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とりぷるツイン第8話(完)〜転居〜

【第7話はこちら】↓


平日の朝。

「おはよう。」

みくにがリビングにやってくると、何やら家族みんな神妙な面持ちだ。
武生もいる。

「みくに、ちょっと座って。話があるの。」

母親にそう言われ、ダイニングの椅子に座るみくに。
そして、父親が話し出した。

「実はな…」

◇◇◇

2年3組。
落ち込んだ様子のみくにがいる。
「…どうかしたのか。らしくねーじゃん。」
心配なのか葵が話しかけてくる。
「葵…。」
みくには悲しい顔をして葵の方を見上げた。

みくには葵の顔を見るのが辛かった。
そのまま何も言わず、みくには教室を出ていった。

「…みくに?」

いつもとは違う様子のみくにに、葵は戸惑った。

◇◇◇

みくには、ピロティで1人悩んでいた。
(どうしよう…。どう打ち明けよう…。)

そこへ、梨々がやってきた。
「あら?みくにちゃん。こんなところでどうしたの?」
「梨々さん…。」
みくには少し半泣き状態で梨々の顔を見た。
「実は…」
みくには、梨々に打ち明け始めた。

◇◇◇

その日の夜。

坂井邸。

「奈々、いる?」
リビングに入ってくる梨々。
奈々もリビングにいた。
「何?梨々。」

「聞いた?みくにちゃんたち引っ越すんですって。」

「え!?」
驚く奈々。
「何それ!?聞いてないんですけど!!」
「…武生くんから聞いてないの?」
「ぜっんぜん!!あいつ何黙ってやがるんだ!!」
怒る奈々。
「…武生くんにも伝えるタイミングがあるから、あんまり騒がない方がいいわ。ごめんなさいね、余計なこと言って。」

そう言って、梨々はリビングを後にした。

「……。」

梨々はみくにと話したことを思い返す。

ーーーーーーーーー

「え?引っ越し!?」

「はい…。」

「そう…。寂しくなるわね…。」

「…葵に打ち明けられなくて…。わたしがいなくなったら、わたしのこと好きじゃなくなっちゃうのかなって…。」

「…そんなことないわ。」
「葵くんは一途な人よ。みくにちゃんのことずっと想っていると思う。それより、そんな顔してたら、葵くん心配するんじゃないかしら…。」

ーーーーーーーーー

みくにも、梨々との会話を思い返していた。

(…そうよね。明日は、葵に打ち明けよう…)

◇◇◇

次の日。

「よう。みくに。」
先に声をかけてきたのは葵だった。

「葵…!」
心の準備が出来ていないみくには戸惑う。

「お前、最近、俺を避けてないか?」
「え?そんなことないよっ。」
焦るみくに。
「じゃあ、なんでそんな元気のない顔するんだよ…。」
「……。」
みくには、心を決めた。
「わたし、引っ越すことになったの。」
「え?」
驚く葵。
「……。」
しばらく沈黙が続く。

「……それは、残念だったな…。」
口を開いたのは葵だ。

「え?」
戸惑うみくに。
「それだけ?」
「…だって、しょうがねーだろ。親の都合なんだから。」
葵も多忙な父を持っているので、親の都合でどうにもならないことはわかっていた。
「だって…もう会えないかもしれないんだよ?」
「会おうと思えば会えるだろ。休みの日とか。」
「でも、ずっと一緒にいれないじゃん!!」
葵との温度差に苛立つみくに。
「もういいよ!」
バンッ
教室を出ていくみくに。

「…っんだよっ、くっそ…!」
葵も一人苛立ちをみせていた。

◇◇◇

夕方。金津邸。

葵は、夏にみくにと一緒に勉強したあの座敷で一人考え事をしていた。

そこへ皐がやってくる。

「…みくにちゃんに聞いたのか?」

皐は、梨々にみくにたちの引っ越しのことを聞いていた。

「…ああ。」

俯きながら返事をする葵。

そんな葵に皐はこう話した。

「…付き合い続けるか、別れるか、未来なんて誰にもわからない。だけど、今の気持ち素直に伝えるのが一番いいんじゃないか?」

皐の言葉にハッとする葵。

「…風呂入ってくる。」
皐はその場を後にした。

葵は何かを決断したようだった。

◇◇◇

その次の日の朝。

みくにの下駄箱の内履きの中に紙が入っていた。

”今日、一緒に帰ろう 葵”

