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すっかり丸くなった晩年のマイケルが哀愁漂う『ゴッドファーザー<最終章>:マイケル・コルレオーネの最期』

【個人的な評価】

「午前十時の映画祭12」で面白かった順位:3/3
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★★☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【ジャンル】

犯罪映画
マフィア映画

【元になった出来事や原作・過去作など】

・小説
 マリオ・プーゾ『ゴッドファーザー』(1969)

【あらすじ】

1979年、ニューヨーク。老境にさしかかったマイケル(アル・パチーノ)は、自ら犯してきた罪に苦悩していた。

父の名を冠した「ヴィトー・コルレオーネ財団」の名の下、バチカンに莫大な寄付を行い、その見返りに叙勲され、資金運営担当の大司教とのコネクションを得たマイケル。彼は、長年にわたる非合法ビジネスから退き、バチカンとの関係深いヨーロッパの巨大投資会社の経営権を握るという、合法ビジネスへの路線変更を画策していたが―。

【感想】

「午前十時の映画祭12」にて。1990年のアメリカ映画。『ゴッドファーザー』シリーズの完結編ですね。前作から16年経っての公開なんですけど、先週『PART2』を観たばかりだったから、いきなりキャストが歳取っててちょっとびっくりしました(笑)若いながらも恐怖の象徴だったマイケルもすっかりおじさんです。逆に、これまで子役でしかなかったソフィア・コッポラが一気にレディになっているのは見どころですね。

<話が複雑化してきてとっつきにくさはある>

最初にネガティブなことを書いてしまいますが、前2作と比べるとちょっと理解しづらい話かもしれません。これまで通り、マフィア映画ではあるんですけど、さらにビジネス感が強くなっているんですよ。マイケルも違法行為から手を引き、合法ビジネスに舵を切る中で、バチカンの金融スキャンダルや政治などが複雑に絡んできます。その上、過去作同様登場人物も多くて。なので、話が頭にすんなり入って来るかと言うと、そこはややしんどいところです。

<実際の事件をそのまま取り入れている>

話は複雑なんですけど、この映画って実際に起こった事件をそのまま作品内に取り入れているらしいんですよ。例えば、1978年の教皇ヨハネ・パウロ1世の毒殺疑惑事件や、1982年のアンブロシアーノ銀行の頭取ロベルト・カルヴィ暗殺事件など。それらを踏まえて、バチカンとイタリア政財界、マフィアを巻き込んだ癒着や腐敗体質を批判しているので、その歴史を知っていればもう少し楽しめるかもしれません。僕は全然知らなかったんですけどね。ざっくり知りたい方はウィキペディアでいろいろリンクを辿れます。

<ラストの演出が美しい>

全体的に複雑な印象を受けますけど、ラストの演出はそれとは関係なしにものすごく強烈で、この映画の一番の見どころと言っても過言ではないと思いました。壮大なオペラの鑑賞中、その裏で着々と進むマイケルの暗殺計画。並行して、新しくゴッドファーザーを引き継いだヴィンセント(アンディ・ガルシア)による大司教たちの殺害。それがオペラのシーンとうまく組み合わさって、クロスカッティングしていく流れはとても美しかったです。これから現実に起こることを、オペラ内で同じようなシーンと重ねていくので、「ああ、このオペラと同じようなことが待ち受けているのか、、、?!」っていうスリルも味わえました。

<老いたマイケルに漂う哀愁>

マイケルの変化も印象的です。これまでの彼って、野心が強く、多くを語らないまでも非常に怖い人物として描かれていました。そんな彼も歳を取り、糖尿病を患い、自身が弱っていくこともあってか、今までのような怖さは薄まり、丸くなっています。過去に自分がしてきたことに対する後悔や苦悩にも焦点が当たっていたのは意外でしたね。

また、マイケルって平然と人を殺していくだけでなく、前作では実の兄でさえ亡き者にするほどの冷徹っぷりでした。それが、今作で愛する者を亡くしたときに大声で泣き叫ぶんですよ。そんなに人を想う気持ちがあるのなら、どうして今まで殺してきた人たちにその想いを分けてやれなかったんだろうって思いましたよ。これ、『ハンターハンター』のゴンのセリフの受け売りなんですけど(笑)でも、「彼も人の子なんだな」ってちょっと親近感が湧きました。

<そんなわけで>

前2作と比べると、話が複雑かつ尺も長いので、けっこう体力を使いますでも、オペラのシーンやマイケルの変化は見どころなので、前2作を観るなら完結編の本作もぜひ押さえておきたいところです。


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