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『若い読者のための文学史』文学の存在意義や魅力とは

イェール大学出版局「リトル・ヒストリー」シリーズの日本語版。ジョン・サザーランド著、河合祥一郎訳。著者はイギリスの英文学名誉教授。翻訳者はシェイクスピア研究者として知られる。

タイトルには「文学史」とあるが、主に英語圏や西洋の文学を扱う(村上春樹への言及は少しあるが)。

おおむね古い時代から順に記述しているが、文学史を網羅しているわけではない。また、詩人や作家の紹介のほか、「印刷・出版・著作権」「変貌する読者層」「文学と検閲官」「文学と映画、テレビ、舞台」「賞、採点、読者グループ」といったテーマも設けている。

文学を読もうとする動機のきっかけにはなるかもしれない。著者はイギリスらしく(?)皮肉をところどころで利かせているが、それを差し引いてもやや女性蔑視のきらいがある。

文学とは、私たちを取りかこむ世界を表現し解釈する最高の人知であると言うべきか。最高の文学は決して物事を単純化せず、複雑な世界を受け入れられるように、心と感受性を広げてくれる――たとえ読んでいる世界に必ずしも同意できなくても(そういう場合が多い)。
なぜ文学を読むのか。なぜなら、ほかのどんなものにもできないやり方で人生を豊かにしてくれるからだ。読むことで、さらに人間らしくなれるからだ。そして、じょうずに読めれば読めるほど、より多くの恩恵が得られるのである。
(p. 14)

文学だからできること。文学にしかできないこと。そういうことはあるのか、ないのか、どちらでもいいのか?


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