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【読書④】〜『最高の戦略教科書 孫子』を読んで・その1〜

久々の投稿になりました。
今回は、これもまた久々の“読書感想文”です。

昨年夏から朝や昼休みにちょっとずつちょっとずつ読み進めてきて、やっと読み終わったこの本。

地歴公民科の教諭として、そしてトーナメントの一発勝負、負けたら終わりの高校野球の指導者として、何年も前から学びたいと思っていた「孫子の兵法」についての本です。

時間があったらと思っていながら、なかなか手をつけていませんでしたが、昨年のある日、本屋で“真っ赤”なカバーに大きな「孫子」というタイトルの大文字、「ベストセラー」という帯の文字が目に飛び込んできて、つい手に取ってしまいました。



皆さんもご存知のことかと思いますが、「孫子の兵法」とはこういうものです。

孫子の兵法は、中国春秋時代(紀元前500年ごろ)に、思想家孫武によって書かれたとされる兵法書のことをいう。戦略論としての評価は非常に高く、クラウゼヴィッツの戦争論と並び、東西の二大戦争書とも呼ばれている。
「孫子の兵法」は軍隊の配置、戦術の実施などを取り上げた兵法と謀略の極意の集大成であり、中国の歴代の武将だけでなく、日本でも鎌倉時代、戦国時代の武将の必読書であったし、ナポレオンも「孫子の兵法」を学んだとされ、現在でもアメリカ軍で軍事における教科書として参照されるほど影響力が高い。ビジネスにおいても幅広く活用されており、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツが愛読していることでも知られている。
正式には「孫子」は書物の名称を指す。又著者の孫武の事を孫子という事もある。以下の文中では書物のことは「孫子の兵法」と表し、孫子と表記するときには孫武その人を指す事とする。
孫子は、紀元前500年ごろ、中国春秋時代に呉国に仕えた名将軍で、呉国の発展に大いに貢献した人物である。「孫子の兵法」以前においては、戦争の勝敗は大きく天運に左右される、という考え方が主流だったが、孫子は過去の戦史研究を行う事で、共通性のある軍事法則をまとめた。つまり、戦争の勝敗には様々な法則や理論的な根拠が影響している、ということを明らかにした点が、「孫子の兵法」の大きな歴史的意義である。

https://leadershipinsight.jp/explandict/孫子の兵法%E3%80%80(『孫子』)より引用

多くの歴史的英雄や、現代でも活躍する実業家に愛読、活用されてきた戦略論の書であり、“負けたら終わり”の戦争での戦略は、“トーナメント・一発勝負”の高校野球にも役立つものがあるのではないか、と前々から考えていました。

もちろん、「戦争と高校野球は一緒だ」ということではありません。

子どもたちにとっては、人生たった一度の高校野球。

3年生の最後の夏、負けたら引退。

せっかく約2年半、日々苦しい練習に耐え、勝つ喜びを味わうために努力して子どもたちに、一日でも長く高校野球の真剣勝負を味わってもらいたい。

そう思うと、指導者側が“負けない軍将の心構え”を知っておくということは、非常に有益なことだと感じます。

さて、本書を約1年弱かけてゆっくりと精読してきましたが、著者の考察は非常に深く、私には深い理解が難しい内容でした。。。

今回は、本書で紹介されていた「孫子の兵法」の一節から、“野球に置き換えて考えると?”という観点で、私自身感じたことを書いてみようと思います。

まず、

「勝つべからざるは己に在るも、勝つべきは敵にあり」

(不敗の態勢をつくれるかどうかは自軍の努力次第によるが、勝機を見い出せるかどうかは敵の態勢如何にかかっている)

という言葉です。

負けない態勢は自分たち次第で作れるが、勝てるかどうかは相手次第ということです。

遠回しに「勝つことだけを考えても意味ない」と言っているように感じます。

野球でいうと、勝つことを考えて攻撃力(打撃力)をつけようと努力して10点とれるチームを作っても、相手が11点以上とれるチームだったら負けてしまう。
結局のところ相手の打撃力次第、といったところでしょうか。

