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セルフケアは「未来の自分」を救う―利他・ケア・傷の倫理学

今朝ご紹介する本は、近内悠太さん『利他・ケア・傷の倫理学』です📖

「与える」について論じた本書。

1冊目の『世界は贈与でできている』で触れた「受け取るとはどういうことか?」の続編という位置付けです。

本の中で見つけた「言葉」をテーマに、皆さんにある一冊をご紹介していく「言葉で聞く読書」📖
noteを読む時間がない方は、何か作業をしながらコチラをお聞き頂けると嬉しいです🍀


姥捨ての物語とセルフケア

本書で、特に印象に残った考え方はコチラです📝

☑セルフケアとは、未来の自分という他者を救うことである

例として、姥捨ての物語があげられています。

簡単に内容をご紹介すると、こんな感じの物語💡

  • 貧しい村が舞台→70歳になると、母親を山に捨てる習わしがある。

  • 息子が自分の母親を背負って山に行く際に、「母親を下ろした後は、決して後ろを振り向いてはならない」という掟(ルール)がある。

  • 物語では、掟に沿って息子さん(主人公)が帰っていくと、雪が降ってくる。

  • 雪が降ると「運がいい」とされていた→せめて一言だけ「雪が降ったね!」と母親に伝えたい、と息子さんは思った。

息子さんは思わず、掟を破り母親のいる方へ歩き出した、というエピソードです。

この時の息子さんは、共同体の道徳(=掟※)より、自身の心に従ったんですね。

※本書では「倫理」としています。

それでは、この息子さんの行動は、誰に向けられた利他だったのでしょうか?

それは、「未来を生きている息子さんご自身」です。

傷つく=自分の大切にしてるものを大切にできなかった時

もし掟を守り山を降りて母親に最後の別れをしなかったら傷ついたであろう”未来の自分”の傷を、ケアしたのではないか?

セルフケアとは「未来の自分という”他者”を救うこと」でもある、という解釈なんですね。

自分の母親を山に捨てる行為は、自分を責めて傷つけることにつながると思います。

こんな風に、自分の大切にしてるものを大切にできなかった時に人は傷つくのです。

だから、未来を生き直すために母親のもとに戻った=セルフケアという解説でした。

大切なものが一人ひとり違う社会だから

多様性の時代と言われるようになって、大切にしてるものが一人一人ずれてくる社会になりました。

本書では、「利他とは、今の自分が大切にしているものよりも、他者の大切にしてるものを優先すること」としています。

この他者には「未来の自分」も含まれる、という考え方が学びでした。

これは私の個人的な解釈ですが、他者の立場に立って相手を尊重することも大切。

それと同じくらい、未来の自分を傷つけないことも大切なのではないでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございます🍀

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