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【映画評】 松居大悟監督『ワンダフルワールドエンド』。さよなら、男ども。そしてピンクのうさぎ。

「ピンクのうさぎ」論争というものがあるそうだ。「ピンクのうさぎは何なの」という論争である。
松居大悟監督『ワンダフルワールドエンド』の後半、突然、ピンクのうさぎの被り物が二体登場する。実はこの映画、このあたりから評価が分かれる。つまり、ピンクのうさぎに「ついていけない」派と「少しも変じゃない」派である。まあ、評価はともかくとして、「少しも変じゃない」派の人たちの中で、「ピンクのうさぎ」の登場の意味とは何、という論争があるのだ。

論争とは次の3点である。
1、大森靖子がさゆ信者で、さゆのうさちゃんピースとイメージカラーがピンクだから。
2、性のモチーフとしてのウサギで、性欲まみれの本性としての人間の化身だから。
3、ぶっ飛んだ世界にしたくてたまたまあったうさぎの被り物を使った。

3は監督の松居大悟が述べたものだから、監督の趣旨に即して解釈するならこれが正しいということになる。しかしこれではつまらないし、作品の意味は、監督が決めるものでもない。

(1について)
「さゆ」とは、元「モーニング娘。」のさゆりのことである。彼女は2003年に加入(6期)し、2014年暮に卒業。中学校卒業間近から25歳まで在籍している。
大森靖子は道重さゆりの熱狂的なファンで、いわゆる「さゆ信者」である。大森靖子のアルバム『絶対少女』の中の楽曲『ミッドナイト清純異性交遊』は道重さゆりへのオマージュである。歌詞に「14歳でみつけた桃色のうさぎ」とあるが、道重さゆりが「モーニング娘。」に加入したのは中学受験に失敗したからという。つまり、「14歳」は中学生であり、「桃色のうさぎ」(これについては後述)とは「モーニング娘。道重さゆり」なのである。中学受験失敗とアイドル加入とを重ねてみたのだけれど、無理な解釈だろうか。

大森はさらに次のように歌う。「アンダーグラウンドから 君の指まで 遠くはないさ iPhoneのありかをのこしてワンルームファンタジー 黒髪少女で妄想通りさ 君だけがアイドル」。
大森靖子にとり、道重さゆりは唯一のアイドル、神としてのアイドル、つまり、「さゆ信者」なのである。PV『ミッドナイト清純異性交遊』で、「大森靖子はさゆがいるからここにいる 一生道重」と書かれたTシャツが飾られているのを発見し、わたしは感動で心が震えた。

さて、道重さゆりとピンクのうさぎなのだが、これはラジオ番組『モーニング娘。’14道重さゆみの今夜もうさちゃんピース』に由来する。番組のタイトルに入っているうさちゃんピースとは、ピースサインをした両手を頭の上に置き、うさぎの耳のように見せるポーズのことで、道重さゆりのトレードマークとなっているという。

妄想を、もう少し先に進ませよう。

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