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花粉を待ちわびて

いつだったか。その日はコメダ珈琲でドリップコーヒーを頼んでいたから、まだ少し寒さが残る今頃の時期だろう。

「花粉を待ちわびて」

隣のボックス席にいる女性たちの会話からその言葉を聞いたとき、私は耳を疑った。
長年花粉に悩まされ続けている私には想像もつかない言葉だ。

私は店内でもマスクを外さず、珈琲を口にする僅かな瞬間だけマスクを顎にスライドさせるほど、花粉を嫌っている。

花粉を待ちわびていると語る女性は、嬉々として話を続けている。

花粉に戦々恐々としている私のすぐ後ろで、花粉を待ちわびている子がいる。だからこれだけ花粉症に悩まされる人々が多い中でも、杉の木はメキメキと生え続け、樹齢何百年となる杉の木に至っては、まるで神様のように崇め奉られているのだな。

そんな世界の真理に迫る考察をしていると、どうやらその子が花粉を待ちわびているわけではく、映画のタイトルになっているらしい。

邦画で、ラブストーリーで、だけど青春ではなく大人な感じ、ヒロインが美人で、沖縄で・・・

断片的にだが、映画の話が聴こえてくる。

なるほど、沖縄は花粉が少ないと聞く。花粉症に憧れたヒロインが東京に行って花粉症になるお話・・・


いや待て。そんな映画あったか?

これでも某映画メディアでライターもやっている私だ。見ていないとしても、聞いたこともないなんて・・・。

こうしちゃいられない。さっきまでチマチマ飲んでいた珈琲を一気に飲み干す。当時はまだサブスクリプションの映像サービスもなかったため、花粉対策をばっちりして駅前のTSUTAYAまで映画を探しに行った。

・・・

そしてとうとう見つけたのだ

『カフーを待ちわびて』

花粉じゃなかった。
カフー、カフーと言っているのを、カフン、カフンと聴き間違えていただけだった。

カフーとは、沖縄の古い言葉で「良い知らせ」「幸せ」を意味するそうだ。果報(カホウ)ってことなんだな、たぶん。

あらすじ:小さいころ母に捨てられた青年・明青は沖縄でおばあに育てられ、愛犬のカフーと雑貨屋を営んでいた。ある日神社に行った際、絵馬に「幸せにするからお嫁に来てくれ」と書いたのだが、それからしばらくして、謎の美女が「絵馬をみて」とやってくる。明青と一緒に結婚生活を始めるのだが、謎の美女には誰にも言えない秘密があった――。

▼映画の予告はこちら

今ならU-NEXTで見放題。花粉を気にすることなく、家にいながら視聴可能だ。

カフン症のあなたもカフーを見てはいかがだろう。


編集:円(えん)

市川円|noteフリーランスのライター・編集者として記事を作る人です。noteでは、日刊かきあつめというマガジンに寄稿する記事を投稿するほnote.mu

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