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「詩人宣言XXⅥ」

下るエスカレーター その下から風
立ちのぼる風に 外の雨のにおい そして今いる書店の中の
紙とインク 本 雑誌がもつにおい
それらが混じり合い なま温かい風となり
ぼくを包み込む
ぼくはエスカレーターから下を見る
外の街のことを考える
ここは世界最大という本の街 東京・神保町
駿河台下の大型書店から外に出て
いかめしい敷居の高い古書店から 一山ン百円の文庫本をほそぼそと商う かび臭い古本屋まで
本という本が並ぶ街
そこを何年も 当たり前のように歩いている
歩いてあるいてあるいて あるいたとて
ぼくの名前で出ている本はあるだろうか
何年か前までネットで100円の値がついていたが
今は 2300円だって…
単著はこの一冊だけなのだが
生きている間に 何冊かの本を 記者のはしくれとして出しておきたかった
振り返っても 30代半ばで出したこの一冊だけ
その後 見るべき仕事 残るような仕事もないまま
いたずらに時は ときは流れて
今 爪痕を残したい その一念で
詩を書く
流されてきた 自分の生き方に抗うように
詩を書く
これが今のところただ一つの 抵抗
バカの一念 これを貫いてやれ
正直 自分でもその気持ちがよくわからないのだが


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