北風騎士

忠誠と信仰は同じ?いいや違うね。

北風騎士

忠誠と信仰は同じ?いいや違うね。

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  • そして英雄になる

    英雄を目指したラムとウィルの剣と魔法があるライトなファンタジー物語。

  • 魔王と勇者

    厨二病の発作

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始まり

 僕はラム、12歳だ! 辺境伯の領地にある農村に生まれた。 どこにでもいるだろう平凡な農夫の息子だ。 今日、僕は幼馴染のウィルと山に遊びにきていた。 「待ってよー!ウィルー!」 「秘密の場所まで競争だぞ!早くついてこいよ〜、ラム!」 幼馴染のウィルは村の狩人の息子だ。 同い年の筈なのに背丈は頭二つ分くらい高いし体格も大きい、村の大人達にも負けないくらいだ。 ここらの森では手に入らない特殊な堅い木材でできた槍を担いでいて、その槍で山の動物や、時には小さな魔獣を狩ってきた事

    • 2章11話 遺跡調査

      特に道中で山賊に襲われたり、襲われている高貴な方を助けたりなどといったトラブルに遭遇することもなく、俺とバルドは無事にエスペンサの街にたどり着いた。 報酬はギルドから渡されるためバルドはギルドに行き、俺は寄り道することなく遺跡に向かった。  主神の時代の遺跡は突然現れることがままある、特に街からそう遠くない場所だったにも関わらずある日突然見つかるのだ。 これには理由がちゃんとある、簡単に言えば魔法の効力が切れたからだ。 主神が関わっているような遺跡群の多くは防護のための結

      • 2章10話 考古学者ウィリス

        眩しい光に包まれていたのを今でも覚えている。 父のように力強く、母のように優しげな声を覚えている。 帝国魔術師の魔導老公と死霊魔術によって操られたアウリクスに殺されたのを覚えている。 肉の一片も残らず消し飛んだはずの俺は森を彷徨っていた。 この森はアウリクスと戦った森じゃない、ラムと一緒に過ごした山の麓だった。 自分が何故この山にいるのか分からないが俺は秘密基地に行かなくちゃ行けないと感じていた、それは使命感のようでもあった。 酷く懐かしく感じる秘密基地を前にして俺は敬虔

        • 2章9話 この剣の征く道に終わりなんてない

          騎士国家リーメルにおいて銀は特別な意味を持っている。 私の首から下がっているこの銀の首飾りには様々な意味があるのだ。 騎士とはただの戦士ではない、泥に濡れ、血を浴びることを厭わない金銭に忠実な野蛮な傭兵とは違う。 騎士が銀の装いを好むのは金に欲深い者ではないとしつつ、しかし気品を併せ持つ者であると示すためである。 そう唱えたのはリーメルにおいて最初の銀騎士と称された銀装の騎士である。 現代のリーメル騎士国家において騎士が銀の装飾を身につけることは半ば形式的になりつつも、その根

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        • そして英雄になる
          30本
        • 魔王と勇者
          2本

        記事

          2章8話 黄金の加護

           黄金の光が樹海を染め上げる。 大気がビリビリと震え、世界が、神が、その存在を祝福していた。 華奢な身体から放たれているとは思えぬ覇気を放つメイファンが拳を強く握りしめて構え、ラム達を睨む黄金の双眸には決意の光が宿っていた。 「『チャージ』!!!!」 メイファンの両腕と両足を白い光が包み、光は輝きを増していく。 「『インパクト』!!!!!」 拳を地面に振り下ろし、白い光が爆発した。 衝撃波が大地を捲り上げ、周囲一帯の樹海の木々を根本から吹き飛ばした。 「イレイナを

          2章8話 黄金の加護

          2章 7話 幻獣種

          黒い肌。黒い眼。額に生えた黒い角。背中から生えた蝙蝠のような4対の羽。 真っ赤な衣装の貴族のような出立ち。 人に似ているとはいえ、その禍々しい風貌は見るもの全てに根源的な恐怖を与えるだろう。 孤の字に開かれた口からは真っ赤な歯と舌が覗いて見えた。 誰もが御伽話で知っている。恐怖と厄災の象徴。 幻獣種『悪魔』 悪魔がオーフェンとディアモンテの前に現れていた。 「本当に向こうから来るんだ、行儀良いじゃんかよ」 「オーフェン!油断するな!魔剣は常に解放しておけ!!できるなら

          2章 7話 幻獣種

          2章6話 ローフの樹海

          辺境の街ローフの樹海にて。 04小隊の四名は早朝から樹海に入り魔種の捜索を始めて昼になったが、魔種の姿どころか生物の気配が全くしない樹海の状況に警戒を強めていた。 「あ、あまりに静かすぎます、鳥の鳴き声すらも…聞こえないなんて…。」 「…本当に、虫の1匹すらいませんね…。」 イレイナは足元の腐葉土を足先で掘り返してみるも蟻の1匹すらもいない現状にどこか不気味さを感じていた。 「全員、周囲の警戒を決して怠るなよ。 どんな些細な音も聞き逃さないようにな。」 「「「了解

          2章6話 ローフの樹海

          2章 5話 ウィリアム

          「お母さん…お父さん…どこー!どこにいるの〜?」 あっ、これって夢だ。 私は唐突に気がついた。 村を歩く11歳の私の視点であの日が繰り返される。 村は至るところが燃えていて、村のみんなが倒れている。 この後で私は彼と出会ったんだ。 「だれか〜!ぐずっ…みんなどうしちゃったの?あ……」 村の中を裸足で彷徨う私の目の前に『鬼』が現れた。 一体じゃない、10、20、もっと沢山いて、『鬼』達が私を囲んで歪に笑っている。 2mはある大きな身体にゴツゴツとした大角、剥き出しの牙

