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孤独でダークな『ロード・オブ・ザ・リング』だと思った『グリーン・ナイト』

【個人的な満足度】

2022年日本公開映画で面白かった順位:152/193
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:The Green Knight
  製作年:2021年
  製作国:アメリカ・カナダ・アイルランド合作
   配給:トランスフォーマー
 上映時間:130分
 ジャンル:ダーク・ファンタジー
元ネタなど:韻文『ガウェイン卿と緑の騎士』(14世紀頃)

【あらすじ】

アーサー王の甥であるサー・ガウェイン(デヴ・パテル)は、まだ正式な騎士ではなかった。彼には人々に語られる英雄譚もなく、ただ空虚で怠惰な日々を送っていた。

クリスマスの日。アーサー王の宮殿では、円卓の騎士たちが集う宴が開かれていた。その最中、まるで全身が草木に包まれたような異様な風貌の緑の騎士(ラルフ・アイネソン)が現れ、“クリスマスの遊び事”と称した、恐ろしい首切りゲームを提案する。その挑発に乗ったガウェインは、彼の首を一振りで斬り落とす。しかし、緑の騎士は転がる首を堂々と自身で拾い上げると、「1年後のクリスマスに私を捜し出し、ひざまずいて、私からの一撃を受けるのだ」と言い残し、馬で走り去るのだった。それは、ガウェインにとって、呪いと厳しい試練の始まりだった。

1年後、ガウェインは約束を果たすべく、未知なる世界へと旅立ってゆく。気が触れた盗賊、彷徨う巨人、言葉を話すキツネ…生きている者、死んでいる者、そして人間ですらない者たちが次々に現れ、彼を緑の騎士のもとへと導いてゆく。

【感想】

原作は未読です。アーサー王の甥、ガウェインが主人公のダーク・ファンタジー。日本のRPGやアニメにも影響を与えているアーサー王伝説に関連する話を、あのA24が作ったってことで鑑賞しました。

<想像してたものとは違うと感じる人が多そう>

ダーク・ファンタジーというと、なにやら壮大なスペクタクルを想像すると思いますが、本作に関してはまったくそんなことなかったですね(笑)僕自身も世界観は好きだったんですが、このジャンルの映画としてはだいぶ地味だと思いました。仲間との共闘や敵との攻防、驚くような幻想的な光景の数々、というのは一切ないので。まあ、元の原作がそういう感じではないってのもあるかもしれないですけど。

<ファンタジーな世界観ではあるけど、芸術寄りな印象>

原作のあらすじを読むと、細かな違いはあるものの、今回の映画は原作に忠実に映画化しているなと感じます。そして、本作の魅力は何と言っても映像美でしょう。派手さはありませんが、絵画のような美しい雰囲気を漂わせる映像は美術館に来たような気持ちにもなります。とはいえ、本編の半分ぐらいは暗い映像なので、下手したら眠くなってしまう人もいるかもしれません。そういうところも含めて絵画鑑賞っぽいんですが。そういった“芸術寄り”な作りが、海外での批評家の評価の高さに繋がっているのかなーなんて思ったりもします。

<よくよく考えればおかしな話>

それにしても、ストーリーはかなり腑に落ちませんでしたね。だって、冒頭で緑の騎士が「首切りゲームしようぜ!」つって、自ら首を差し出すんですよ。で、切られたから「来年仕返しするから、俺んとこに来て」って。行かないですよね、普通。特にペナルティも何も言われてないですし。てか、勝手に自分から切られておいてそれはないだろうと。緑の騎士は人間離れした姿で首を切られても死なないからいいんでしょうけど、ガウェインは死にますからね。でも、彼は行っちゃうんですよね。確実に死ぬってわかってるのに。まあ、死ぬとわかっていても約束を遂行するのが騎士道ってことですかね。

だから、ガウェインの旅って死ぬための旅なんですよ。ここらへん、命懸けで指輪を捨てる旅に出た『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズっぽいですけどね。まあ、こっちの映画は一人ですし、楽しいことなんて何もないですし、孤独でダークな旅路なんですけどね(笑)

あと、そもそもの話の流れを知らないとわかりづらいなって思ったのが、ガウェインが途中立ち寄ったお城での出来事や緑の騎士の正体などです。注意深く観ていればわかるんでしょうか。。。僕は観た後に調べて知りましたけど(笑)そういった中で、ガウェインが誠実で素直な人ってのは、このダークな世界観において唯一の救いかもしれません。総じて、人として正しいことをするに尽きていましたから、彼は。

<そんなわけで>

ダーク・ファンタジーとは言いながらも、未熟だったガウェインの成長譚としても捉えられる映画。アーサー王伝説の映画は過去にも幾度となく映画化されていて、大体がアクション映画なんですけど、それとは一味違った魅力が本作にはありました。

ちなみに、城の主人を演じたジョエル・エドガートンは、『キング・アーサー』(2004)でガウェインを演じているという偶然。そちらを観ている人からしたら、エモいキャスティングだと感じあるかもしれませんね。


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