宮本 まりこ

喜びも痛みも、抱きしめながら。感情の紡ぎ方と、物語の関係について考えるのが好き。/ 読書 / 映画 / 一人旅 /ときどきアコギ / コルクラボ 5期生

腕時計 と 愛の記憶

腕時計がゆるくなった
ベルトの金具をひとつ分短くしようか悩む
すこし、痩せた

時計のベルトの余分をつまみながら
頭に浮かぶのはおばあちゃんの笑顔
あれはちょうど、あの子が痩せてるとか太ってるとか
可愛いとか可愛くないとか
人気者だとかそうじゃないとか
そういうことが気になりだした頃だった

わたしは昔から肩凝りがひどくて
おばあちゃんはわたしの肩をよく揉んでくれた
書き間違いではない

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「好き」だと声にだすことで、「好き」が深まる

好きなもの、好きなこと、好きなひと。
「好き」は私のまわりに溢れている。

だけど私は、「好き」だと言うことがあまり得意ではなかった。正直に言えば今でも得意ではないと思う。
「好き」って、すごく繊細だ。
言葉を発するときはいつだってそうだけれど、それは「私が何者であるか」を示すものでもある。「好き」なんて感情は、そのもっとも柔らかい部分の近くにある。
だから私はすこし恐れている。
「私が何者である

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世界が離れていく夜に

それは、あるとき突然に、ゆるやかに。
予兆はあったかもしれない、けれどそんなものは知らないの。

自分を世界の中心だと思ってはいけないと、こどもの頃だれかが教えてくれた。
それでも世界は、わたしの目をとおしてしか見ることができなかったし
わたしの耳でしか聴くことができなかったでしょう。
わたしの隣でひとは笑ったし
わたしに聴こえてくるのが世界だったもの。

あるとき突然ふっと、胸のおくのほうにあっ

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おおぜいのための物語と、ひとりだけのための物語 〜『モモ』を読んで

モモとジジの関係の美しさ。
それが、おそよ15年ぶりに読んだ『モモ』に関するいちばんの感動だった。
『モモ』。言わずと知れたミヒャエル・エンデの名作。時間どろぼうに奪われた時間を、モモという少女が取り戻す物語だ。

10年以上前に読んだ本を再読するのはすごく面白い。
小学生だったわたしが、『モモ』を読んで何を思ったのかは、正直あまり覚えていないけれど、いくつか、ああそうだった、このシーンが好きだっ

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「身体」が実感すること 〜「知性は死なない」を読んで〜

ときどき、心を軽くしてくれることばに出会う。
それはきっと、ふとした会話の中で、なんとはなしに読んだ小説の中で。

例えば、今ではわたしの大のお気に入りの1冊となった、平野啓一郎の「ある男」を読んだとき。

弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。

 宮崎に住む里枝には、二歳の次男を脳腫瘍で失って、
夫と別れた過去があった。長男を引き取って、十

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「救われる」の正体をしりたい

「救われた」という感覚に救われてきた。
それは、わたしにとって、とても大切な感覚。

「救われる」というからには、どこかに苦境があって、そこから引っ張りあげられる状態をイメージする。

わたしは苦しんでいたのだろうか。
苦しんでいたかもしれない。
生きることは、とてつもなく簡単で、すこし、難しい。

平和な時代に生まれたわたしが、ただ生き残るのは簡単だ。不慮のなにかに巻き込まれなければ生きていける

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