          2章 5話 ウィリアム

          2章4話 でけえ蟹

           隊長から招集を掛けられた俺たちは、早朝に事務所に集まった。 「おはようございます隊長!」 「おはようオーフェン。」 事務室を見渡すと隊長の他にイレイナとメイファンも既に集まっていて、俺含め全員が完全武装の状態だった。 「そんで……どこスか?」 「うむ、魔種が発生したと報告を受けた場所は港町シールの町外れの海沿いで、姿は蟹が巨大化した物、数は三体だと聞いている。」 「蟹?なんか想像つかないな、そいつって 「魔女は?魔女は居るんですか?」 俺の言葉を遮るようにイレ

          2章4話 でけえ蟹

          2章 3話 守りたいもの

           早朝、俺は04小隊の隊舎に集合していた。 「オーフェン、集まるのはまた貴方が最後ね。」 事務室に入るとソファーに座っていたイレイナが俺に噛み付いてきた。 「うるせえよ!別にいいだろ、集合の5分前に来てるんだぜ? あ、隊長、それとメイファンも!おはようございます!」 「おはようオーフェン、朝から賑やかになっていいね」 「お、おはようございます……」 俺はイレイナを一睨みしてからソファーの端に座った。 一昨日に解散した時はなんだか元気がなさそうだったから、ほんの少し

          2章 3話 守りたいもの

          2章2話 魔女との邂逅

           オーフェン達の乗っていた馬車は街道を抜けて、穏やかな空気に包まれた農村に辿り着いた。 山々に囲まれたこの村は真ん中に線を引くように小河が流れていて自然豊かな場所だった。 稲穂が陽の光に当たって黄金に輝いている。  馬車が止まり、御者席のディアモンテが後ろの3人に向かって顔を出した。 「道中で説明したと思うが、改めて任務内容を確認するぞ。 この村の農作物が獣によって荒らされているらしく、我々はこの獣の駆除にあたることになった。 質問はあるか?」 オーフェンが手をあげた。

          2章2話 魔女との邂逅

          2章1話 オーフェン

           帝国が大陸全土に向けて宣戦布告を行ってから5年。 帝国は公国を侵略した後にいくつもの小国群を占領して更なる軍拡と戦争を行っていた。  これに対して5大国の内の、北国アインドラ、共和国エスペンサ、南国グリムは同盟を結んで連合軍を作り帝国に対する共同戦線を張ることによって強大な帝国に対して攻勢を試みていた。  そんな世界情勢の中で1人の少年の物語が運命と交わろうとしていた。 ここは沈黙を貫き続ける五大国の内の一つ。 その昔、騎士の存在によって台頭した国、リーメル騎士国家である

          2章1話 オーフェン

          20話 闇への誘い

           僕はベッドの上で目を覚ました。 小窓からは日差しが降り注いでいる、すぐそばの通りは商店街に近いのだろうか、賑やかな歓声が聞こえてきていた。  身体を起こして部屋を観察する。 知らない天井、知らないベッド、知らない部屋。自分が今着ている服すらも知らない服だった。 いつもなら寝る時はベッドの側に置いてある筈の剣が無い。 ベッドの側の机には花瓶が置いてあった。 今までに見たことのない花が挿されていて、美しく瑞々しい、花瓶の中の水も綺麗だった。 「どこだろ……ここ……。」  

          20話 闇への誘い

          19話 紅蓮の勇者

           幼き日のことだ。私はただひたすらに剣の修行に打ち込み、教養を身につけ、礼儀作法を必死に学んだ。  それは国への忠誠心でもなんでもない。 ただ父に、母に、褒めてほしかった。認めてほしかった。 ちゃんと愛されているのだと知りたかった。  私は17の時に王の御前試合でもある皇族護衛役を選定する試合に出場した。 教養と家柄、礼儀作法は全て合格し、後は剣術の腕を皇族の方々にお見せする試合に優勝するだけだった。  しかし、私は決勝で敗北した。相手は同じ軍人を輩出する子爵家の次女。 運

          19話 紅蓮の勇者

          18話 銀装

           戦場の中心地にて、銀剣と拳が激しくぶつかり合う。  銀と黄金。 両者の力は完全に拮抗しており、一進一退の攻防を繰り広げていた。  加速していくラムとアウリクスの攻撃は激しさを増し、それによって生まれた余波が帝国兵と辺境伯兵を纏めて吹き飛ばし、2人の元に寄せ付けない。  魔導老公は何らかの魔術を用いて戦闘の余波を無効化し、2人の闘いを観察していた。 「全くもって計画が台無しじゃ。 よもや、公国で『銀装』を纏う者が現れるとは………それもリーメル人でも何でもないただの少年がの

          17話 黄金の大英雄

           ウィルは岩山の中を走り、場所を変えながら大蟻の脚を槍の代わりにして帝国兵たちに投げていた。 投げた脚はその全てが魔導老公によって破壊されているが、それでも帝国軍隊はウィルからの攻撃を警戒せざるを得ないため進軍速度は最初よりもずっと遅くなってはいた。 「ちっ、あのジジイ……。 追いかけるのはやめて、防御に専念しようって事か? クソ、もう領都まで近いってのに……」  岩山から軍隊を見ていたウィルの目に魔導老公が写った。 魔導老公は微笑みながらウィルに向かって手をゆっくり振っ

          17話 黄金の大英雄