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10年早く産まれて、10年早く出会っていたら

【短編小説】

 きっと俺だけじゃないはずだ。

『もし』があるのなら誰だって想像したことはあるだろう。おぎゃあと産まれて、子供が大人へと成長する中で恋を覚えるのはいつ頃だろうか。幼稚園の先生?幼稚園のお友達?いやいや、小学生になれば今の時代は『付き合っている』という言葉を使いたくてしょうがないらしいな。

じゃあ、恋を知るのは子供の頃と仮定しよう。初めて知ったその感情は悟られたくないので、コソコソ一人で悶々と悩む。いや、『友達』がいれば打ち明け、悩み相談の恋バナということで盛り上がる。

思春期の恋愛は脆くも儚く、美しいもの?だと仮定しよう。俺は気持ちを伝えるのがド下手だったので、告白などしたことがない。でも、告白されたことはあるんだぞ。で、中学生で初彼女ができたのだ。男性諸君、羨ましいか?俺はリア充組だったのだ。

高校でも新しい彼女ができた。同級生の。えっ?そろそろ五月蠅いってか?本当なんだから良いだろ。だが、この頃から妙な違和感を覚えた。高校ではとてつもなくお世話になった美人の先生がいた。男女ともに、この先生は好かれていて明るく優しい人だった。告白した生徒もいるほどだったとか。当時の年齢は30歳前だったと思う(女性に年齢など聞けるかよ!)

その先生は結婚していなかった。女子は『なんで先生は結婚しないの』とド直球で聞いていた。今なら恐ろしくて聞けもしない。風の噂で好きな人がいたらしいと後で聞いた。年は少し離れていたそうだが。

俺は大学でも彼女ができた。えっ?まぁ、聞けよ。男の戯言だ。いちいち目くじら立てんなよ。男の嫉妬はみっともないって言うぞ。今度の彼女は2個下の後輩だった。初めて年の離れた彼女だった。年は離れていても一緒にいて楽しかった。価値観もだいたい同じで嬉しかった。

学生を卒業したら俺は働きだした。そして、またまた彼女ができた(もういいだろ?)周りも見渡せば結婚して子供ができてって、もう完全に大人だ。だが、俺は結婚に縁がないのか上手くいかなかった。大人になると時が経つのは早いな。

この間告白された。年は離れているが、本気らしい。俺もその子のことが可愛くて、言うならば交際したい。一緒にいて気持ちが良い。昔、一回り離れた年上の人を好きになった。俺はその人に何度も癒された。思えば高校の頃、お世話になった美人の先生も、こんな気持ちだったのかもしれないな。

『10年早く産まれて、10年早く出会っていたら』みんなそんな人ってきっといるはずなんだな。


                 (了)


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