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映画は光だった|『エンドロールのつづき』

『ニュー・シネマ・パラダイス』をはじめ、現在公開中のスティーヴン・スピルバーグ監督『フェイブルマンズ』まで、「映画を題材にした映画」や「映画館についての映画」はやはりグッとくる作品が多いです。

映画界や映画人を題材にした作品も多くあり、『雨に唄えば』をはじめ『バビロン』もサイレントからトーキーへの時代の移り変わりを描いていると聞きました(わたしはまだ『バビロン』は観れてないのですが😭)邦画では活弁士を描いた周防正行監督の『カツベン!』も良かったですね。

変化球としては、テロに巻き込まれたイランのアメリカ大使館員を救出するため架空の映画製作をでっち上げる『アルゴ』や、大ヒットした『カメラを止めるな!』も面白かったですね。
韓国映画の『映画は映画だ』はタイトルがとても好きで、チャン・イーモウ監督『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』は以前このnoteで感想を書きました。

1月に鑑賞した『エンドロールのつづき』も映画に対する愛が溢れたとても良い映画でした。インドのチャイ売りの少年が映画監督の夢へ向かって走り出すという、パン・ナリン監督自身の実話をもとに描いたヒューマンドラマです。

インドの田舎町で暮らす9歳の少年サマイは、学校に通いながら父親のチャイ売りを手伝っている。厳格な父は映画を低劣なものと考えているが、信仰するカーリー女神の映画だけは特別だと言い、家族で映画を見に行くことに。
初めて経験する映画の世界にすっかり心を奪われたサマイ。その後も映画館へこっそり忍びこむがついに追い出されてしまう。そこで出会ったのが映写技師のファザル。サマイの母が作るお弁当と引き換えに、映写室で映画を観ることを提案されます。

本作でとても面白いなと思ったのは、映画に魅了されたサマイが興味を持ったものが「光」だったこと。色のついた瓶を太陽の光に当てたり、カラフルなセロハンをメガネのように顔につけたり、鏡を反射させたりと、サマイと友人たちは「光」をとても楽しんでいました。

わたし自身が文系の人間なので、映画に興味を持ったサマイが物語を書くのではなく、まず映像を映し出すという理系アプローチがとても面白いなと感じました。監督自身もまず映写機に興味を持ち、「スクリーンの中で展開する物語よりも光に心を奪われたのです。」とインタビューで語っていました。

そして本作は映画、その中でもフィルムについてフォーカスが当てられています。今日の上映形態を見てわかる通り、映画はフィルムからデジタルへ移行していき、フィルム映画の全盛期は終焉を迎えます。
本作のラストに描かれる「フィルムの行き着く先」にはハッとさせられ、美しさを感じました。インドならではの転生という考え方、とてもとても良い描き方でした。

▼▼『エンドロールのつづき』に登場するごはん▼▼

サマイが映写室に入れてもらえるきっかけは、映写技師のファザルにお母さんが作ったお弁当を渡すという交換条件でした。サマイのお母さんはとても料理上手で、本作では数多くの美味しそうな料理が登場します。
キッチンは壁がなく決して裕福とは言えない家庭ですが、きちんと瓶に入れて並べられたスパイスやお弁当を包む布など、お母さんの丁寧さと優しさが垣間見れます。

映写技師のファザルも、サマイのお母さんが作るチャパティの美味しさに感動していたけれど、サマイが「お母さんが作るチャパティは厚くて毛布みたいな味」という表現したところが可愛い。

キャベツ、グリーンピース、じゃがいもと数種類のスパイスを使ったおかず(コビ・バテッタ・ヌ・シャーク)や、ナスにベーサン粉(ひよこ豆の粉)を混ぜたスパイスを詰めて、トマトのグレイビーソースで煮込む(バーレラ・リンガナ)料理など、チャパティと一緒に食べたら美味しそう〜。

オクラに何かを詰めている作業が印象的だったのですが、バレリ・ビンディという新鮮なオクラにスパイスとココナッツを詰めて煮込む料理。(ちなみに「ビンディ」はインドの言葉でオクラのことだそうです)

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またカレーはただのカレーじゃなく、自家製ラビオリをカレーに入れるという一手間をかけた仕上がりになっていました(お母さんすごい!)

https://twitter.com/shochiku_youga/status/1616992016499638272

面白かったのはパトラという軽食で、新鮮なタロ芋や里芋の葉を使って作られる、スパイシーで甘くピリッとした塩味の軽食。タマリンドチャツネと一緒に食べるそう。桜餅のような葉っぱを使った、巻き寿司みたいな見た目で面白い料理だなぁと思いました。

お弁当を包むとき、生野菜(根菜ぽい、ユリ根みたいなやつ)を一緒に入れるのも面白かったです。日本でいうとお弁当にデザートのミカンやバナナを一緒に持たせるようなものでしょうか。


パンフレットにレシピが載っているのが本当に嬉しい!ぜひパンフもご購入ください!

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