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こんな夢を見た

 こんな夢を見た。
 気が付くと私は一人でぽつんと砂漠にいた。周りには何もなく、見渡しても地平線が見えるばかりであった。薄暗かったが、日は落ちていなかった。
 私は当てもなく歩いた。しばらくすると、いつの間にか付いて来ていたお天道様が話しかけてきた。
「妻子は有りますか。」
「ええ、有りますとも。」と私は答えて、どうしてそのようなことを聞くのかなと思ったが、深くは考えなかった。まだお天道様は空から付いて来ていたが、私は気にすることなく歩き続けた。既に結構な距離を歩いて来ていたが、景色は一向に変化しなかった。見えるものといえば、やはり地平線、それとお天道様のみだった。
 しばらくすると、お天道様がこう尋ねてきた。
「商売は上手くいっていますか。」
「ぼちぼちですね。」と私は苦笑しながら答えた。それから、大丈夫ですよ、順調です、と付け加えた。
「余生はどのように過ごすつもりですか。」とお天道様が聞いてきた。
「どうするものかまだ決め兼ねますな。」と私は答えた。今までにそのようなことを考えたことのない私は、そう伝えるしかなかった。
 随分と歩いてきたので、私は疲れて立ち止まった。そして、遠くを、目を凝らしてみてみたが、案の定地平線しか見えなかった。予期していたが、こう疲れるまで歩いてきたので、私は一種の失望を覚えた。すると、お天道様がこう言った。
「これから何処へ。」
私はその質問に答えることが出来なくて、辺りには沈黙が漂った。私は何か言おうと天を仰ぎ見たが、そこにはお天道様はいなかった。もうそれは何時もの太陽だった。

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