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私、ヲタク先生【18】

さて、8月に入りますます気温が上がってくる昨今、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

今回は二本立てで参ります。

お祈りメールが届きました

「選考の結果、一次試験を不合格といたします」

 私のもとに届いた、一通の手紙。もう何度も見てきた薄っぺらいA4サイズの紙っきれ。

 まあ、分かっていたことだ。筆記試験については、

「あ。これだめだわ」

 と思ったぐらいです。それに、指導要領や色んな事業が増えてきたので、それに対応する気がなくなってきているのです。

英語やプログラミング、道徳科。

 給特法に、過労死ラインを超すほどの勤務時間に精神疾患。

職務中に死んでも過労死とは認められない

旧態依然した組織運営と、それに甘んじる金太郎飴のような意識

 調べれば調べるほど、この世界に身を置くことが怖くなりました。

 先生に戻ろうという気持ちが、ここでぽきりと折れました。

 確かに、先生になるという夢はここでついえてしまうかもしれない。それがよかったのだと思えるには、どれだけの時間が必要なのだろう。

 いろいろなことを考えた。

 私がだめだった理由はきっと一つ。

「先生になりたいというには、あまりにも世界を知りすぎたから」

 何も知らなかった頃、先生以外の世界を知らなかった頃は、まるで迷宮の中を彷徨うかのように先生になることだけを見ていた。

先生にならない方がいいかもしれないな。

 だって、子ども達はこれから「キャリアシート」を書かなきゃいけない。

 何歳までに何をして、どんな仕事をして、どんな家庭を築くかを書かなきゃいけない。

 それを指導しなきゃいけない、それが心苦しい。

夢を砕いた人間が夢を語るなんて、荒唐無稽だ

 夢を砕いて、そのかけらを寄せ集めたものを隠してツギハギだらけの夢を子ども達に見せなきゃいけないのがつらい。

 これが現実なんだと、見せつけなければならないことに暗澹たる思いを抱く。

 上の人達が言っていることが分からなくなってしまった。

 私の夢を砕いた人達の元ではたらくことに嫌気がさしたと言ってもいいだろう。

 臨時採用も考えた。でも、きっと私はこんな事を言うかもしれない。

「学級崩壊させて、精神疾患を患ったクズを雇うんですか?」

「こんなクズを雇わなければいけないほど現場が疲弊してるんですか?」

「労災が下りないし、雇用保険もないなんて憲法をご存じないのですね」

 私は、もうこの世界に戻ることはないだろう。

 夢を砕いた人達の元で夢を語ることの滑稽さ、そして愚かしさを知らないのだろう。

 私の中にあったほのかな灯火が、今、静かに消えた。

この後どうしちゃおう

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