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麻利央書店

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高島麻利央による、短編小説~無料版~
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2017年9月の記事一覧

3つのムダ遣い

3つのムダ遣い

30歳半ばで独身の私は、
最近「緩んで来たなぁ」と思うものが3つある。

一つ目は『箍(たが)』

 箍は「外れる」印象が強いが、緩むこともある。
 意味は、【緊張がゆるんだり、年老いたりして、しっかりしたところがなくなる。締まりがなくなる】とある。【緊張がゆるんだり、年老いたりして、しっかりしたところがなくなる。締まりがなくなる】とある。そもそも「箍」とは桶や樽の枠組みを固定している輪のことであ

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先生バー③(終)

先生バー③(終)

先生バー①
先生バー②

 それはベストに着いた光るバッチだった。男は海外に長いこといたが、それが何かは知っていた。弁護士バッチだ。ただ、このバーテンダーは少しインチキくさいと感じていたので、本物かどうか疑ってもいた。

「あなたは弁護士なんですか」
「あ、気付きました?だけどこれはもう何の価値もありませんよ。過去の勲章とでも言いましょうか。私、本橋と言います」と胸元のバッチを見たあと、そう自己紹

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先生バー②

先生バー②

先生バー①

そして翌日。
男はこの状況をこう説明するだろう。
「気が付いたら、その地下のバーの扉の前に立っていた」と。
男がゆっくりと取っ手を掴み、押して開けようとした瞬間、帰り際の客が勢いよく扉を開けたものだから、彼はつんのめる格好で入店することとなった。

「いらっしゃいませ」

今日もくたびれたジャケットを着た男は扉の近くに座っていた。
店内を見回すと、客は誰もいない。先ほど出ていった客と

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決断

今日から9月がスタート。
9月1日は18歳以下の自殺が1年で多い日だそうだ。
自殺という決断ができるなら、
死ぬ覚悟を持てるなら、生きていける。
誰もが分かっていることだけど、その時はそう思えないから、
間違った決断をしてしまうのだろう。

私は自殺を考えるほど、強くなかった。
私は逃げようって思うタイプだった。
嫌なら、行かない、サボる、無視する、辞める。
このまま布団にめり込んで行って、深い深

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