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説明するということ - 文章の構造


前回までの記事で書いたように、「書くこと」に注目して説明ができるようになるための要素を示していきたい。なお、思いつきで進めているため、抜け・漏れは多数あるはず。適宜補足していくつもり。

この記事では、文章の構造の作り方を考えていく。

前回の記事は次のもの。

1. 総論

説明することに注目した場合、文章の構造は必然的に決まってくる。結論を先に書き、続けてその理由や根拠を書くという原則を守ること。すべてはここから始まる。

今回の記事では、説明の順序(木構造・根構造)と、段落の作り方、段落間の関係などについて書いていく。

小中学校、もしかすると高校で「起承転結」「序破急」といった文章の構造や、会話文で始めると良いといったノウハウのようなものを教わったことがあったかもしれない。しかし、説明するという視点で文章を書くなら、これらをひとまず頭から取り除いておいてほしい。

以降では、いわゆる理系のバイブルのような書籍を取り上げるが、「理系じゃないし」「読書感想文だから関係ないでしょ?」と言うのを少しの間、思いとどまってほしい。実際、この本の内容は、理系でなくても十分に通じるものになっている。

この記事で紹介している木下の「理科系の作文技術」は今でも通じる名著だと思う。私も学生時代に読み、今でもこの方法を意識しながら文書を書いている。ちなみに、この新書の関連書籍として、同じ中央公論新社から「まんがでわかる 理科系の作文技術」も出ている。書名からもわかるように、マンガ版で、現代風の例に沿って説明されており、どちらを先に読んでも良い内容になっている。

2. 説明の順序

前述の「理科系の作文技術」で悪い例とされている「逆茂木型」を先に説明しよう。

逆茂木

逆茂木型の文章を上の図で示した。この図の中で文章が左から右に流れるとしたとき、逆茂木型では、先に細かい先が見えてきて幹が見えない。文章が進むんでいき、最後に幹がわかるという構造になっている。

順茂木

一方で、望ましいのは、上の図のような文章だ(この図も左から右に文章が流れる)。ちなみに、この木には特別な名前が付いていないようなので、ここでは順茂木型と呼ぶことにする。順茂木型では、最初に幹が見えていて、その枝が伸びていく姿も見える。最初に言いたい事(幹;A)が分かっていて、次第に細部に入っていくような構造になっている。

実際の樹木でも、枝には更に細かい枝が付いていて、もっと細かい枝がさらに付いている。文章でも同様に中心的な主張から細かく噛み砕いていくことになる。したがって、枝を見なくても幹だけを見れば良く、より太い枝を見ていくだけでも最低限のことがわかることを意味している。

別の見方をすると、幹からどんどん細かくなっていったとしても、どれが元になっているのか分かるため、安心して枝を見ていけるとも言える。

このように、幹から始まり、枝の先に向かうような構造は、主張や結論が先に書かれていてその理由や根拠を書くということを意味する。例えば、Bの枝で切り取っても、その先の B, E, H, I, J, K は B についてのことを細かく噛み砕いた話だとすぐにわかる。同様に、D で切り取れば、H, I は D についての詳細だとすぐにわかるだろう。例えばある主張に対して、深く掘り下げていくとき、「B である。なぜなら E だからだ。それは J と言えるからだ。実際、それは K だからだ」のように、根拠にはそれを支持するための根拠が段階的に必要になることは多い。

このような幹と枝、枝とさらに細かい枝の関係をまずは頭に入れておいてほしい。

3. 段落の作り方

文章の書かれる順序は原則として、順茂木型になっている必要がある。しかし、それを一段落で書いてしまうと読み難すぎる。自然と段落分けしなければならなくなるはずだ。

段落を作る時の基本は、1段落に1つの話題しか入れない。適当な1本の枝を摘んできて、その枝だけを書くことになる。もちろん、枝には更に細かい枝も付いているだろうから、それも同じ段落の中で書く。

例えば、先の順茂木型の図が文章の全体を示しているなら、D, E, F, G 辺りできることになりそうだ。つまり、{B, D, H, I}と{E, J, K}といった組み合わせ({}の中身を1つの段落に書く)や、場合によっては{B}, {D, H, I}, {E, J, K}のように書くことになるかもしれない。実際の内容に応じて適宜考えていく必要がある。

このような段落分けをして文章を書いていくことは、パラグラフライティングと呼ばれている。パラグラフ(=段落)ライティング(=文章化)だから、読めばそのままだが。

各段落の最初の文には、その段落の内容を代表させる。ここで、「文」とは、段落の最初から初めの句点(「。」)までの文字列のことを指す。

このような段落の最初の文をトピックセンテンスと呼ぶ。トピック(=話題)センテンス(=文)ということで、その段落の話題(言いたいこと、主張、結論)が詰まった文という意味になる。

