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毎日日記|レジの前後の子どもたち

 業務スーパーに行って、レジに並んだ。目の前は二人の息子さんを連れた夫婦で、おにいちゃんの方が会計をしている横から買い物かごを熱心に見つめていた。
「買ったよ」と言ってもらったのだろうか、それとも会計が終わったことをわかっているのだろうか、お父さんがお金を払い終えるとお菓子の袋をふたつ引っ張り出し、弟に片方を渡していた。嬉しそうなその笑顔と、きょとんとした顔で受け取っている弟の対比がたまらなくかわいかった。弟の方に「買ってもらったの、いいねえ」と声をかけると茫然とした顔のまま、こくん、とうなずいていた。

 また、私の後ろに並んでいたのは小さな女の子とお母さんだった。女の子がお母さんから渡されたお金を、背伸びしてレジの台にちょこんと置く。しかし、お母さんから訂正が入った。
「お金を渡すところはそこじゃないの」
 なんということだろう、バーコード読み取りは店員さんがしてくれるものの、お金を支払うのはすべてセルフ式のお店だったのだ。慌てて台の上のお金をもう一度握り、機械に向かって駆けるその背中を見て、私は切なくなった。あの子はお買い物ごっこをしていただろうか、そこでは人にお金を渡していたのだろうか。
 しかし、今やお買い物で人にお金を渡すことは少ない。ごっこ遊びでも「ペイペイで!」という言葉が飛び出ると聞く。
 ペイペイが悪いわけではないし、セルフレジの便利さもある。だが、小さい子どもが握りしめた小銭を手から手へと渡せなくなっていくのはさみしいと感じるのは、ただの懐古に過ぎないのだろうか。
 女の子は無事、お菓子を買えて、嬉しそうにおばあさんのところへと走っていった。

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