…ドキン

葵とは喧嘩したままだ。

口で言えばいいのに。

みくには切なくなった。

◇◇◇

帰る時間まで、葵は一切みくにに話しかけなかった。
こんなことは初めてだ。

みくには、1日が長く感じた。

そして、帰宅時間になった。

みくには、葵の帰るタイミングを見計らっていた。

だが、葵は一向に帰る気配がない。
ずっと、机に向かって参考書のようなものを読んでいる。

次々とクラスメイトたちは帰っていき、2年3組の教室には、みくにと葵、二人きりとなった。

みくには思い切って葵に話しかけた。
「あ、…あの、こんなものが入っていたんだけど…。」
朝、下駄箱に入っていた紙だ。

「……逃げなかったんだ。」
葵もまた、みくにの行動を様子見していた。

そして、こう続けた。

「俺…、お前のこと、大切に思っていないように見える?」
「え?」
葵は、立ち上がった。そして、みくにの腕を掴み、みくにを壁側に寄せた。
突然のことに驚くみくに。
葵は切なくみくにをみつめた。そして…

みくにの唇に優しくキスをした。

(…え?)

何が起こったかわからず、混乱するみくに。

唇から離れ、葵の顔が見えると、途端に赤面した。

「みくに…。これが俺の本当の気持ち。」
葵は真剣な表情だ。
「離れていても、ちゃんと好きだから…。」

「葵…。」
葵の言葉に涙ぐむみくに。


と、そこへ…

「あの〜、お取り込み中、申し訳ないんですけど…。」

現れたのは、皐、梨々、奈々、そして武生だ。

バッ
すぐさま離れる葵とみくに。

「な、なんだよ、いきなり現れて!!」
焦る葵。

「ごめんね〜。どうしても伝えたほうがいいかなって思うことがあって…。」
と梨々が言うと、後ろから、武生が出てきた。

「た、武生までどうしたのよ!」
みくにも焦っている。

「なんか盛り上がってるみたいだけど…。俺たち、引越しはするけど、転校はしないぜ?

は?
声を合わせて驚くみくにと葵。

実は、芦原家の引っ越しの話はこういう内容だった。

ーーーーーーーーーーー

「子供たちももう来年受験だし、もう転勤についていけないと思うのよね。」
と母。
「だから、家を買ったんだ。」
と父。
「4月の新学期に間に合うように引っ越したいの。だから、みくに、武生、引っ越しの準備してね。」
と母。

どうも、みくにはここまでしか聞いていない。

「家は、学校から遠くなっちゃうけど、ギリギリ校区内だから。帰りは気をつけて帰らなきゃね。」

ーーーーーーーーーーー

転勤に伴う転校を繰り返していたみくににとっては、引っ越し=転校だったようだ。

「そうだったんだあ〜。」

ホッとし、全身の力が抜けるみくに。

その横で、顔を赤くし、怒りを表す葵。
「き〜さ〜ま〜…!!」
「あ、葵、ごめん、勘違いっ」
笑顔で謝るみくに。
「俺の唇返しやがれ!!」
「はあ!?あんたがしてきたんでしょうが!!」
付き合ってても相変わらず喧嘩の多い二人である。

「まあ、何がともあれ、一見落着だなっ。」
その場をまとめようとする奈々。

「そうだわ!みんな一緒に進級できるお祝いに、春休みうちでパーティーしましょ。この6人で。」
「えっ、パーティー!?賛成!!」
梨々の提案に途端に機嫌を直すみくに。

その横で、皐が葵に声をかけていた。
「…良かったな。葵。」
「……。」
「ああ…。」
葵は照れくさそうに返事をした。


◇◇◇◇◇

早咲きの桜が咲き始めた頃。

坂井邸では、春江さんの料理を囲みながら、6人の少年少女たちはパーティーを楽しんでいた。
「それでは、みんな揃って3年生になれることと芦原家の引っ越し祝いにカンパーイ!!」
奈々が音頭をとって盛り上がる。

「あーあ、とうとう受験生かあ…。」
「憂鬱になること言うなよ。」
「奈々、一緒な高校行こうよ♪レベルも同じぐらいだし♪」
「まあ、俺たち6人じゃ高校は同じところには入れないよな。(レベルの差ありすぎだし)」
「梨々さんと皐くんは同じ高校行くんでしょ?」
「まあ、そのつもりだけど…。」
「まあ、確実に6人一緒に入れるのは後1年だな。」
「そうだね。」
(だけど…離れていてもずっと仲良しでいたい。この6人で。)

みくにはそう願った。

この先の未来は、それぞれ違うかもしれないけど、繋いだ絆はずっと続きますように…。

(完)



最後までお読みいただきありがとうございました✨
8話分、1年を通して、季節に合わせて連載させていただきました。
素人の駄文で申し訳ない💦お付き合いいただき感謝です🥲💕
機会がありましたら、途中の細かいエピソードとかも漫画などで描くことができればいいな〜なんて思っています☺️(思うだけならタダなので😇)
漫画も小説も自己満足なところが大きいですが、今後もマイペースに創作続けていきたいです😌


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