トピックセンテンスになるのは、その枝の元になる枝にあたる内容と言える。例えば、Bで摘んできたら、Bがトピックセンテンスとなり、それよりも細い枝の内容を同じ段落に書き込むことになる。

順茂木型を使ったパラグラフライティングでは、とにかく枝を摘んできて、それを段落として書くことになる。適切なサイズの枝を見つけるための努力は必要になるが、ひとたび枝を摘んできてしまえばそれを1つの段落に書いてしまえば良い。別の言い方をすると、摘んできた枝が多少大きければ、その段落は多少大きな段落になるはず。

一方で、例えば幹からちょろっと1本だけ出ている枝(順茂木型の図でいう P)は、どう頑張っても大きな段落にならないだろう。1文で1段落ということも有り得る。

したがって、段落の大きさを揃える努力はほぼ不要になる。どの位置で枝を摘むのかの見極めのみで文章を書くイメージになる。

4. 段落間の関係

段落の並べ方は、基本的には太い枝から先に書くことになる。幹から枝へ、1つの枝は1段落で。

実際の樹木であれば、枝と枝の間は無関係と言えるだろう。絡まったりしている枝はあるかもしれないが、ほぐしてしまえばそれぞれの枝には関係がない。例えば、順茂木型の図でいう B の先と C の先は実際の樹木で言えばどう考えても別の枝でしかない。

しかし、実際の文章としての木では、枝の間に依存関係がある。先に枝 B (とその先の枝)について書いておき、枝 C の段落で枝 Bの段落に触れる(B で書かれていることを前提として C を書く)ことも多い。

この順茂木型の構造は、あくまでも論理的な関係を表すものだ。だから、それを切ってどのように並べていくかは著者の腕前次第ということになる。具体的な内容に依ることもたしかだから、このような抽象的な図で話を進めることは難しい。これについては、いずれ別の記事として書くつもりでいる。

5. 枝刈り

文章を作る準備として、上にあるような順茂木型の木を作った。実際には、それぞれに主張や根拠などを書いてあり、そのような情報を木に割り当てていくことが準備ということになる。このような準備は、文章の想定する文字数が多ければ多いほど、用意周到にしなければならない。このような準備についても、いずれ別の記事に書くかもしれない。

さて、いざ文章を書き始めてみると、当初想定していた枝の摘み方や枝の並べ方では上手く書けないという事態に陥るかもしれない。決して初心者だから文章を書くのが苦手な人だからということが理由とは限らない。

ベテランであっても文章を書く人たちにもありがちな風景だ。論文のような文章を日々書いている研究者の間でも、「書いていたらよく分からなくなったんだけど、いろいろとやっていたらなんだか書けてしまった」との雑談ネタが出てくることはある。

実際に書いてみると、論理が飛躍してしまって、その間を埋めるための良い説明が思い付かなくてその枝を捨てるなどということもよくある。似たような話が並びすぎてしまい、見通しが悪くなって取捨選択を迫られるということもある。一方では、準備した資料で十分ではなくて書き加えているうちに分量が増えるといった場合もある。

私の場合は、規定の最低文字数を満たす文章になるか不安もあるため、最初に大きめの木を用意しておく。しかし、書いてみると前述のように枝を泣く泣く捨ててしまってさえも、多くの場合は規定の最大文字数を超えることも多い。

最大文字数を超えそうな場合、枝刈りが必要になる。その場合の考え方も順茂木型を文章に落とすときの枝の摘み方と一緒で、どの枝は重要なのか、どの枝は要らないのかを見極めるという作業になる。つまり、基本的に残すべき段落と捨てる段落を選り分けるという作業で十分だ。

実際には、さらに段落の順序を入れ替えたり、段落を統合・分離するなどもやりながら、完成させることになるだろう。

6. まとめ

今回は、文章の論理構造として、望ましくない逆茂木型と望ましい順茂木型を紹介し、それを文章に落としていく方法を示した。

基本的には、幹から近い枝の太い順並べていくことになるが、説明の順序関係から入れ替えることも必要になる。また、実際に書いてみると書き切れなかった枝や不要と判断した枝を捨てることもあるし、逆に十分でない枝を増やすこともあるだろう。

何れの場合も、ある程度の枝が段落となって書き起こされることになるはずだ。その場合、ある程度の依存関係はあって前後関係が必要になるものの、多くの場合は段落単位で移動させていればおおよそ意味が通じることになる。もちろん最後には調整が必要になるが。

以降の記事では、文章の全体構造についてもう少し見ていくことと、反対に各段落の文について見ていくことの両方について、それぞれ引き続き書いていきたい。

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