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第11話 月と人

今日の曲
「傘がない」井上陽水

 古代ギリシャのアルテミスやセレーネーは月の女神とされ、日本最古の物語と言われるかぐや姫も月へと帰っていく。満ち欠けで方位を知り、季節の移りを定め、狩猟や営みの知恵を与えてくれる月を人々は神様と崇めた。煌々と輝きながら、刻々と姿を変えて行く月の姿に昔の人はさぞ畏怖した事だろう。敏感にその顔色を伺いながら、時折襲いかかる飢饉や洪水、疫病や戦を月の豊かな表情と紐づけていく伝承はきっと世界の村々に存在したに違いない。先日、とある占いを友人から施された。私はその占いでは完全に無であって、物事を決める時の自己のこだわり要素がないらしく、人間の体と紐づけて表示される普通はカラフルであろう各性格パーツが真っ白だった。人口の1%にも満たないこの数奇な生まれの私はリフレクター(反射鏡とでも訳そうか)と呼ばれ正に月の周期で生きているらしい。そう私は月のように人々を反射させながら輝く月の女神なのである…!

 と言うのは冗談で、実に自己啓発を読みすぎた人みたいだけど、私は人工的なしがらみに縛られることを拒んで生きてきた割とロマンチックな女であるから、月を眺めたり、星を数えたりする事は得意な方である。地球から出てくるエネルギーに対しても敏感であるから植物や動物とはまずまず親しい仲である。調和とかバランスは、自由とか個性とか言う生き方に必ず付随しなくちゃいけないとも思う。

 職業柄、世界中わりとたくさんの国を巡ってきた。この20年余り、ロンドンを軸に生活している。日本にはコロナ以前は年に2回ほどライブや他の仕事を絡めて帰国していた。日本と言う国はとてもユニークだと言う事はたくさんの国を回って分かったことでもある。信心深い背景は残しつつも超ヒューマンと言えるくらい人が進化している気がする。それは街の風景と関わりが深いのではないか?

 日本の主要都市をライブ活動で回ったことがあったがコンクリートの威圧感で押しつぶされそうになった。私は地球のバランスが直に人間の頭や心に直結していることを知っているから、この体験に脅威を感じた。私が住んでいるロンドンは緑と人工のバランスはまあまずいい方だと思うけれど、その効力を毎日大きな公園へ散歩に出かることでマキシマイズしている。人工的な音や営みが聞こえない時間を作ることは大切だ。もっと言えば自然は私たちが聞こえない超高低周波を出していて、それに露出される事が大事なのだ。イギリスという国は昔からの街並みを残すと同時に、自然なランドスケープなども保存する傾向は強い。今環境問題にも関心が高い国だ。日本のように乱暴な都市開発があまり見られないので、慣れていない。急にそうゆう環境に投げ出されると体が悲鳴を上げ始める。空はすっかり灰色だし、周りを見ても灰色。尖った角や人工的な光に遮られて、緑や青い空や星が見つからない。私たちはコンシャスに自然との繋がりを隔てる壁を作りまくった。

 私たちは物質が豊かになったのに、心が貧しくなっている。日本人は幸福度が低いんだって!紛争地域に生まれたわけでもないし、貧しいカーストのボトムに生まれた訳でもない。衣食住がしっかりと整って平和な世界なのになぜ幸福度が低い?順風満帆な俳優がなぜ自殺する?子供達がなぜいじめで自殺する?心の問題はどこから来るのか…
 私は地球との繋がりが貧しくなったせいだと思う。人間は動物だということをあまりにも忘れている。ロボットみたいに生活しているから壊れるんじゃないの?バトルスター・ガラクティカというもろエンタメのサイファイのドラマを最近ボーと観ているけど、動物たちには私たち人間がそのドラマで出てくるAI破壊ロボットみたいに見えてるんじゃないかと思ったり。必要以上に攻撃的に自分たちの種以外の生物は絶滅へと追い込んでいく。今まさに私たちがなりふり構わず地球に向かってやっている事だ。その仕打ちが、心の病とか、現代病とか、スーパー豪雨とか台風とか山火事とかという形で帰ってきているんじゃないかしら。

 ぶっ飛んだ先輩が最近本を出した。「ビジネスパーソンの新兼業農家」というタイトルで、都会と田舎を行き来しながら兼業農家をビジネスとして成り立たせるという内容で、彼はそもそも農業を広げるために、各地のエキスパートとネットワークを広げてオンラインサロンを展開していた。本書ではこれからの農業を展開する若い世代が、従来の持続可能ではない農業をひっくり返すことを実践している農業家を紹介している。その中で従来の学歴社会や日本特有の同調圧力や生産性のみを求める資本主義への反発も言及されており、自分らしく居ながら自然と他者と生きる形を見出そうとしているバランスのいい思想を目の当たりにした。

 天体ではお月様を中心に木星と土星が20年に一度の大接近をしている。とても明るい星が木星で、その左にあるのが土星だそう。この接近を境に私たちは「風」の世界へと突入するようです。風は物質主義に反し、目に見えない事が大切になってくると言います。インターネットや情報などが人の価値観を変えるのでしょうか。先ほども友人と「バイアスのないニュースや情報はない」との結論に達しました。ありとあらゆる情報の裏の裏を考えると頭だけに留まらず心も疲弊してしまいます。
 という事で私はお月さんと星のよく見える、欲のない植物や動物と暮らせる田舎移住計画を立てています。


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