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ざくろ ※詩の朗読台本

お腹と背中がくっつくくらいの空腹の中
世間の人は当たり前のように赤い実を食べていると聞く。

美味しそうだな、と思う自分は罪深い人間かもしれないと思った。
罰罰罰をしたあの男のように。

自分は人間で女の子であり、
かわいいものが好きで、スカートが好きだ。
でも、周りからは私は捕食される女と思われていた事があの頃怖くなっていた。

罰罰罰は苦しかった。狂おしかった。
何よりも耐え難く、搾取されることも、期待されることも。
そして、この空腹に似た欲望を抑えることも。
ぱっくりと割れた身から大粒のルビーをそっと撫でてみても、満たされることはなかった。

女がこの空腹を男に漏らしたら捕食される。
女がこの空腹を女に漏らしたら仲間はずれにされる。
そんな恐怖に似た、そして自己嫌悪は

心の底から触れたいと思った人に出会えた時、
私は少女から少し大人の女性になれた。
満たされる心になった時、
私は私の空腹を許す事が出来たのだ。

[完]

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