見出し画像

人通りが少ない、とぼやいているという話を聞いた。飲食店に限らず、マーケティングを理解せず、学ばす、センスのない人間は、会社勤めで指示されたことをしていた方が良い。

東京の下町アーケード商店街として名高い、今はもう、正直いってだいぶ寂れてしまった商店街の、それもはずれの方に、ステーキ屋さんが開業した。

ステーキの定食が3,000円。
それがどれほどに上質な肉を使い、どれだけ素晴らしいテクニックで焼きあげたとしても、また定食のお米が日本一クラスのものだったとしても、高い。

ここらあたりに暮らす人の物価感や、周囲の店の物価と比べたら高いのだ。
どのような内容なのかはわからないけれど。
高い、安いは比較や感覚なのだからそうなる。
よって、お客さんが入っているのを見たことがない。

人通りが少ない、とぼやいているという話を聞いた。
うーん、それは厳しいなぁ。

人通りが少ないのが厳しいのではなく、開店してからそんなことを言っているのだとしたら厳しい。

40年近く前に駒込の地に焼き鳥屋をはじめた叔父貴は、駒込に決めるまでに、かなりあちらこちらをお店候補として見たそうだ。

候補の空き店舗の前に何時間もいて人通りをずっと観察して、それから周囲を歩き回って。
そして、周りのお店に食べに、飲みに入って。
曜日や時間を変えて何度も何度も。
そうやって、人の数だけではなく、あたりでのお金の使われ方を観察したと。

その上で開店した駒込の店は、駅からさほど近くもなく、駅から続く商店街からも外れており、行き止まりのような道の路地を入った、人通りなんて皆無の場所だった。

叔父貴そこで37年焼き鳥屋を営んだ。
開店時期がバブル期でもあり、儲かったと思う。
その勢いもあったのか、25年ほどは連日盛況で、予約しないと入れなかった。
甥の僕でさえ、予約がとりにくかった。

質の良い肉を扱い、焼き鳥は美味かったし、美味しい酒だけを置いてもいた。
東京で初めて十四代という日本酒を置いたのは叔父貴の店だ。なので、十四代はあらゆる種類のものがいつでもあった。
流行ったのは、儲けられたのは、焼き鳥や十四代はじめ美味しい酒も要因ではあったろう。

しかし、なにより、その場が叔父貴の店にマッチしていたからに違いない。
叔父貴の出したい焼き鳥とその値段が、駒込に住む、駒込に仕事で通う人たちに合ったからだ。
実際、予約しないと入れぬほどでありながら、遠くからくる一見のような客はほぼいなかった。
もっとも、取材掲載などは一切お断りしていたが。

マーケティングの話だ。
基礎の基礎のマーケティングの話。
人通りが少ない、などと開店してから言ってしまうような経営者では、何をやっても厳しかろう。

飲食店に限らず、マーケティングを理解せず、学ばす、センスのない人間は、会社勤めで指示されたことをしていた方が良い。
街じゅうにあるお店がそれを示唆してくれているが、気付かぬ人も多いようだね。
おにぎり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?