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今さら聞けないペルソナの活用術 ~効果的なペルソナの作り方、使い方~のイベントからUXデザイナーの私が学んだこと

事業やサービス作りにあたって、顧客体験の検討を行うときなどに「ペルソナ」を作ることが当たり前のようになってきています。少し検索をするだけで、数多くのペルソナシートのテンプレートが検索結果に表示されるほどには「ペルソナ」は市民権を得ていると言えるでしょう。
しかし、いざ「ペルソナ」を作ったもののどう活用していけば事業に役立てることができるのか、そもそも本当に事業に活きる「ペルソナ」はどのように作れば良いのか、実際作ってみたことで更に悩む方も多いと思います。
グッドパッチでは、そんなお悩みを抱える方を対象として、様々なサービスを世の中に送り出し続けているLINEヤフー、medibaのUXデザイナーの方と一緒に「今さら聞けないペルソナの活用術 ~効果的なペルソナの作り方、使い方~」と題したオフラインセミナーを開催し、グッドパッチからはディレクターの秋野が登壇しました。

セミナー内では『ペルソナを"作る"ときのヒント』『ペルソナを"共有・理解する"時のヒント』『ペルソナを活用したプロセス3選と好事例』という3つのテーマでLT形式での発表が行われました。
この記事では、それらの発表を一貫して聞くことができたからこそ学ぶことができたことを3つお伝えします。

各発表の詳細な内容についてはLINEヤフーDesign 公式noteのこちらの記事をご参照ください。
今さら聞けないペルソナの作り方〜効果的なペルソナの作り方、使い方〜 LINEヤフー・mediba・Goodpatch イベントレポート


1. ペルソナの作成や共有のキモは"次を見据えること"と"本来の役割を果たすこと"


【イベントを通じて学んだこと①】

ペルソナを作成・共有する時には、「次」を見据えながらも、ペルソナの持つ役割を果たすことができるペルソナを作成することが重要であるということです。
この「次」には2つの観点があります。

1.作成したペルソナを活用するステップ
作成・共有したペルソナを「ネクストステップでどのように活用するか」
2.リリース後のサービスグロースのステップ
作成・共有したペルソナを「サービスのグロースの際にどのように活用するか」

【イベントで伺ったことのまとめ】
「1.作成したペルソナを活用するステップ」という観点について、
ペルソナの検討にあたっては、実用的でないペルソナが出来上がってしまうケースがしばしば発生します。
実用的でないペルソナの例としては、多くのデモグラフィック情報が詰められているものの、そのユーザーの価値観や抱える課題が見えないものが挙げられます。
そこで、ペルソナ作成に向けた調査実施の際に「ペルソナを作成する」を目的にせず、ペルソナを作成した後にどのように活用をするかを言語化して調査目的に設定し、関係者と認識を合わせておくことでその懸念を払拭することができます。
ペルソナの活用方法の具体例としては「今のサービスを改善する」「新しいサービスを検討する」などが挙げられます。また、ペルソナを共有する際も、そのペルソナを活用した次の具体的なステップを合わせて伝え、その先の取り組みを想起させることで、関係者がペルソナを自分事として捉えられるようになるという状況を生み出すことができます。

次に、「2.リリース後のサービスグロースのステップ」という観点についてです。
サービスリリース当初は、ペルソナに該当するようなユーザーに深く刺されば良いものの、その後どのようにグロースさせていくかという大きな課題が発生します。
サービス開発当初から「サービスを広めてくれるようなペルソナ」をプライマリーペルソナとして設定することで、単にペルソナであるユーザーの課題解決手段を検討するだけでなく、使ったユーザーが自らそのサービスを周りに広めたくなるような体験を設計することができます。

このような形で、「次」のことを念頭に置きつつも、「ユーザーに一貫したメッセージや価値が伝わるような製品・サービス提供に繋げる」というペルソナがもつ本来の役割を忘れてはいけません。その役割を全うするためにも、調査結果を分析し、一定にまとまった価値観を持ったユーザー像を作り上げていくこともまた重要です。
調査結果を「百徳ナイフ」のように1人のペルソナに詰め込むと「誰にでも刺さる」ようなサービスができるかもしれませんが、裏返すと誰にも深く刺さらず、次第に利用されなくなるサービスになりかねないからです。
そのためには、調査の被験者を様々な軸で分類、複数の軸での共通点を見出し統合していくという作業を通じてペルソナを作成することが良いと考えられます。
なお、ペルソナの分析を行う際に検討した様々な軸は、サービス開発の後続で行う様々なテストのリクルート条件としての活用も見込まれることから、調査結果を綿密に分析すること自体もネクストステップへ繋げることができます。

2. 調査を行うことで、ペルソナを作るだけでなく、プロジェクト全員で熱量高くユーザーに向き合うきっかけを作ることができる

【イベントを通じて学んだこと②】
イベントを通じて学んだことの2つ目は、調査を通じてペルソナの作成を行えるだけでなく、チーム全員で熱量高くユーザーに向き合うきっかけを作ることができるようになるということです。
ペルソナの作成・共有にあたっては、チーム全体がペルソナに「共感できた」状態を作ることが重要ですが、その状態を作るためにチーム全体でユーザーについて熱量が高いディスカッションが必要となります。
そのような状態を作り上げるために、ユーザー調査を呼び水とすることができます。

