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【連載】かくれ念仏/No.7~甑島の一字一石経~

甑島の一字一石経

愛川欽也がナレーションを務める、鹿児島県庁フィルム『太陽の旅(9)伝説の島〝甑島〟』によると、鹿児島県薩摩川内市甑島では、海岸沿いに真宗の聖教の一文字一文字が写経された小石が落ちているという。

映像を見てみると、どうやら正信偈を書いているようで、この石を勤行や説教に用い、法座が終わると、石を裏返して隠したという。

これは、史学的に分類すれば、「一字一石経」というものになる。

一字一石経とは、埋蔵経の一種で、経典をひとつの小石に一字ずつ書写し、追善供養などのために地中に埋めたもので、特に江戸時代に盛行した。
民俗学的なフィールドだろうが、真宗の一字一石経のサンプルはほかにもある。

『親鸞聖人史跡伝説伝承―東国に語り継がれる物語―』(真宗大谷派東京教務所)の12~16頁に、「花見岡の大蛇救度・室の八島明神」と題して、親鸞が浄土三部経の読経と一字一石写経によって大蛇を救度したという栃木県下都賀郡の伝承が掲載されている。

また、東本願寺DVD「親鸞の道 下巻」の「第21回 親鸞が通った鹿島神宮 茨城県鉾田市鳥栖 無量寿寺」に収録されている片岡順暁住職の談によれば、親鸞が鹿島神宮へ向かう道中、女性の霊に出会い、その霊を慰めるため、浄土三部経を石に一文字ずつ書いて、霊は往生した、という話があるという。(2021年1月21日、無量寿寺の本堂、庫裏、書院が焼失したというニュースはあまりにショッキングだった)

ほか、一字一石経ではないが、鹿屋市花岡の穴水のかくれ念仏洞には、石に願い事を書いて念仏洞の前に埋めると、その願い事が成就するという言い伝えがあるという。

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