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【随想】小説『グラスホッパー』伊坂幸太郎

ちょっと次何読んでいいか迷い始めてしまったので、
途中まで読んでいた伊坂作品でお茶を濁すことにする。

『グラスホッパー』

2004年の作品だ。

杉江松恋の解説を読むと、
この小説は「伊坂幸太郎が初めて書いたハードボイルド小説」であるらしい。

ハードボイルドってなんだろう。

ハードボイルド(英語:hardboiled)は、文芸用語としては、暴力的・反道徳的な内容を、批判を加えず、客観的で簡潔な描写で記述する手法・文体をいう。今日ではミステリのサブジャンルとして扱われるのが一般的だが、サスペンスやスパイもの、ギャングもの、さらには一般小説にも主人公をハードボイルド風の文体で描く作品はある。

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「ハードボイルド」は元来、ゆで卵などが固くゆでられた状態を指す。転じて感傷や恐怖などの感情に流されない、冷酷非情、精神的・肉体的に強靭、妥協しないなどの人間の性格を表す。

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なるほど。
でも読んだ感じ、ハードボイルドというより、
ブラッドシンプルやノーカントリーを見た感じに近い印象を持った。

そうそう、ノワール映画っぽいというか。

ん?ノワールってなんだろう。

小説、映画の一分野。人間の悪意や差別、暴力などを描き出している。闇社会を題材にとった、あるいは犯罪者の視点から書かれたものが多い。

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うん。間違ってはいない。
殺し屋が何人も登場する話だから、ノワール小説だ。
いや、待てよ。
クライムノベルっていう説もあるぞ。

犯罪小説(はんざいしょうせつ)、または、クライム・ノベル(Crime novel)は、犯罪行為やその調査を描く物語。殺人などの重大な犯罪を追及する探偵を描く場合が多く、推理小説、法廷ドラマ、ハードボイルドなどを含む。多くの場合は謎とサスペンスが重要な効果となる。

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ハードボイルドを含む?
じゃあやっぱりハードボイルド小説なのか。

あれ。アウトローって言葉もあるな。

アウトロー(英語: outlaw)とは、法律を無視する人。無法者。無頼漢。犯罪等により法の保護を受けられなくなる人物。すなわち「法喪失」、「法外放置」、「法外追放」、「平和喪失」(英語: outlawry) の宣告を受けた人物。

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うん。アウトローでもある。
アウトローはジャンルではないか。
アングラは?

アンダーグラウンド(underground)は、反権威主義などを通じて波及し、1960年代後半に起こった、商業性を否定した文化・芸術運動のことを指す。広義には、単に非公式・非合法であることをいう。アングラと略される。

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広義のアングラでもあるようだ。
もうなんでもよくなってきた。
オフビートでキッチュでナンセンスな小説でもいい気がしてきた。

登場する殺し屋のなかで、
特に印象的だったのは、ドストエフスキーの『罪と罰』を愛読(それ以外読んだことがない)する自殺専門の殺し屋「鯨」だ。

彼は、目を見ただけで、相手を自殺に追い込むことができるという特殊な能力の持ち主だ。
彼の目は、生きる希望をすべて吸いこむ底なしの絶望で、彼の目を見た人間はみな、自分の罪悪感に耐えきれなくなり、自ら死を選ぶ。
この辺りが伊坂幸太郎っぽい。
トリッキーな設定に鼻白んでしまうかと思ったが、普通の人間のなかに急に罪悪感が芽生えていく表現は、妙にリアルで引き込まれた。

そんな彼は、能力と引き換えに、
自殺させた人間の亡霊が見えるという幻覚症状に苦しんでいた。
亡霊は、彼にとっての罪悪感の重さを意味する。
彼は、自分の罪悪感に押しつぶされないよう、過去を清算しようと行動する。

確かに彼は「感傷や恐怖などの感情に流されない冷酷非情な人間」という点において、ハードボイルドだった。
だが、自らの感情や恐怖が亡霊として現れていてそれに左右されているのだとしたら、それははたしてハードボイルドと言えるのであろうか。

って、ジャンルなんてなんででもいいのだけど笑


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