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説明するということ - 主題を見極める

前回の記事で書いたように、「書くこと」に注目して説明ができるようになるための要素を示していきたい。なお、思いつきで進めているため、抜け・漏れは多数あるはず。適宜補足していくつもり。

この記事では、書くときの主題の見極め方を考えていく。

前回の記事は次のもの。

1. 総論

文章を書くときに、文字数を気にしてしまいがちだが、その前に重要なことは書くべき話題の精査だ。

作文や小論文のようにテーマが与えられていたとしても、その中でどのようなことを「主張」したいのかを精査しなければならない。

研究なら、「仮説」が大切になる。「仮説」が「主張」の表裏の関係になるものだから。これは、小学校の自由研究、高校の探究、大学の研究のいずれであっても、研究なら同じ。

主張や仮説のいずれでも、自分の思い込みや単純な思い付きではないことを示さなければならない。つまり、文章を読み終えた他人がその主張や仮説を妥当だと判断できるようなものを最終的に書かなければならないことに注意して、そのような文章の組み立てができそうな主張や仮説を用意する必要がある。

簡単に言うと、その主張や仮説を読み手がどのように考えるか、感じるかを自分から一歩引いて他人事のようにして観察できるようになる必要がある。

そういった意味でも、話したそばから消えてしまう音声での言葉よりも、文字での言葉を書いた方が良い。なぜなら、書いた文章をしばらく寝かせておいて、すっかりと他人の頭になった頃に読み直せば、他人の気持ちになって自分の文章を他人事のように読めるから。

書いたときには、分かったつもり、説明したつもりだったことも、実は未来の自分が読むと分かってもなくて説明も十分でない、といったことはありがちなことだ。

逆に言えば、その文章(作文や論文)の締切よりもずっと早い段階で、初稿(最初の原稿)を書いておかなければならない。そうやって時間をとることで、余裕を持ったスケジュール感も身に付くことも期待できる。

自分の文章を他人事として批判的に読んでいけるようになると、自分の文章の癖がわかるようになる。その修正の方針も立つ。もちろん、文章作成の良い指導者がそばにいるなら頼っても良いと思うが、最終的には自分自身でこなせなければならないことだから、独り立ちの手段として、この文章を寝かせて読むという方法はおすすめだ。

さらに、こうやって書くことを続けていると、良い書き方の癖が付く。これは、思考法の癖とも言え、話すときにも頭の中でその癖を使って整理できるようになる。

以降では、「主張」と「仮説」の精査について書いていく。

2. 主張の模索

主張とは「〜は〜である」といったことを言うこと。実際のところ、いくらでも大きいことは言えてしまう。つまり、海賊王にもなれてしまう訳だ。物語としてはそれでも良いのかもしれない。しかし、この一連の記事のテーマは「説明するということ」であることを忘れてはいけない。

妥当な主張をするためには、主張を単にするのではなく、裏付けが必要になる。裏付け、つまりその主張が実現できる理由を根拠として示せるだろうか。この根拠を示していくプロセスの詳細は、以降の別の記事に任せる予定だが、ここでは妥当な主張には根拠が必要だということを覚えておかなければならない。

もうひとつの「主張」に対する視点として、前述したようにその主張そのものが相手(他人)伝わるかどうかである。主張に前提条件はあるのか。その前提条件は相手と共有できているのか。

文章の場合なら、読者像を思い描き、その読者を想定すると良いだろう。例えば、自分の趣味の中で、ある内容について主張したいのであれば、同じ趣味の人に言いたいのか、その趣味を知らない人に言いたいのかで前提条件は異なることになる。

ここでの前提条件とは、簡単に言えば5W1Hのこと。つまり、英語のWhen, Who, What, Why, Howが伝わっているか。日本語の「いつ」「どこで」「だれが」「なにを」「どうした」でも構わない。主張によっては、すべてを書かなくても暗黙で相手と合意できたり、そもそも不要だったりする場合もあるかもしれない。

例えば、海賊王になるとの主張なら、「(いつ)俺が(どのような方法で)海賊王に(なぜ成れると考えて)なる」の抜けている部分を考える事になる。当然ながら、元ネタの物語は、その突拍子もない話だからこそワクワクするもの。だから、抜けていることが悪いと言っているのではなく、あくまでも説明する観点からすると抜けている部分があるということ。

3. 仮説の生成

「仮説」は、前節の「主張」と形式はほぼ同じで、「〜は〜である(にちがいない)」と言うこと。ただし、まだ確定してないことを言っていて、文章の最後まで読むとその仮説が正しいと思えるようになるようなもの。

文章の冒頭で仮説を示し、文章の途中でその根拠を示していくことになる。前節の「主張」と同様に、根拠を示せなければならないし、根拠を示した結果、相手に妥当と思ってもらえるものでなければならない。

したがって、前提条件についても主張と同じ。5W1Hなどを埋めておく必要がある。海賊王の例なら、「(いつ)俺が(どのような方法で)海賊王に(なぜ成れると考えて)なっているはずだ」になる。

最初のうちは、仮説と主張の違いをあまり区別しなくても良いと思う。この2つはほぼ同じと言っていいから。仮説は「棄却される(間違っている)可能性がある中で、証拠を積み重ねていく試行錯誤をする」プロセスの中にあるのに対し、主張は「正しいと思われることをできるだけ正しいと思われるように示していく」ことという違いはある。

4. 主張や仮説の精査

とりあえず立ててみた主張や仮説は、前述のように寝かせると良い。そうでない場合も、一回、頭を切り替えた後に読むと良いだろう。

もしくは、身近な人に読んでもらうと良いかもしれない。その主張や仮説に同意されるかは問わず、それ自体に漏れがないことを確認する。

それが終わったら、その根拠を言えるのかを想像してみると良いだろう。単に自分の思いを根拠にするのではなく、他人の意見が根拠になっているだろうか。すなわち、書籍や論文、Web上の文書・記事を根拠に説明できるだろうか。

読書感想文のように、1つの書籍を元にする場合でも、他の書籍と対比することは問題ないし、むしろ勧められるべき方法だと思う。もちろん、その書籍だけの中で書くことも可能だろう。その場合には、その主張が対象の書籍のどの部分を根拠にしているのか、どの部分を批判しているのかを言えるようになっていなければならない。

行事の作文(感想文)のように、根拠がほとんど見当たらない場合もあるだろう。その場合には、もしかすると過去の経験を根拠にする必要があるかもしれない。しかし、より大人な文章を書くなら、単純に個人の経験の中で閉じずに、他人の経験や書籍の内容などとの対比はあっても良い。

この他にも、研究における仮説なら、実験や調査をともなう。そのような場合には、どのような実験・調査をすればそれが言えそうかを考える。

結局のところ、主張や仮説は、大きく出すぎても根拠が示せずに破綻するし、小さくし過ぎると在り来たりすぎて面白くない物になってしまう。その塩梅をこの短い文章の中で示すのは困難ではあるが、そういった適切なレベルを試行錯誤することが精査という行為になる。

5. まとめ

この記事では、説明することの中でも書くことに注目し、書くために最初に設定すべき「主張」と「仮説」の立て方を示した。その中で、裏付け(根拠)が必要なこと、妥当な前提条件を揃えるために5W1Hなどを使うと良いこと、主張や仮説を精査していく中で根拠が適切に示せていけること、について書いた。

以降の記事では、この主張・仮説を起点として、どのように文章作成していくのかを引き続き書いていきたい。

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