【イベントで伺ったことのまとめ】
インタビューを実施にあたって、インタビュアー以外のチームメンバーも見学という形でその場に巻き込んだり、インタビュー直後に振り返りを全員で行うことで巻き込む方法などが挙げられます。生のユーザーの声に実際に触れることで、よりチームの熱量が高まります。また、その場に参加することが難しい方にも、インタビューの動画などの生データを共有することが有効です。
そのようなプロセスを通じてユーザーに熱量高く向き合い、深く共感することができるペルソナを作成できると、構造化シナリオ等の後続で作成する成果物にも納得感が増します。
サービス開発のプロジェクトにおいては、調査以外のタスクで時間がなくなり、調査まで手を回すことができないという状況がしばしば発生します。
この場合、時間がないことではなく、調査の優先度を上げられていないという点に問題があります。調査を重要なタスクとして位置付けることができるようになると、どんなに短いサイクルで開発を回すようなプロジェクトであったとしても調査に時間を割くことができるようになります。
また、「調査」というと、調査会社のパネルを使った大掛かりな調査や、複数のユーザーに時間をかけてインタビューを一気に実施するような形が想起されるかと思いますが、小さな調査を重ねることでより良いサービス作りや、それに向かうチーム作りを行うことができるきっかけを作ることができるため、どんなに少ない時間でも調査を行う時間を生み出すことが重要です。

3. チーム全体がペルソナに「共感できた」状態を作ることが重要

【イベントを通じて学んだこと③】
チーム全体がペルソナに「共感できた」状態を作り上げることが重要であるということです。
サービス検討におけるネクストステップや、グロースの観点からペルソナを活用していくことも勿論重要ですが、サービス検討に関わる人たちが同じ方向を見て会話できるようになるということもペルソナが果たす重要な役割の1つです。

【イベントで伺ったことのまとめ】
人は自分の見えている範囲で思考してしまうという癖がありますが、ペルソナを介在させることで、チームの全員が自らの思考の範囲から脱することを期待できます。
チームの全員がペルソナを主語にして会話し、ペルソナシートに記載がないような内容にまで共感しあえるレベルに達すること…具体的には、「このペルソナならこういうことをしていそう」「わかる」という会話を相互で行えるような状態に達することが理想的です。
チーム全員でペルソナに共感しあえる状況が作り出せると、その後、サービスの細かな機能等について優先順位をつける、要求策定をするといった際のコミュニケーションがスムーズになり、一貫性のあるサービスを作り出すことができるようになります。
ペルソナの作成にあたっては、チーム全員で共感しあえるペルソナを作るという観点から考えると、調査した被験者のデモグラフィック情報や、サービス検討にあたって都合の良い情報を何となくまとめたペルソナは、その役割を果たすことが難しいと言えます。
そのため、そのペルソナが持つ価値観を浮き彫ることができるような項目をペルソナシート上へ設定し、その人格を表現していくことが必要になります。
そのような観点からペルソナを作成すると同時に、サービス検討に関わる様々な方に共有して理解してもらう必要があります。チーム内のメンバーは勿論、チーム外の立場が異なる方に説明を行う場もビジネスシーンでは想定されます。
とはいえ、サービス検討への関わる立場や割ける時間が変わってくる様々な関係者へ適切な形でペルソナを共有することの難易度は高いです。
例えば、ペルソナ作成の調査に参加していない方へ共有を行う際は、調査結果の分析・検討のプロセスを含めた共有やデータの提示を行うことが、より納得感を持ってペルソナを受け入れてもらうことへ繋がります。
また、ペルソナシートの情報が多くなりがちな点も共有の際に問題となりますが、必要な情報を図示したり、キーポイントとして共有すべき事項に重点を置いた共有を行うことで解決することができます。

まとめ

イベント全体を通し、事業に活きるようなペルソナを作るにあたっては、「常にチーム全体がペルソナに共感できている状態を作り出すこと」をゴールとして念頭に置き続けることや、「次のステップでどう活かすかを考え、ペルソナを作成・共有すること」が重要であると学びました。
そのため、成果物であるペルソナシートの精度の高さだけではなく、作成を行うためのプロセスや、そのプロセスへの関係者の巻き込みも重要であることがわかりました。
実際に、本イベントの直後にユーザーインタビューを行う機会があったので、インタビュー直後にクライアントを含めた振り返りを行うプロセスを追加してみました。主観にはなりますが、よりチーム全体でユーザーに対する解像度をあげ、納得感のあるアウトプットへ繋げることができたように感じています。
事業に関わるメンバー全員を巻き込みながら、よりユーザー中心に事業を開発・グロースさせていきたい方はぜひGoodpatchへご相談ください!


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