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読書レビュー:社会学「男性中心企業の終焉」

ジェンダーギャップ指数のランキングが、年々下がっていく日本。働く女性が面する差別を、最新の情報で解析していくイチオシの本です。


コロナによって拡大した家事育児時間格差

日本では、性別役割分業が長年課題視されていました。

性別役割分担意識:
男女を問わず個人の能力等によって役割の分担を決めることが適当であるに も関わらず、「男は仕事・女は家庭」「男性は主要な業務・女性は補助的業務」等のように、男性、女性 という性別を理由として役割を分ける考え方のこと

内閣府男女共同参画府

1990年代に共働き家庭の方が多くなっても、女性は家事育児仕事をしていた現状があり、その背景として男性の長時間労働が挙げられています。

一方、私の学生時代の友人は、ほとんどが結婚後もフルタイムで仕事を継続しています。残業が多い業界・職種の友人もいる中、妻側の家事負担は10割近くが最も多く、夫が2割負担していたら珍しい方でした。男性と同じぐらい(またはそれ以上)働いているのに、長時間労働は夫の免罪符ではないのか、と思ったことがあります。

日本の男性は、家事育児が諸外国と比較して低い現状があります。

日本の家事育児時間の割合(6歳未満の子供がいる家庭):
妻は夫より1日に6時間11分も多く家事育児を担っている
夫は1時間23分(うち育児は49分)

1日6時間も多く家事育児を担っていたら、フルタイムで仕事するのは難しいのは想像に難くありません。
この格差が、コロナ禍でより広がったと言われています。

東京都実施による未就学児のいる家庭:
・男性の家事育児時間はコロナ禍で1分しか増えなかった
・女性は20分増加
→差は5時間20分まで拡大

東京都が実施した調査「令和3年度男性の家事・育児参画状況実態調査報告書」

女性は管理職への興味が薄いと言われますが、家庭内での負担が高いと就労のスタート地点に立つことが難しいでしょう。
ここで着目されているのが、男性の意識改革です。

男性がケア労働を行う未来

家事育児は、無償労働と言われるケア労働で、女性に”適している”とされてきました。
しかし、欧米を始めとする海外では、男性によるケア労働が今までより重要視されてきました。

男性のケア労働が必要な理由:
1)女性の経済的自立や地位向上を促進するために不可欠
従来の男は外、女は内の分業体制は、男性は経済的自立を果たせるが女性は制限されてしまう。家庭内の無償労働を男性も分かち合うことで、女性の就労環境の拡大ができる。
2)男性の職業機会の拡張
機械化が進み、先進国で男性に”有利”だった筋力労働の需要は大きく低下している。看護や介護、保育といったケアサービスに関わる仕事は増加しており、ケア労働を避けると職につけるチャンスが減ってしまう
3)セルフケアの向上
一般的に男性らしいと言われるタフさやリスクの高い行動を避け、弱みを見せたり他人に相談することで生活の質向上を目指せる

多賀田「ジェンダーで読み解く男性の働き方・暮らし方」

海外ではケアと男らしさを結びつける概念も生み出されており、理想の男性像のアップデートが必要であり、そのためには企業も努力が必要です。

女性に優しい社会は、誰にとっても優しい社会になるでしょう。人権教育が磨かれているスウェーデンに関する下の著作は、誰もがケア労働に従事する優しい社会のヒントを得られます。

男性(息子)による介護に関しての本著も興味深いです。

所感

過去働く女性の差別問題の中でおすすめした本は、シェリル・サンドバーグ氏による「Lean In(リーンイン)」でした。今読んでも納得の良書です。

上記をより今風に、日本風にしたのが本著で、本当に学びが多く様々な論点がまとめられた本でした。ぜひ一度ご覧ください。

女性活躍のためにしていることが、アンコンシャス・バイアスによる差別だったということもあります。興味を持っている方はこちらもどうぞご覧ください。


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