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私的2023年度優秀絵コンテ賞発表!!!


企画内容


2023年度、米アカデミー賞では、山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』が視覚効果賞を獲得。また宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』が長編アニメーション賞を獲得するという嬉しいニュースもありました。

それに便乗するわけではないですが、私的なアカデミー賞というか、私が2023年に放送されたTVアニメの中で非常に絵コンテが優れていたと評価するものをここに列挙し、自己満足でしかないですが、ささやかな祝福をこの記事で送りたいと思います。


優秀絵コンテ賞 ノミネート作品


1. 2023年冬アニメ『ヴィンランド・サガ SEASON2』より


#07 「鉄拳ケティル」絵コンテ 松林唯人(以降敬省略)

短評:「ラストシーンのアルネイズの心情描写が良い」

#13 「暗雲」 絵コンテ 川尻善昭

短評 :「アルネイズとエイナルの会話シーンの視線と位置関係、天気を使って各キャラクターの心情を効果的に演出できていた。」

#15 「嵐」 絵コンテ 内田信吾

短評:「サブタイトル通り、嵐をアルネイズに内に秘める感情に重ね合わせ、演出できていた。」

2.2023年春アニメ 『スキップとローファー』より


#08 「ムワムワ  いろいろ」 絵コンテ 山城智恵


短評:「梨々華と聡介の心の距離、過去の過ちによる二人の分かり合えなさを階段の段差や影、位置関係の反転というイマジナリィラインを意図的に超えることで、梨々華の微細な心境を効果的に演出できていた。」


3. 2023年夏アニメ『呪術廻戦 懐玉・玉折』より


#25 「懐玉」#29 「玉折」絵コンテ 御所園翔太


短評:「#25は、原作漫画で説得力が不足している部分を演出で補い、
一期シリーズとは、別物のアニメーションを見せてもらい、大変、興奮した。また、#29では、夏油と九十九の会話シーンを非常口などのオブジェクトと雨を使って、夏油の心変わりを丁寧に描写して見せた。優秀な演出家の誕生を見ることができて嬉しかった。」


4. 2023年夏アニメ 『無職転生Ⅱ~異世界行ったら本気出す~』


#00 「守護術師フィッツ」、#01 「失意の魔術師」 絵コンテ 平野宏樹


短評:「一期シリーズの絵コンテを見てからは、ずっとその実力を評価していたが、オブジェクト(描かれている物体)を効果的に使って、キャラクターの心情を表現する演出法が素晴らしい。特に良かったのは、#01 冒頭でのサラの心情を持っている弓矢の扱いで魅せた所。」


5.2023年秋アニメ『呪術廻戦 渋谷事変』より


#37 「赫鱗」演出協力 青木youイチロー


短評:「駅構内にあるオブジェクトを使い、独創的な演出を施した。また、ネオン管を中心とする色彩への意識も面白い。良い意味で”汚上手い”演出でTVアニメをハックして自分の世界を表現していた。」


6.2023年秋アニメ『オーバーテイク!』より


#04 「過去と後悔 」絵コンテ 北村翔太郎


短評:「雪平から孝哉の過去を主人公の悠が聞くシーン。窓辺から指す光に雪平が背を向け、後ろぐらい話を始めることと何も知らない悠には西日を浴びせ、何も知らないことも同時に演出。また、孝哉を分かってあげてほしい雪平の気持ちを悠の隣に腰かけることも演出。一連のシーンにおける話している台詞と行動で心情を演出できていた。非常に巧みである。」


#09 「厄災の日」絵コンテ 加藤誠


短評: 「トンネルを使って孝哉と悠にあった蟠りが解かれる様子を効果的に演出できていた。そして、孝哉が何をすべきか決心がついた時には、トンネルを抜け、少々の不安が残っている心情もその後の曇った空をアップにして見せることで演出していた。この回も巧みな演出だった。」


最優秀絵コンテ賞


おめでとうございます!


総評:「間違いなく、2023年度最も優秀な絵コンテだった。放送開始前のPVを見た時、「雨音が拍手に聞こえる。これは優れた演出家が携わっているのでは」と予期したがその通りだった。古いビデオカメラのような画面を使った一期シリーズの過去篇を描くことを強調する時代性への意識。歌姫が怖がりながら、扉を開けるシーンでは何かがそこにいるような、ベッドの下から歌姫を映すホラー映画のようなアングルの上手さ。不必要な大きさにせず、足音と環境音のみで薄暗い雰囲気も演出。ループする冥冥と歌姫を定点で観測するタイムラプス的演出。戦闘シーンでの呪霊を使って飛行する夏油へのカメラワークは、天内理子を抱きかかえながら、敵への注視を辞めない夏油の視点になっていた。そして、最も驚かされたのは、バスケットボールを五条と夏油で1オン1するシーン。非凡な才を持ちながら、五条とは天と地の差がある夏油は、「強き者が弱者を助ける」を信念にするが、五条はそれを良しとせず、弱者への嫌悪感を主張する。この二人の考え方がこれからどう変化するのかをこのシーンで表現しようとした。夏油は、律儀にボールを弾ませ真面目にプレイしようとするが、ゴールを決めることが出来ない。これは、夏油の信念がその後、変化し得る危険性を示唆していた。また五条は自殺点を能力を使って決め、二人の立場=コートのサイド=二人の信念が反転することを示唆するものになっていた。そう。このアニメオリジナルのシーンで御所園翔太監督は「懐玉・玉折」の結末を描いていたのだ。それも掴みの第一話で。この回を見た時、私は戦慄した。「こんな才能がいたのか!」と。この回を超える絵コンテ・演出は2023年度には存在しなかった。非常に有意義な23分間で体が火照ったことを今でも覚えている。最優秀絵コンテ賞受賞おめでとうございます!」


最後に


もしこの記事を見かけたなら、スキをしていただければ私の励みになるし、コメント欄にこの記事を読んだ感想も気軽に書き込んで頂ければ、返信させていただきます。是非ともよろしくお願いいたします


そして、来年の今頃になるかと思いますが、2024年度版も書きたいと考えていますので、応援よろしくお願いします。

最後にフライング情報として、2024年の冬アニメ『ゆびさきと恋々』は、
ノミネートするつもりです。村野佑太監督の絵コンテも非常に優れたものでした。2024年のTVアニメの中からまた素晴らしい絵コンテと出会えることを期待して記事を締めさせてもらいます。

ご拝読ありがとうございました。




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