見出し画像

とりぷるツイン第5話〜学校祭〜

【第4話はこちら】↓


2学期になり、みくにの通う中学校は賑やかだった。
もうすぐ学校祭だからだ。

「今年こそ、皐様と学校祭回るぜっ!!」
2年2組では奈々がはしゃいでいた。

「あれ?でも皐様、付き合っている人いるんじゃなかったっけ?」
奈々のはしゃぐ様子を止めるかのように口を挟むクラスメイトたち。
でも奈々は冷静だった。

「ああ、それ?別れたらしいよ。」


◇◇◇

ところ変わって、2年3組。

2年3組はお化け屋敷をするようだ。

「…ということで、これで役決めを終わります。」

学活の時間、それぞれの役決めをし、みくには葵と同じ場所の担当になった。

授業中、いつもに増してぼーっとしていた葵は聞いていなかった。
「ちょっと!話聞いてたの!?」
「はあ?なんで俺がこんなもん持って脅かさなきゃいけないんだよ!」
提灯を持って不満げに訴える葵。

「とにかく、俺はその日忙しいからパスだね。」
提灯を置いてその場を離れようとする葵。
「ちょっと!忙しいってどういうこと!?」
みくにの呼びかけに立ち止まる葵。
「…お前ならわかるだろ?…一緒に回りたい奴がいるんだよ。」
「あ…!」
(…そっか…。梨々さんと回りたいんだ…。)

◇◇◇

学校祭当日。

「ごめんなさいね。学校祭の実行委員になってしまって…。一緒に回れないのよ。」

学校祭本部になっている体育館には、忙しそうにしている梨々と武生の姿があった。2人とも学校祭実行委員だ。
学校中探してようやく梨々を見つけたのに…。
葵は、落ち込みながら自分の教室に戻った。
そこにはみくにがいた。
「あれ?戻ってきたの?」
「……。」
(…フラれたのかな?)
何も喋らない葵に少し期待を寄せるみくにであった。


◇◇◇

2年4組の前では、奈々が皐を待ち伏せていた。

皐は女子に囲まれて中々出てこない。
一緒に回りたい女子がたくさんいるのだ。

(あ〜〜イライラする。一般庶民が皐様と回れるわけないでしょうが!)

ようやく女子の群れから出てきた皐は、奈々に気づいた。

「あれ?奈々ちゃん、何してるの?」

「あっ皐様…。」
いきなり声をかけられ、焦る奈々。

そして、顔を赤らめ、
「…一緒に、回らないかな…って。」

少し考える皐。
そして
「いいよ。」
と返事した。

◇◇◇

2年3組では、みくにと葵が提灯を持って脅かす準備をしていた。
薄暗い中、狭い空間…隣には葵がいる…。
みくにはドキドキしていた。

「こわ〜い!」
「全然怖くねー。」

外から色々な声が聞こえてくる。

「皐様!お化け屋敷入りましょ!」

「ん?」
外から奈々の声が聞こえてくる。

隙間から覗いてみると…
皐と奈々の姿があった。

「あいつら…なんで一緒に回ってるんだ?」
突然の展開に疑問に思う葵。

(奈々ちゃん…。もしかして、皐くんに想い伝えたのかな…?)
みくには奈々の気持ちを知っている。
両思いになったかどうかは不明だが、中途半端な気持ちだった自分よりはマシと少しホッとした。


◇◇◇

学校祭前半の部が終わった。
「はあ〜疲れた。」
みくにたちはようやくお化け屋敷の仕事から解放された。
「…一緒に回るか。」
「え?」
葵に誘われ、驚くみくに。
「つーか、あれだからな。一緒に回りたい奴が忙しくて回れないから、補欠だからな!」
本命は、梨々。それでも、少し嬉しいみくにであった。

◇◇◇

それぞれの場所で過ごし、あっという間に夕方になった。
体育館横の渡り廊下に皐と奈々はいた。
「今日は楽しかったね。奈々ちゃん。」
「皐くん…。」
皐の後ろからついてきた奈々は立ち止まる。
「ん?」
皐が振り返る。
そして、奈々は思い切って口にした。
「私と付き合ってください。」


突然の告白。

皐はしばらく黙り、そして口を開いた。

「…ごめん。」

その言葉に奈々は気持ちが込み上げた。

「…なんで?なんで、芦原みくには良くて私はダメなの!?」

すると、皐からは意外な言葉が返ってきた。

「…奈々ちゃんは大切な人だから…。」

”大切な人だから…”
この言葉の続きは、”嘘をつきたくない”。

奈々は瞬時に悟った。

自分は梨々の妹。

だから、大切な人だと皐は言った。
ただ、それだけ。

「梨々と…まだ続いてるの?」
奈々は皐と梨々が付き合っていることを悟っていた。

「奈々ちゃんには本当のこと言うよ。」
皐は真剣な顔で話した。

「俺は梨々のことが好きだ。」

あまりにも直球な答えに奈々は涙ぐみ下を向く。
だけど、涙を拭い、後ろを向いた。

「皐様!」
一生懸命笑顔を作り、皐の方を向いた。

「…明日からも友達でいてね。」
そういうと奈々はその場を去った。

「……」

その様子を体育館での仕事が終わった武生が見ていた。

「あんたってほんと女ったらしだよな。」
武生が皐に罵声を浴びせる。
「…君は…。」
見たことある。みくにの弟だ。デートの時、奈々と一緒にいたのも覚えている。
「でもまあ、正直俺はホッとしてるけど。」
そう皐に言い残し、武生は奈々を追いかけた。

◇◇◇

奈々は、体育館横の入り口の階段に座って顔を伏せていた。
そこへ武生がやってくる。
「あんな男より俺の方がずっといい男だと思うけど?」
奈々が見上げるとそこには武生が立っていた。
「…はあ?」
何寝ぼけたこと言ってんだと言いたかったが、奈々には言う気力もなかった。
「…あんたがうざくなかったら、ずっとここにいるけど、いい?」


武生は奈々に対していつもより強気だが、優しくそう言った。
「…うざい…。」
「……」

「…でも、そばにいて。」
奈々はこの日だけは、自分を想ってくれる誰かが寄り添っていてほしい、そんな気持ちでいたのだった。


【第6話はこちら】↓


この記事が参加している募集

恋愛小説が好き

最後までお読みいただきありがとうございます!気に入っていただけたら嬉しいです✨