家族中心サービスとは?定義と目的、そして効果について


この記事でも書かれてあるように、6つのF-wordsにも含まれるFamily(家族)。

このFamily(家族)について掘り下げていくならば、この家族中心サービスというものを理解していくと良いかもしれません。


家族中心サービスとは、特別なニーズをもつ子どもたちにサービスを提供するアプローチのこと。このアプローチの名前で示唆されるように、子どもに焦点を当てた伝統的なアプローチと異なり、家族はサービスの中心にあるという考え方。

 家族中心サービスが効果的であるためには、家族中心サービスが何を意味するのか、家族、サービス提供者、事業所が理解することが重要となる。

いやいや、これまでも家族を大切にし、家族を中心にサービスを行ってきてるよ!と思ってる方もいらっしゃると思いますが、改めて何でそれが大切なのか、どのような効果があるのかを理解し、どのようにパートナーシップを発揮していくのかを教えてくれる機会になります。

また新人教育でもOFF-JTの場で伝えれる資料ですのでぜひ一読されてください。



〜家族中心サービスの定義〜

・家族中心サービスは、特別なニーズを持つ子供やその家族のための一連の価値観やスタンス、サービスへのアプローチで構成されます。
・家族中心サービスは、各家族の個別性が存在することを忘れてはいけません。家族は子供の生活の一部分であり、子供の能力やサービスの必要性に関する専門家です。
・家族はサービス提供者と協力して、情報に基づいてサービスの決定を行い、子供や家族がサービスを受けることを支援していきます。
・そして、家族中心サービスでは、家族の全ての強みとニーズが考慮されます。

家族中心サービスを行う上で、家族の思いや不安などを共有することができ、それらを解決していく上でその”家族の持つパワー”を引き出していけるかが大切になってくると思います。

適切な意思決定が家族ができるように、サービス提供者は情報やスキルを提供し、事業者はその環境やリソースを準備する必要があります。


〜家族中心サービスの目的〜

・特別なニーズをもつ子どもをもつ家族と協力して行う目的は、全員の生活の質を高めることにあります。したがって、結果は子供の変化だけでなく家族の生活がどのように変化したかが重要になります。・実際、多くの研究のなかで焦点に当てられているのは、サービスの満足度、ストレスと心配の軽減などに当てられています。

6つの”F-words"でも述べられている通り、障害は家族の生活にも影響を与えます。よく「障害は社会にある」といわれますが、家族も同様に社会参加していく上で様々な障害が生まれてきます(就労できないなど)。

そうした中で、子どもの変化だけを追うのではなく、もう一つ俯瞰的に見て家族の生活を考慮したサービスの提供が必要だと思われます。

提供されるサービスへの満足度や、現状困っている事、将来的な不安、など様々なことにおいて「家族と繋がる」ことは重要です。

そのためには、家族とコミュニケーションをとり信頼関係を築く中で、様々な思いを聞き出す必要があり、そうした場の提供も必要となるでしょう。


〜家族中心サービスの効果〜

家族中心サービスの効果では、子ども・家族・サービスの提供システムに関する効果が研究で示されています。

参考文献などはCanchildのfamily centered servicesにあるFCSシートをご参照ください。

<子どもにおける効果>

1.発達促進やスキルの上達・個別化された家族中心の介入は、目標を達成し、機能的スキルを身につけ、発達の促進を促した。・両親に一般的かつ特的の情報を提供し、両親のスキルを構築し、サービスを個別化することに重点を置くことで、スキルの上達や運動発達の改善が示された。・両親が目標を特定し、家族のニーズと優先順位に合わせて治療を行い、教育的要素をもつことで個別化された運動目標の変化が見られた。
2.心理的調整・家族全員とそのニーズに焦点をあてた包括的なサービスプログラムに参加した子どもたちは、より良い心理的調整を示した。この改善は、4〜5年後のフォローアップ研究でも明らかになった。家族は、子供のケアを管理する責任を負うこと、およびサービス提供者とパートナーシップによって、情報に基づく、意思決定を行うことにより、より積極的に関与することが推奨された。プログラムは、サービス、保健教育、および支援の調整を提供した。・専門看護介入の研究では、子供の機能、役割、自己意識の測定値が高く、より良い心理調整を示している。この介入は、こどもおよび家族の全体的な懸念に焦点を当て、支援と個別化されたサービスを提供した。看護師は、家族のニーズを特定し、強みを発揮し、必要なサービスを提供するために家族と協力した。


<親・家族における効果>

1.発達に関する知識の向上・保護者は特定の教育プログラムを通して、こどもの発達についての知識を得ていることが判明した。
2.ホームトレーニングへの参加の増加・家族は家庭で行われるホームトレーニングへの参加を増やし、1年間継続して行われていた。
3.心理的幸福・家族中心の方法でサービスが提供されている場合、両親、主に母親は不安の軽減、抑うつの軽減、よりよい幸福感を経験している。・慢性疾患をもつこどもの母親は、同じ条件をもつ高齢の子どもの母親と結びついたとき、不安のレベルが低下していた。このコミュニティベースの家族支援プログラムは、情緒的、感情的、肯定的な支援を提供した。・母親は、サービス提供者との関係が肯定的で家族主義的であるとき、より高いレベルの個人および家族の幸福感を感じた。・こどもの障害や将来についての情報を高いレベルで受け取った母親は、心理的苦痛を経験しなかった。
4.親としての有能感・ケア提供者としての有能感は、サービス提供者の親密さとコミュニケーションに関連していた。
5.強化された自己効力感とコントロール感覚・サービス提供者の行動が肯定的で生産的であり、能力を生み出し、参加し受け入れられているとき、親は高いコントロール感を感じた。


