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子供の夏休みが怖い怖い映画『イノセンツ』

退屈な夏休みに不思議な力に目覚めた子どもたちの遊びが、次第に狂気へと変わっていく姿を、美しくも不気味に描いたノルウェー製のサイキックスリラー。

いやぁ、もう冒頭から怖い。
子供って無知ゆえに残酷だからこそ、大人なら「この辺で止めとこうか」って思うような歯止めがない。
なので、痛そうなことも平気でやってしまう。
だからといって、大人が想像するほどには悪気がなかったりするから厄介。

だから『イノセンツ』、複数形。
イノセンツなのは主役の子供たち4人。
というか、子供たちの親が数人出てくる以外には、登場人物はほとんどいない。
この4人の子供たちくらい。

白人の姉妹と有色人種の少年と少女が1人づつ。
白人の姉妹の家は両親が揃っているけれど、
有色人種の少年(おそらくアフリカ系)、少女(アラブ系かインド系か)は母子家庭のようで父親が不在なのが北欧(ノルウェーかな)の最近の社会情勢を反映している?

2008年くらいにスウェーデンとデンマークへ行ったことがあるが、その時に(アメリカと比べて)驚いたのが、その当時は白人以外をほとんど見なかったこと。
インド料理や中華料理の店は数件見かけたが、コンビニエンスストアの店員もほとんどが白人で、アメリカのように職業で人種が決まっていなかったのが新鮮だった。
なので、この映画で15年後くらい経った北欧で普通に有色人種の家族が出てきたことに少し驚いた。
映画の筋とは関係がないのだけれど。

さて、本作の映画監督は最近話題になった「わたしは最悪」で共同脚本を担当していた人らしく、本作で監督2作目。
この監督、センスあるんじゃないですか。

映画のストーリーは乱暴に言ってしまえば、子供が主人公のサイキック対決もので、
面白がって自分の能力をわがまま放題に使ってしまう。
その結果、自分に意地悪をした近所の少年たちの骨を折ったり、陸橋から突き落としたりしてしまったり。

舞台は団地(日本でいうとおそらく公団みたいなものじゃないかな)、夏休み期間なので普通の家庭はバカンスに出掛けてしまって誰もいない。
しかし、母子家庭の少年・少女は旅行にも行かず団地で時間をつぶすしかない。

そんなところに同じ団地に引っ越してきた姉妹。
姉は重度の自閉症で話すことが出来ない。
その姉を少し疎ましく思っている妹。

遊び友達になる子供も少なく退屈していたところ、少年と遊ぶようになるがその遊び方もあるあるだけど段々エスカレートして来るのが怖い。
猫を階段フロアの上層階から落とすシーンがあるんだが、もう止めて!って言いたくなるが結局落としてしまう。

はい、僕も小学生の頃残酷な遊びをしていましたよ。
淀川の河川敷ででかいオタマジャクシを捕まえて爆竹咥えさせて爆発したり。
反省しています。

そして、こちらの猫も何階も上から落とされて無事な訳がなく、死にそうになっているtところ、その頭を容赦なく踏み潰してしまう少年。
その少年を見て
「コイツ絶対やばい奴やん」
と幼いながら距離をおこうとする妹ちゃん。

少年は性格がヤバいだけじゃなくて、テレキネシス(念動力)で物を動かしたりすることが出来るのがさらにヤバい。

妹ちゃんも自閉症のせいで痛みや感情を外に出さない姉に対しては残酷なことをするんだけど、それでも少年のヤバさには幼心にも気づいてしまう。

そしてもう1人の少女が登場。
彼女は自閉症の姉と何故か共感して精神的にシンクロしてしまう能力を持っている。
テレパシーみたいなものか。
そして、少女が自閉症の姉も口となり、外部とコミュニケーションを取るのを手伝うようになる。
そして、その姉も実はテレキネシスの持ち主なのだった。

自分の邪魔をする人間を超能力で排除しようとする少年と少女たち3人の闘い。
X-MENやん!
少年と姉のテレキネシス・サイキック対決が何度か出てくるのだが、まるでマグニートとプロフェッサーXのラスボス対決を見ているよう。

まぁ単なる子供たちのサイキックものにしなかったのが、この監督の手腕で、
何とも言えない静かにざわざわと恐ろしくなる演出、サウンド、カメラアングルが、超能力映画のガチャガチャした子供騙し感を排除していて、とてもスタイリッシュに仕上げている。

さいきんの映画は長尺になりがちなところ、117分という時間もいい感じ。

いやぁ、面白い映画でした!

<了>

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