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著者が語る:『自己分析論』<非言語コミュニケーション>!

『自己分析論』は、これまでに大学生や卒業生から相談を受けてきた「自己分析」について、「就職活動・人間関係・人生哲学」の3つの視点からアプローチしたのが特徴。『哲学ディベート』に登場する5人の大学生が「就職アドバイザー・心理カウンセラー・科学哲学者」の3人の専門家と議論を展開する。「自己分析」についてのノウハウ本やワークブックは世に溢れているが、本書のように3つの異なる分野に深く踏み込んで読者をサポートする書籍は、他に類を見ないものと自負している。

その「第2章:対人関係における自己分析」の「教養と非言語コミュニケーション」では、次のような議論が登場する(pp. 126-129)。

心理カウンセラー それから、「教養」と同じように、無意識に表れてしまうのが、言語以外の「非言語コミュニケーション」なのよ。
 「目は口ほどにものを言う」というでしょう。顔の表情や視線、身振り手振り、姿勢や座り方、距離の取り方など、人間は言葉以外の手段でもコミュニケーションを取っている。
法学部B ネットで「非言語コミュニケーション」を検索したら、すごい題名の本が出てきたよ。『人は見た目が9割』とか『結局、人は顔がすべて』とか、なんかひどい題名だな。
心理カウンセラー 外見の身体的魅力が対人関係に好影響をもたらすことは、数多くの心理実験でも実証されていることだから、「見た目が影響を与える」ことは事実。
 でもよく「見かけ倒し」というでしょう。時間が経過するにつれて表れてくる内面がダメだったらアウトなんだから、「見た目が9割」が通用するのは、五分の面接で終わるといわれている「夜のお仕事」くらいじゃないかしら。
 就職活動の面接官は、あなたたちの内面を見極めようとして何度も時間をかけて面接するんだから、私は「結局、人は教養がすべて」と言いたいわね。
文学部A 就活の面接では、身だしなみが大事なのはわかっているんですが、他にも注意することはあるでしょうか?
心理カウンセラー 基本的に注意するといいのは、動かないことね。以前、面接がうまくいかない学生の相談を受けたことがあるんだけど、彼は緊張を抑えようとすると、無意識的に身体を揺すったり、意味なく手や指を動かしたりしてしまう。背筋をしっかり伸ばして、手や足を動かさないようにして、落ち着いて話す習慣をつけたら、立派に内定をもらえたわ。
 それから、面接官の眼をしっかり見て話すこと。「アイコンタクト実験」というのがあってね。アイコンタクトを一五パーセントに絞った映像と八〇パーセントに増やした映像を被験者に見せて評価させたところ、一五パーセントでは「冷たい、悲観的、弁解的、無関心、従順」、八〇パーセントでは「自信、親近感、自然、誠実、円熟」という印象を与えることがわかったのよ。
医学部E それは、おもしろい。「目は心の鏡」ですね!
文学部A 逆に、もし「従順」に見せたければ、アイコンタクトを少し減らす方がよいわけですね。
心理カウンセラー ただ、この実験はアメリカで行われたものなんだけど、アイコンタクトをたくさんとって、大げさな身振り手真似で話すことが好まれる文化圏と、そうではない文化圏があるでしょう。
 それに、非言語コミュニケーションが相手に与える影響には、相手によって個人差が大きいことがわかっている。だから、一般論として言えることは、落ち着きなく動いたり、アイコンタクトが少なすぎたら悪い印象を与える可能性が高いことくらいしかないのよ。
医学部E こちらからも面接官を観察して、どういうコミュニケーションを取ればいいのか判断すればいいんだよ。
経済学部C そんな余裕があればいいんだけどね。

ホールによる「非言語コミュニケーション」の定義

現在の「非言語コミュニケーション」研究の基礎を確立したのは、アメリカの文化人類学者エドワード・ホール(Edward Hall)である。彼は1914年生まれ。デンバー大学人類学科卒業後、コロンビア大学大学院人類学研究科博士課程修了。第2次大戦後、デンバー大学と国務省外務職員局で教育に携わり、1967年よりノースウェスタン大学人類学科教授、後に名誉教授となる。2009年に95歳で死去。

彼は、1959年に ”The Silent Language," 1966年に "The Hidden Dimension," 1976年に "Beyond Culture" という3冊の主要著書を発表した。これらの作品では、「言語」そのものよりも「非言語」が「コミュニケーション」に与える影響を分析し、とくにその背景に「文化」的要因が潜んでいることを明らかにしている。ホールは、それらを「周辺言語」(paralanguage)、「空間学」(proxemics)、「動作学」(kinesics)、「接触学」(haptics)などに定義して、新たな学問分野として追究した。

ホールは、いわゆる「ボディランゲージ」や「アイコンタクト」などの概念がコミュニケーションに果たす役割に注目したばかりでなく、「時間感覚」が、文化圏によって単一的な「モノクロニック時間」(monochronic time)と多元的な「ポリクロニック時間」(polychronic time)に分かれる傾向や、「コンテクスト」(context)の依存度が文化によって「高い」か「低い」か異なる傾向についても調査した。

多彩な非言語コミュニケーション

非言語コミュニケーションが文化圏によって異なることを紹介する動画は、数多くYouTubeに紹介されている。その幾つかを紹介しよう。

最初の動画は、さまざまな「動作」が文化圏で異なる意味を持つ事例を挙げている。とくに、多くの文化圏とは対照的に、「Yes」の場合に首を横に振り、「No」で頷くブルガリアの習慣は興味深い!

次の動画は「手振り」(hand gesture)がどれだけ文化圏で異なって受け取られるか事例を挙げている。ブラジルで「OK」サインを示すと大変なことになる!

次の動画は「アイコンタクト」と「サングラス」の関係を表している。スタンフォード実験との関連も興味深い!

最後に、カリフォルニア大学デイビス校で「非言語コミュニケーション」を学んだ大学生4人のチームが制作した動画を紹介しよう。彼らは、2004年にテレビに放映されて人気となった「ミーン・ガールズ」(MEAN GIRLS)というハイスクール・コメディの映像を「非言語」的に分析している。これだけ立派に分析できていれば、実に優秀(笑)!

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