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『紺瑠璃色の月』~朱華の事件簿(2)~

※こちらの文章は、私の実体験をベースに書いた小説です。

~この物語は、事実を元に書いたフィクションです。
(2)以降は、状況をみて、有料記事に変更していこうと思います~

■漣を横目に、太陽と青空の中を駆け抜ける

サンサンと降り注ぐ太陽の中、サングラスと夏っぽいワンピース姿で歩く。
暑すぎる。だけど、今日は暑すぎるくらいで丁度いい日だ。
「あ、来た。朱華、天音!こっちだよ」
「柳、お待たせーー!」

レンタカーを借りて、待っていてくれたのが柳。
先日、映画にいったときに、今回の天音企画の海の話を事前にしたところ、快く運転をオッケーしてくれた。
「柳君、運転ありがとう!あれ、菜の花(なのは)は?」
「飲み物買いにいったよ。ついでにみんなの分も。」

菜の花は、あたしと、天音の地元の友達で、唯一上京をしている友人だ。
時々、柳の飲み屋で飲むときに誘っていたら、定期的に集まるようになった。
仕事が激務で、会う時は必ず遅れてくるが、誘ったら来てくれる信頼できる友達だ。
「柳、よく休みとれたね。」
「ま、一応、今日平日だしね。お盆という名の。」
「あ、そうか。」

そんな話をしていると、菜の花がやってきた。黄色のロングワンピースに、身長が高めのショートカット美女……。
遠目から見るとモデルみたいだ。サングラスかけていると余計にそう見える。こちらに気付き、笑顔で手を振る。

「シュカ!アマネ~~~!!おはよーーーー!!!!元気してた?」
「菜の花!久しぶりだね!元気だった?」
「元気だよーーーー、今日の為に仕事バッチ終わらしたわ!!!」

嬉しそうに話す菜の花は、相変わらずだ。
買ってきてくれた飲み物を受け取りつつ、全員車に乗り込む。

「「「じゃ!よろしくお願いしまーーーーーっす!!!」」」
「うぃ。りょーーーかい。」

助手席にあたしが乗り、スマホで地図を確認する。
後ろにいる天音と菜の花は、お菓子を食べながら話をしていた。

「朱華は、海とか子供の頃いったの?」
柳から聞かれ、考える。
そういえば……。
「海有り県だったから、よく連れて行ってもらったかも。天音も一緒に連れて行ってもらって、遊んだ記憶がある。」

夏は海に行って、庭で花火をする。
おじいちゃんと、おばあちゃんが西瓜を切ってくれて、縁側で涼む。
父と母は吹上げ花火と、バケツの準備をしてくれる。大盛り上がりの花火で毎年、とても楽しみだった。

「その頃から、天音と一緒だったんだね。」
そういえば、天音とは、小さい頃からの付き合いで、よく遊んでいた。
天音の家庭は共働きで、家に一人の時は、うちにきて宿題をやったり、晩御飯を一緒に食べたり、テレビを見たりした。
大きな喧嘩もあまりせず、仲のいい従妹だと自分でも思う。

「あ、ヤナギくん!曲変えていい!!?」
「いいよ。」

菜の花が、iphoneの曲を変える。
世代が一緒だからこそ、懐かしい曲も同じで、ドライブ中だからこそ聞きたい夏歌を選曲する。
「お、これ、懐かしいなぁ~!!」

旅行は、目的地に着いてからも楽しいけれど、あたしは、どちらかというと着くまでの道のりが結構好きだ。
その時に話したことや、トラブルが毎年のネタになる。
以前も、このメンツで遊びにいったときに、菜の花がパーキングでスマホを忘れて、大騒ぎで取りに戻ったことがある。あの時は焦ったけれど、いまだに呑んでいる時に話題にあがる。

「そういえばさ、今回アマネが行きたいところってどんなところなん?」
ポテチを食べつつ、菜の花が話す。

「うちの店長の同級生がやっているレストランなんだって!千葉の海沿いにある、カフェレストランで、この時期は人気店らしいよ。」
「あ~、あのオトコマエ店長ね。最近、アマネのお店にも行けてないなー。」
「菜の花ちゃん、忙しいからしょうがないよ。モーニングにきて♪♪」
「天音、予約とってくれたんだよね?ありがとう。」

旅の言い出しっぺである、天音が今回のほとんどの段取りを組んでくれた。自分で言いだしたことは、既に脳内でプランがたっているらしく、旅のスケジュールから、お店の予約、ドライバーの手配などをカンペキにこなしていた。毎回その仕事っぷりには恐れ入る。