勝つか負けるかはわからないけど、「不敗の態勢」、つまり相手の得点力を少しでも抑える守備力をつけ、少しでも“負けにくい形”を作ることが大切だと解釈できます。

次に、

「善く戦う者は不敗の地に立ち、而して敵の敗を失わざるなり」

(戦上手は、自軍を絶対不敗の態勢におき、しかも敵の隙は逃さずとらえるのだ)

という言葉です。

負けない状態を維持して、相手の隙が見えたら突くということ。

野球でいうと、最小失点で接戦にもちこみ、相手の弱点やミス、集中力の欠如などにつけ込んで、より多くの点をとりにいくことになります。

そして、

「明君賢将の動きて人に勝ち、成功、衆に出づる所以のものは、先知なり」

(明君賢将が、戦えば必ず敵を破ってはなばなしい成功を収めるのは、相手に先んじて敵情を探り出すからである)

という言葉。

監督は、相手の選手のことやチームの状況を前もって調べて把握しておかなければならないということです。

◯ 相手の投手のフィールディングに難があるから、バントで攻める。

◯ 相手の捕手の肩が強くないから、盗塁で攻める。

◯ 外野手の打球に対する詰めが甘い(打球を捕るまでの時間が長い)から、走者はもう一つ先の塁を狙う。

このように、不敗の態勢(最小失点で抑える守備をして接戦にもち込んだ状態)の中で、前もって得た情報をもとに相手の隙を突いていく

『孫子』の一節の中には、

「戦上手は、その鋭気を避けてその惰帰を撃つ」

(戦上手は、敵の士気が旺盛なうちは戦いを避け、士気の衰えたところを撃つ)

ともあります。

守備で耐えて、耐えて、耐えて、
そして相手の隙を突く、相手の士気が下がったところでチャンスを掴む


そして、次のこの言葉。

「兵の加うる所、碫を以って卵に投ずるがごとくなるは、虚実これなり」

(石で卵を砕くように敵を撃破するには「実」をもって「虚」を撃つ、つまり充実した戦力で敵の手薄をつく戦法をとらなければならない)

私は本書の訳の「充実した戦力で」という語が気になりました。

つまり、相手の隙、手薄な部分を攻めるにしても、“手薄なところを攻めるだけの力”がなければなりません。

先ほどの例を用いて、簡単にいうと、

◯ 相手の投手のフィールディングに難があるから、バントで攻める。
⇨ 狙ったところに確実にバントができる技術

◯ 相手の捕手の肩が強くないから、盗塁で攻める。
⇨ 盗塁の技術

◯ 外野手の打球に対する詰めが甘い(打球を捕るまでの時間が長い)から、走者はもう一つ先の塁を狙う。
⇨ 走塁の技術と状況判断力の高さ

になります。

まず守備力を身に付けた後、次のステップとして、攻撃面において“相手の弱点を突くための戦法”を身に付けていく必要があるということです。

「充実した戦力」とは、もちろんチームの投手力、守備力、打撃力、走塁力、個々の技量全体を高めたもの、選手自身の能力のことだとも思いますが、“相手の隙、手薄、弱点を突くための”「充実した戦力」と考えたときに、バントや盗塁、エンドラン、スクイズなどといった“小技”をチームとして使いこなすことなのではないかな、とも感じました。

最後に、この言葉。

「勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む」

(あらかじめ勝利する態勢をととのえてから戦う者が勝利を収め、戦いを始めてから慌てて勝機をつかもうとする者は敗北に追いやられる)

◯ 不敗の態勢を作る(守り勝つ守備力)

◯ 相手の状況を前もって把握しておく

◯ 相手の弱点を突くための戦法を身に付ける
(どんな相手にも対応できるだけのさまざまな戦法)

つまり、勝つための(負けない)前もった準備が大切ということです。


今回は、ここまでにします。

次回は、作戦について書こうと思います。

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