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サービスって何?

いわゆる消費社会では客として、日常的にあらゆる「サービス」を受けるのが「消費者」である。・・・というのは実はそんなに単純なことではない。

ここで話したいサービスとは、サービス産業とかのサービスではなくて、「このホテルのサービスは格別だ」、とかいうときのように、待遇の質とかを指すサービスのこと。

何が言いたいかというと。

まず。フランス社会で(日本の感覚で)生きているといろんな壁にぶちあたる。そのうちのひとつがこの「サービス」である。日本では当たり前といわれることがこちらでは特別サービスであったり、あるいはそれ以上のことだったり。

ちなみに、日本語で言うときのこの「サービス」に当たるちょうど良いフランス語がない。この点もこの手の問題を考えるときに重要な点。

○どこからがサービスで、それはするべきことなのか

多くの場合、日本でサービスという分類に入ることは気遣いということと重なることがある。細かいところまで気遣える、かゆいとろこに手が届く、といったサービスは受ける側としては非常に心地いいものだ。

ただし、これはすばらしい側面だけではない。例えば、サービスの行き過ぎにサービス残業があるというのも現実なのだから。

さて一方でフランスの場合、対価として支払われた分を労働として提供するというのが一般的なスタンス。なので、それ以上もそれ以下もない、という考えがある。

至って合理的である。と同時に上記した壁にぶち当たるというのは、私の感覚からしたらそれ以下で留まってしまっている、と感じてしまうときがあるということなのだ。

例えば私が首を傾げてしまった(頭に血が上った)シーンを上げてみると・・・

・郵便配達人がチャイムもならさずに勝手に不在届けを置いていく(人に手渡す時間の節約・・・)

・車で荷物を自宅まで回収にくるというサービスの際に、客に電話をかけて「あと5分くらいで着くから家の下まで出て来て待っててくれ」と要求し、さらに受け取りの際には車から降りもせずに車の窓から腕を延ばして荷物を回収して去っていく・・・

・電車が遅れていることの情報を流さない+代替手段の準備に異様に時間がかかる(客を待たせるが、それは非常事態なので仕方ないという考え方)

私としては毎度、こんなの仕事のうちでしょ、とかそれこそ「対顧客のサービス」の一部なんじゃないの、と当たり前に要求したくなることだったわけだけれど、果たしてそれは正当な要求なのだろうか、ということだ。

こういう状況をフランスでフランス人に話をしてみると決まって同情されて、「ありえない!」と一緒に怒ってくれる。

・・・のだが、その先で決まって彼らがいうことは、「まあでも、最近は下請けが増えて給与もすごく下がってるからねー」と。

基本的なサービス精神は給与に関係なく、でしょ・・・なんて思ってしまうのだが、もしかしたらこの考え方が過剰サービスに繋がっているのでは、とふと思う。

彼らにそれなりの対価が支払われているのか?それを仕事として定義されているのか?

彼らからしてみれば、仕事はここからここまでなのでそれ以上は要求するな、というスタンスなのだ。

日本で働いていてよく思ったのは、そんなこと言われても・・・というようなことを「お客様のために」という一言でやらされることが多かったということ。消費者として生活をしていてもそれはよく感じることだ。

そこまでしてくれなくても、ということをする。

○サービスの裏に見え隠れする権利という言葉

ここで重要なのが「権利」という言葉である。

サービスと権利。これは実はとっても複雑な関係を築いているということを最近よく考える。

フランス人は自分の権利についてとても敏感だと感じる。自分の権利についてとても詳しい。

職場でも、自分の残業代のことや有給休暇の使い方、さらには退職の方法(会社との交渉含め)などについて、とってもよく知っているし、知らないと思ったら調べてきちんと主張する。

権利なのだから、と言えば上司も何も言えない。そこは空気を読めと言われる類の空気も日本ほどは感じない。(勘違いしてしまう人がいるようだけれど、このような空気がフランスにはまったくない、というわけではない。多少はある。)そしてもちろん、フランス人は権利主張が完璧にできている!と言いたいわけでもない。

ここでは、私がフランスと日本を比べているので、比較的にフランス人の方が権利主張をしているというだけで、実際、日本がどうかなんて知らないフランス人も、「権利の主張って難しいよね」、と言っていたり、「かなり譲歩しちゃった」、とブツブツ言っていたりするのだから。

フランスでも客がうるさくサービス向上を求めることもできる。ただし、それと同時に労働者の権利という点もかなりしっかりと根付いているといえる。

やっぱり問題は複雑だった。

とにかく。フランスで暮らしながら日本レベルの「サービス」は期待してはいけない。そして日本の過剰サービスも困った社会問題に繋がっていたりするということ。




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