「私が行きたいっていったしね!!」

当然です!というドヤ顔をしている天音。
そんな話をしているうちに、海が見えてきた。

「「「「海だーーーーーー!!!!」」」」

太陽の光に照らされて、キラキラしている海を見ていると一気に非日常が訪れたような気分になる。
今日はきっと最高の1日になる。そう、誰しもが思っていた。

■束の間の非日常と、仲間と、遠雷

「やーーーー!!よく来たね!菫ちゃんから聞いているよ!予約ありがとう!」

目的地を見つけると、私たちは近くに車を停めた。朱華と菜の花ちゃんは、2人してサングラスをして、外で誘導してくれたが、それがどうにもスパイとか殺し屋にみえて大爆笑してしまった……!!!

お店につくと、長身の男性が笑顔で出迎えてくれた。
菫さんの話だと、店長の藤(ふじ)さんは、中、高校の同級生と聞いている。朗らかな笑顔が飲食店に向いてそうだ。

「こんにちは。…えっと、藤さんですよね?天音です。菫さんには、お世話になってます!」
「わーーー、素敵なレストランカフェ!!」
後ろから菜の花ちゃんが歓声をあげた。思わず店内の写真を撮りたくなる、ブルーを基調とした店内は、まさに海辺のレストランだ。

「海の見える席取っておいたからね。ゆっくりしていって!」
そういうと藤店長の代わりに、女性スタッフがメニューを持ってきてくれた。
ハンバーガーやロコモコ、クラフトビール……そしてデザートはパンケーキにかき氷!!
何とも心奪われるラインナップに目移りした。

「あたし、1杯飲んでいいかなぁ?」
「私も飲みたいっ!!久しぶりのお休みだもん!!」
そう言って、本日の運転手の柳くんを3人で見る。

「、、、、ドーゾ。そのつもりで今日は運転してるから」
柳くんの一言に喜んだ。申し訳ないけど、このメンツでのお出かけは本当に久しぶりで、私もお酒を飲むのを楽しみにしていた。
何と言っても日中から飲めるって貴重すぎる……!嬉しいっ。

柳くんは仕事柄、いつも飲む仕事なので、「休肝日だと思えばいいかな。」と言ってくれた。
ありがたいなぁ~~!
クラフトビールと、辛口のジンジャーエールが来ると早速、乾杯だ。

「「「「いえーーーーい!!乾杯~~~♪♪」」」」

「。。。。。うまーーーーー、、、、」
「昼間から飲めるなんて、、、嬉しい~~~」
「ね!!!……でも、このメンツで集まれたのが1番嬉しいよ!」

一言そういうと、4人で顔を見合わせた。
そうだ、私はこのメンツで一緒に出掛けたかったんだと思った。
きっと、このメンツ以外の人と行ってもこの感情は味わえない。
私は、この4人でこれた喜びをかみしめた。

「やーーーーー!!!!どう?お味は?」
藤店長がしばらくすると声をかけてきてくれた。私はちょうどハンバーガーをほおばっている途中だった。

「美味しいです♪♪ロケーションも最高だし!」
「この夏の時期にきてよかったな。」
「藤さんは、菫さんとは同級生なんですか?」
「うん。俺と菫ちゃんは、中、高の同級生で。菫ちゃん、あの頃から面倒見良くて、俺、いつも迷惑かけてたな~…」

何となく想像がつく。菫さんは、誰に対しても面倒見がいい。私もいつもそこに救われている。

「……天音ちゃん、菫ちゃんは元気かな?」
突然、私に話しかけられる。
「え?はい。煙草辞めたほうがいいとは思いますが。」
「菫ちゃん、、、いっつも、俺の電話にでなくてっ。。。。」
「??……え?」
急に悲しそうに話す藤さんに、4人が注目する。

「俺の電話はいっつも出ないし、飲みに誘ってもそっけないしっ……!!!!久しぶりにライン来たと思ったら、『店の子が行くから頼む』って……!!!俺と会うときはいっつもタイミング悪いのにっ…」

めそめそし始める藤さんをなだめる。

どうやら藤さんは、菫さんに会いたかったようだ。店長の事だから悪気ない態度で「私はいけないけど、天音が行くしいいだろ。」とか思っているに違いない。藤さんの想いはむなしく、菫さんにかわされてしまっているみたいで、こちらが悪い気がしてきた。

「藤さんっ!!次は、菫さん連れてきますから~~!!!」

東京にいる菫さんに、帰ったら文句言ってやる!

そんな楽しいひと時とは裏腹に。
遠くから聞こえる遠雷に、この時は、全員まだ気づいてはいなかった。








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