読書レビュー:社会学「選択的シングルの時代」
体感的にシングル(独身)が増えてきているような感覚を、世界中の統計から明文化したイスラエル出身の著者。発行は2016年ですが、国内では2023年6月末刊行。
世界中で存在感を増しているシングル
そもそも、シングルの定義とは何でしょうか?著者は以下のように定義します。
※特定のパートナーと同居している人たち=共同生活(同棲)は含まれない。シングルの人口10%を占める。
中でも1)が占める割合が高く、世界的に見てもいかにシングルが増えているかは分かります。
先進国では想像できると思いますが、実は南米や中等の国、アフリカ諸国でもここ数十年の間にシングル人口が増加しています。
シングルが増加する背景は?
彼は、人々が結婚に憧れなくなったと考えています。その理由として、
を上げています。
1)はデータが抽出しやすく、女性の一人あたりの出生率、平均寿命、都市化、男女の不均衡の統計から読み解いています。
経済発展では、仕事のある都市に人が集中しインフラが整い教育が改善されという流れは決定している中、出生率が低下することも当然の流れです。
出生率が低下すると、結婚の時期を遅くすることができ、少ない姉弟で育った次の世代にも少人数の家庭という概念が引き継がれていきます。
また、人口統計的には平均寿命も影響があります。長生きすれば長いほど、高齢の人が一人で生きる時期も長くなります。必然的にシングルが増えるのです。先進国だけでなく、途上国でも長寿世界になっています。
加えて、都市によっては男女比の不均等が生まれています。
このように近年の人口統計の動きが、結婚制度を支える土台を変えつつあります。過去に戻らないものもありますし、一時的な現象と考えられるものもあります。
統計のあとは、根付いてしまったシングル文化の中で、シングルが受ける偏見やどう幸福を得て現実的に暮らしいくかを、自身がシングルでもある彼が2章以降で解説します。
社会関係資本
結婚=幸福ほどシンプルではないと分かっていながらも、シングルである人は「不幸」「未熟」というイメージがつきまとっています。
一方、幸福感を大きく左右するのは「社会関係資本」とも言われています
社会関係資本は、近年幸福やウェルビーイングとの関係において重要視されるようになりました。趣味のクラブや、政治経済活動以外のコミュニティで過ごす時間と強く結びついていることも明らかになっています。
より社会と繋がっている方が、幸福感が高いことが著者のヨーロッパにおける研究で表され、幸福に独身既婚であることは関係ないと著者は提唱します。
所感
冒頭はデータがあるものの、やや恣意的にピックアップされたように感じますが、十分に説得力のある説明になっています。ある程度は著者の想像で補われているところもありますが、定性的なヒアリングも終えた研究結果であることは分かるでしょう。
冒頭の著者の子供時代の体験でも分かるように、イスラエルは、女性が3人子供を生む先進国で国が”家族”を推奨しています。
同じくイスラエルの著者『母親になって後悔してる』もベストセラーになったように、国策の水面下で見えない声が隠れているように感じます。一方で、その声を研究成果として発表できる優秀な人材が多くいることが本当の国の豊かさだとひしひしと思います。
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