間にもおかしくなりそうで。  鏡に話しかけてるみたいで、気持ち悪くて。もうだめだ。  なみだがあふれる。  だmふぇだ ▼

          【1月27日】

           まだ整理はできないけど、流石に聞かないといけない、と思ったけど、やっぱりまだ由貴の顔を見るのが怖い。今日も会わないようにした。ごめん、米だけは炊いたから。 ▼

          【1月26日】

           MAYUの動画が上がっている。  なんで? わたしは撮ってない。由貴とルームシェアしてから、一度も。  なのに、わたしの部屋で、わたしがしゃべっている。  わたしがいる。MAYUがいる。  コメント欄、MAYUちゃん復活キターーーーーじゃないんだよ。  来てない。本当に。なんで?  なんでって、一つしかない、答えは一つしか。  これは由貴だ。  よく見たらアカウントもわたしのじゃなくて、新しく作り直したらしい。作り直してから、もうすでに10個以上動画をあげて

          【1月25日】

           積ん読完全消化! やったね。 『帰りゃんせ』やんちゃな男の子が、ちょっとした反抗と不思議な出会いから、最終的に恐ろしい目に遭ってしまう、怪談チックなお話。というか、怪談だな、これは。童謡がモチーフって、ジミ〜に夢に出そうな、絶妙な不気味さなんだよね。しかも一瞬救われそうになって救われないENDの後味……いや、怪談なんだから大成功だよ、これは。 『異世界? いかねえよ。』タイトルの通り、いわゆる異世界モノへのアンチテーゼ。妖精が執拗に勇者転生を勧めてくるのに、頑なに応えな

          【12月26日】

           大学は今日で終わり。正確言えば、授業はないけど、今日までのレポートが残ってた。それもいま提出したのでオッケー。これで終了。  ホント正確悪い教授もいたもんだよ。土日がクリスマスだってわかってて締切今日にしたでしょ。おかげで私は寝る間も惜しんで(ただの昼夜逆転だけど)レポートにとっかかって、由貴は暇だからってぷらぷらどっかいっちゃって。一緒にどっか行きたかったなー、せっかくだし。  まあ、逆算してちゃんとやっておかなかった私が悪いんだけどね。  でも、いいこともあった。

          【12月16日】

           由貴がパーマあてたの初めてだっていうので、じゃあ保湿とか洗い流さないトリートメントとかしたほうがいいよってことで、わたしのストックをあげた。  やっぱり、別人だよ。わたしと由貴は。似た者どうしかもしれないけど。私は由貴みたいに、心の底から嬉しくて、って感じの笑い方、したことあるかな。きっとないと思う。あの子は、わたしが何かしてあげるのが何よりも嬉しいみたい。そういうのって、わたしにはないから。しいて言えば、そんなふうに由貴が笑ってくれるのが嬉しいかなー、って、安っぽいドラ

          【12月15日】

           慕ってくれるんだったらいいことじゃない、一緒に暮らしてるんだから……って、1日かかったけど、思うことに決めた。なんかいも似たようなことは言ってる気がするけど、でも、そうするしかないじゃない。わたしは由貴を信じるしかない。  あんまり寝れてなかったからちょっとフラフラしながら朝ごはん作ってたら、由貴が静か〜に今に入ってきた。恐る恐る入ってきたんだと思うけど、ドアがきしんだ音がしたからわかる。  向こうはなんで私がきのうああだったかもわかってないでしょ。円満にやっていきたい

          【12月14日】

           怖くなった。ドアを開けて入ってきたのが、わたしに見えた。  それが由貴だと気づくまでにはしばらくかかった。今のわたしと同じ髪型。このあいだ美容院に行った。そう、11月30日。日記にも書いた。水曜日がレディースデーだし11月までのクーポンがあるしって。(最近は伸ばしてたから、久々に肩口で揃えた。)  由貴は最近伸ばしてたし、パーマも当てたことないって言ってた。やるとしてもわたしに相談してからだと、すっかり信じ込んでたのかな。そういう驚きもあるけど。  それ以上に、怖かっ

          NovelJamを終える前に 〜1万字の意味と、キャラクターという名の球体〜

           久しぶりの更新がマリ日記でないことについては、関係各位、楽しみにされている読者諸君(どれくらいいるのかはまったく不明だけれど)に大変申し訳なく思っている。だが、「これはいまのうちに書いておかなければ後悔するぞ」という気持ちが、行きつけの銭湯で茹っているあいだにふつふつと湧き上がってきた。その勢いに任せて、明日の元気を犠牲にしながら書いている。 はじめに(という名のエクスキューズ) NovelJamという刺激から未だ醒めることができない。それはグランプリの発表を今週末に控え

          NovelJamを終える前に 〜1万字の意味と、キャラクターという名の球体〜

          【11月25日】

           学科の飲み会があるとかで、めずらしく由貴の帰りが遅かったんだけど。帰ってきた由貴もめずらしく、ベロンベロンって感じで。  リビングでテレビ見てたら、ふらふら寄ってきて。センパイ、お正月は実家に帰るんですかーとかなんとか、ふにゃふにゃ言ってて。わたしは適当にあしらってたんだけど。酒臭いし。  そしたら由貴、センパイなんでそんなにいいにおいするんですかーって言うのね。 「シャンプーかな、柔軟剤かな。でも、わたしも同じの使ってるんですよね。同じにおい、してますかね?」  

          【11月6日】

           さてさて、今日は積ん読を消化していくよ。 『リトルホーム、ラストサマー』。家族や友人とうまくいかず、居場所がないような空虚さを感じながら生きている若者たちが集う場所が、ある喫茶店。主人公はそこで出会った人々に影響されながら少しずつ前を向いて生きていけるようになる、という話。  これは長編読んでるみたいな、濃厚な読後感がすごい。今までの「長編にできるプロットだなー」というのとはまた違う。作り込まれたシーンが、ぎっしり、狂いなく詰め込まれてる。梅雨が明けたばかりの夏の晴れ間