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対応スピードが変態レベルのマルセロ・ビエルサ[PL33節LEEVS.MUNちょっとしたレビュー]

"EARN IT ON THE PITCH. FOOTBALL IS FOR THE FANS"

「ピッチ上でそれ(CL出場権)を獲得しろ。フットボールはファンのためのものだ。」

 今季のリーズはリーズファンのみならず、多くのサッカーファンを魅了してきました。そんな彼らの主張はまさにその通りであり、彼らのパフォーマンスがこの主張を説得力のあるものにしています。前々節はシティに数的不利の状況から勝利、リヴァプール相手に終了間際の得点で勝ち点1をもぎ取り、今節のユナイテッド戦では互角の戦いを演じました。今回はそんなユナイテッド戦を簡単に振り返りながら、個人的に衝撃を与えた「コッホ投入事件」について私見を述べたいと思います。

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(WhoScored.com より転載)

マンツーマン守備を剥がすためには…

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 リーズの非保持時の振る舞いはいつも通り「後方の数的優位を確保したマンツーマン守備」。以上の図のように、ユナイテッドの4-2-3-1とリーズの4-1-4-1はフォーメーションの嚙み合わせがぴったり合うので、そのまま嚙み合わせ通りにマンマーク相手がそれぞれに与えられ、サイドの選手はボールが中央にあれば中に絞り、サイドにボールが出るとボールサイドにスライドするというゾーン的要素も含んでいるのが「現代型マンツーマン」でモウリーニョもそれに近いプランを敷くときはありますよね(ただ、リーズの方が圧倒的にマークの受け渡しが少なく、「人への基準度」が高いといえます)。そんな守備に対し、ユナイテッドは嚙み合わせの合致やジェームズの起用を生かしたプレッシングはもちろん、ボール保持においても対リーズプランを見せます。

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 まず参考までに前回記事からユナイテッドのボール保持における1つの約束事になっているマクトミネイが下りてダイヤ型の3-4-3を形成する配置転換を見て頂きたいと思います。この試合では、リーズ対策としてこの動きを行いませんでした。(時に応じて、フレッジがCBの間に落ちる動き

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 マクトミネイが下りる動きをしない代わりに、フレッジと横並び気味のポジショニングを基本としながら頻繁に列を上げて両CBに運ぶドリブルをする「時間」を供給。そして両CBは意識的に運ぶドリブルをしたりして、マンマークをずらそうとする意図を見せました。そのマクトミネイの動きに付随して、ブルーノやグリーンウッドがその空けたスペースに入ってきたり、今度はその前線の選手の列を下げる動きを利用してラッシュフォードが大外から飛び出してチャンスをつくってましたね(下記動画の0:21〜のシーンや前半25分など)。

(DAZN Japan より転載)

 前回対戦同様、以上のような「対リーズシフト」にマイナーチェンジしたユナイテッドのボール保持は強烈なプレッシングとともにリーズを自陣に押し込み、(盤面的な)ワンサイドゲームを演出する要因となりました。今回のユナイテッドファンのエゴ丸出しコーナーはここまでです。ユナイテッドは試合を通じて良い攻めをしたかもしれませんが、リーズはクリーンシートで終えました。それはリーズの選手たちの柔軟さとビエルサの対応力の結果ではないかと思います。

リーズの守備の柔軟さと「コッホ事件」

 リーズのマンツーマン守備が相手を苦しめるのはただマンツーマンというだけではないのがミソです。上述したようなゾーン的な要素に加え、各々の選手が状況に応じてマークを受け渡したりしてより効率的に相手の前進を防ぐことが出来るのがこのチームの強さです。この試合も例に漏れず、相手GKがボールを持った時に片方のWGが相手CBの一人を見て同数気味のプレッシングを行ったり、ロバーツがマーカーのマクトミネイのパスコースを切りながボールホルダーにプレッシングを行い、前進されかけたときにはバンフォードがすかさず列を下げて徹底的についていくというように、マークの受け渡しは決して多くないですが、そのときにはスムーズに隙なく行われますし、カバーシャドーといわれるような「現代型の守備」を状況に応じて選手が行えるという強さがあります。これはやはり、確固としたプレー原則が確立されているからこそできることであり、その枠の中で状況に応じた選手の判断が行われているということがいえます。

 そして本日の本題である「コッホ事件」です。これは76'のユナイテッドのポグバ投入から数秒後にコッホが投入され、リーズがボール保持時4-2-3-1、ボール非保持時5-4-1(?)にシフトしたことを勝手に名付けさせていただいた事件です。一応、仮定の話でコッホ投入がポグバ対策だったらすごいよねってツイートをしたのですが、見返してみると基本的にはコッホはポグバを見るようになっていて、どう考えてもポグバ対策だと思います。

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 このようにリーズは5-4-1気味のフォーメーションにシフトし、1、2列目にはそれぞれのタスクを与え、3列目(DFライン)に関してはコッホには明確にポグバというマーカーを持たせ、そのほかは相手の流動的な動きに対応する意味も含めて「誰」という基準は設けずにその状況に応じてマーカーを割り振っていた感がありました。ユナイテッドの配置に合わせて基本的には上の図のイメージでブルーノには両CB、グリーンウッドにはエイリング、ラッシュフォードにはアリオスキという場面が多かったですが、後方の5対4という数的優位は保ったまま、各々が一人の「人」を強くみて、余った一人がカバーというかたちをとっていたように見えました。こんな高等なことができる選手と監督を備えているのはリーズただ1チームだと思います。そんな彼らが来季どのような結果を納めるのか。個人的には国内カップ戦での躍進を期待してますし、ノリッジのダニ・ファルケとのとことん打ち合うぜみたいな試合は楽しみです。

 そしてスールシャールの采配に賛否の声がまたしても上がってますが、私としてはジェームズスタメンは納得、ただカバーニやファンデベークはもう少し見たかったという意見です。もちろん外野からの戯言なので何の説得力もありませんが、スールシャールは同点時の動きが少し遅いようにも感じます。今節と同様、それは恐らく失点回避(今節ジェームズの交代を引っ張ったこともこれだと思われる)とスタメンへの信頼(例:ブルーノ)が理由だと思いますが、ファンデベークにはもうちょっとチャンスを与えてほしいですかね。何度も言うようですが、こんな意見はただのサッカーオタクのたられば結果論なので全くあてにならないものなので、お気になさらずってことで。

 今回は書きたいことがたくさんあったので、ちょっと長くなってしまいました。すみません。これからもこんな感じでマイペースに書きたいことを書きたい分だけ書きたいと思いますので、よかったらこれからもよろしくお願いいたします。では。

タイトル画像の引用元:ma_thi_eu "Marcelo Bielsa lors de Olympique de Marseille VS Evian Thonon Gaillard

なおこの画像はCC BY-SA 2.0の下で利用されています。

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