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航空機内のバイオテロによるパニック映画から、大切な人を守るために何をするべきかを考えさせられるヒューマンドラマに変わる秀逸な構成の『非常宣言』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:2/3
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★★☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

   原題:Emergency Declaration
  製作年:2022年
  製作国:韓国
   配給:クロックワークス
 上映時間:141分
 ジャンル:パニック、ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

娘とハワイへ向かう飛行機恐怖症のジェヒョク(イ・ビョンホン)は、空港で執拗に付きまとってきた謎の若い男(イム・シワン)が、同じ便に搭乗したことを知り、不安がよぎる。

彼らの乗ったKI501便はハワイに向け飛び立つが、離陸後間もなくして、1人の乗客男性が突然死亡。直後に、次々と乗客が原因不明の死を遂げ、機内は恐怖とパニックの渦に包まれていく。

一方、地上では、飛行機へのバイオテロの犯行予告動画がアップされていた。捜査を開始するベテラン刑事のク・イノ(ソン・ガンホ)だったが、標的となった便には妻が搭乗していることを知る。

また、テロの知らせを受けた国土交通大臣のスッキ(チョン・ドヨン)は、緊急着陸のために国内外に交渉を開始。副操縦士のヒョンス(キム・ナムギル)は、乗客の命を守るため奮闘するが、飛行を続けるタイムリミットが迫り、「非常宣言」を発動。しかし、機体はついに操縦不能となり、地上へと急降下していく。

見えないウイルスによる恐怖と、墜落の恐怖。高度28,000フィート上空の愛する人を救う方法はあるのか?!

【感想】

2023年初の韓国映画です。ちょっと詰め込みすぎかな~っていう印象はありましたけど、パニック映画から感動のヒューマンドラマに変わっていく展開に「さすが韓国」と称賛したい作品でした。

<楽しむポイント①:パニック映画>

この映画、楽しむポイントが大きく分けて2つあるっていうわかりやすさがオススメできる理由でもあります。

まずひとつめはバイオテロ。飛行機という絶対的な密室に撒き散らされるウイルスの猛威。逃げ場のない空間で起きるパンデミックといえば、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)を思い出す人もいるかもしれませんが、本作はゾンビ映画ではありません。でも、飛行機となると新幹線以上に逃げ場がないんですよね。ウイルスに感染すると、肌の湿疹から吐血へと短時間で症状が出ちゃいます。逃げようにも治そうにもここは空の上。どうにもできません。パイロットも感染しちゃってダウン。一時は墜落する危機に陥るんですが、ここのシーンがメチャクチャ怖いんですよ。機体が急旋回・急回転で、乗客が機内を縦横無尽に叩きつけられちゃって。それで致命傷になることはないんですけど、富士急ハイランドにある絶叫マシンを超える暴れ馬のような動きに、ただただ恐怖しか感じませんでした。

<楽しむポイント②:ヒューマンドラマ>

そんなパニック映画から一転、今度は「感染した後どうするか」っていう身の振り方についてすごく考えさせられるのが、ふたつめのお楽しみポイントです。次々と死んでいく搭乗者たちはすぐにでもどこかに緊急着陸して治療する必要があるんですが、アメリカも日本も着陸拒否。韓国でさえも空港には着陸反対のデモが起こるほどです。もちろん、いじわるしているわけではありません。アメリカも日本も韓国も、自分の国を守ろうと必死なんですよ。もし、感染者たちが地上に降り立ち、空気感染で爆発的に感染被害が拡大してしまったら、それこそ国の一大事ですよね。これ以上の被害を出さないためには、着陸させないというのは至極当然の策だと思います。

そんなこと、搭乗者たちだってわかってます。わかっているんですが、このままだったらいつ死ぬかもわかりません。だから、一刻も早く治療してもらいたいという本心はあります。そこで注目したいのが、彼らの想いですよ。もし、家族や友達など大切な誰かにうつしてしまったら、そっちの方がもっと辛い。。。そう、彼らは考えました。そこでみんなが下した決断に涙が出ましたね。。。これね、コロナが流行している現状とかぶるので、すごくリアリティがあって、感情移入できちゃうんですよ。まるで、自分がウイルスをもらわないためじゃなく、大切な誰かを守るためにマスクをするっていうことへのメッセージとしても受け取れる気がしました。まあ、マスクしてるの日本だけらしいですけどね(笑)

<主演2人の印象に残るキャラクター>

そのような状況の中で、重い過去を背負うジェヒョクのトラウマとの対峙や、ク刑事が治療薬の効果を実証するために自ら犠牲になるところなど、感動的なシーンの差し込みも印象深いです。ジェヒョクにはイ・ビョンホン、ク刑事にはソン・ガンホと韓国を代表するベテラン俳優が起用されているのもミソです。ただ、この2人は確かに印象深いんですが、すでにパニック映画とヒューマンドラマの二段構えをいただいているので、正直お腹いっぱいというか、ちょっと詰め込みすぎな印象はありましたね(笑)

<そんなわけで>

パニック映画からのヒューマンドラマという前後半でガラリと変わる構成が面白い映画でした。「大切な人を守るために自分ならどうするか」っていうことを考えさせられます。ちょっと要素が多いなっていうのと、尺もやや長めってのはあるんですけど、ハリウッド映画でやりそうな規模を普通にやっちゃう韓国映画の勢いはすごいです。


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