<サービスシステムとしての効果>

1.ケアに対する満足度・両親は、情報が提供されたやり方とサービス提供者の対人的な資質に満足していると考えていた。・親の満足度評価は、協力的であり、特に支援的な理解と情報共有のサービス提供者の行動に非常に関連していた。・サービス提供者に対する満足度は家族中心アプローチへの変更によって強化された。両親は、意思決定にもっと関わる気持ち、意見が理解されたこと、調整されたサービスを受けることで変化した。


上記からわかるように、子どもそして家族の心理的なQOLの向上も見られており、家族中心サービスの必要性の高さが伺えると思います。

今後更に家族中心サービスによる効果について研究がされていくと思いますが、サービス提供者やその事業所は家族中心サービスを行うことによる家族支援は重要となってくるでしょう。


~家族中心サービスの前提、原則および要素
ここでは、家族中心サービスにおける3つの前提とそれぞれの原則、そして家族のもつ権利や期待について、それに対応するためのサービス提供者の行動をまとめています。


<第1前提(基本仮定)>・親は自分の子供を最もよく知り、子供のために最高のものを求めている。

<原則の指針:(すべきことの声明)>
・各家族は、自分の子供の意思決定に関与するレベルを決定する機会を得なければならない。
・親は子どもの介護に最終的な責任を負うべきである。

<主要な要素(権利と責任)>
~家族の期待と権利~
・究極の意思決定者になる。
・独自のリソースを活用する。
・自分のニーズを最も効果的に満たすケアについての決定を可能にする情報を入手する。
・介入の優先順位を定義する。
・関与のレベルとタイプ、必要なサポートのレベルを選択
・最低限の手間とタイムリーな方法でサービスを受けることができる。
・子供や家族に関する情報にアクセスする

~サービス提供者の行動~
・他のチームメンバーと協力して親の意思決定を促す。
・家族が自らの強みを明らかにし、自分の力を養う。
・知っていることを知らせ、答えて、助言する(情報に基づく選択を促すため)。
・両親や子どもたちと協力して、彼ら自身の視点から自分たちのニーズを特定し、優先順位を付ける手助けをする
・すべてのレベルで両親と協働する(個々の子どもの介助、プログラムの開発、実施、評価、指針形成)。

<第2前提(基本仮定)>・家族は様々であり個性的である。

<原則の指針:(すべきことの声明)>
・家族は、(個人として)尊重して扱われるべき。

<主要な要素(権利と責任)>
~家族の期待と権利~
・ケア提供プロセスを通じて、その尊厳と完全性を維持する。
・家族が行う決定で支持される。
・家族の意見を求めて聞いてもらう。
・個別化されたサービスを受ける。

~サービス提供者の行動~
・価値観、願い事、優先事項を尊重。
・家族が行った決定を受け入れ、支持する。
・聴く。
・柔軟で個別化されたサービスを提供する(そして家族の変化するニーズに対応する)。
・家族間の多様性(知識、民族、文化、社会経済)について知識を持ち受け入れる。
・親を信じる。
・両親が理解できる言語でコミュニケーションする。

<第3前提(基本仮定)>・最適な子供の機能は、家族の支援や社会環境の中で生じる。・子供は家族のストレスや対処の影響を受ける。

<原則の指針:(すべきことの声明)>
・すべての家族のニーズを考慮する必要がある。
・すべての家族の関与が支持され、奨励されるべき。

<主要な要素(権利と責任)>
~家族の期待と権利~
・家族のニーズと懸念を考慮する。
・家族が選ぶ参加レベルで歓迎され、サポートされる。

~サービス提供者の行動~
・すべての家族の心理社会的ニーズを考慮し、それに敏感になる。
・家族全員の参加を促す環境を提供する
・何が正しいのか、何が間違っているのかを判断することなく、家族の対応スタイルを尊重する
・家族間のサポートと自然なコミュニティサポートとリソースの使用を奨励する
・家族と子供の強みを認識して構築する

家族を尊重し、家族が最も納得のいくサービス、ケアの選択ができる意思決定を促すためにサービス提供者は行動していく必要があります。

家族の個性も様々であり、なかには困った家族だな~と思うこともあるかもしれません。しかし、なぜそのような要望を伝えるのか、伝えるようになったのかという背景が必ずあります。

事業所の方針や状況により、出来ないこともあると思います。しかし、出来ないことと、尊重・傾聴しないことは別です。

家族の核(コア)となる悩みなどを感じとり、その解決策を見つけるために事業所としてどこまでできるのかを家族と共に話し合って決めていくことが重要だと思います。

根本となる原因や悩みが分かれば、ご家族が希望する方法とは別の方法でクリアできることがあるかもしれません。もしくは、他のサービスなども検討したりすることで役割を分担し解決する事もあります。

そのためには、家族は様々でそれぞれの背景があり、その中に悩みがあることを忘れないでほしいと思います。

そして、最終意思決定者が家族であるからこそ、納得解をだしていくことがサービス提供者の仕事と思われます。


次回は、具体的にどのようなことをしていくのをまとめていけたらと思います。

目を通して頂きありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?