見出し画像

運命に翻弄された究極の美少年の知られざる真実に迫った『世界で一番美しい少年』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:62/280
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【要素】

ドキュメンタリー
美少年

【元になった出来事や原作・過去作など】

・人物(俳優、ミュージシャン)
 ビョルン・アンドレセン(1955~)

【あらすじ】

"世界で一番美しい少年"と称賛され、一大センセーションを巻き起こした少年がいた。巨匠ルキノ・ヴィスコンティに見出されて、映画『ベニスに死す』(1971)に出演、美少年タジオ役の崇高な美しさで世界を陶酔させたビョルン・アンドレセン。

来日時には詰めかけたファンたちの熱狂で迎えられたが、その瞳には憂いと恐れ、生い立ちの秘密が隠されていた。

そして約50年後。伝説のアイコンは、『ミッドサマー』(2019)の老人ダン役となって私たちの前に現れ、話題となる。彼の人生に何があったのか。

ベニスに死す』に隠された真実。"世界で一番美しい少年"が見た天国と地獄。50年の時を経て、今、すべてが明かされる――。

【感想】

全人類がジャガイモに見えてしまうほどの美少年 of 美少年。『ベニスに死す』(1971)を観たことある人ならわかるだろう、あのビョルン・アンドレセンの美しさが。僕の中では彼と、若い頃のアラン・ドロン、そして、幼い頃のエドワード・ファーロングが、世界三大美男子だと思ってます(笑)

<その美しさはまさに特級並み>

本作は、美少年の名をほしいままにしたビョルン・アンドレセンの真実に迫ったドキュメンタリー映画です。冒頭で『ベニスに死す』のオーディションシーンが映し出さるんですが、映る人映る人、みんな美少年なんですよ。ルキノ・ヴィスコンティ監督は、とにかく美しい男の子を探してヨーロッパ中をまわっていたそうで、集められた子もやはりそれなりの顔面をお持ちです。雪のように白い肌に、光り輝くような金色の髪。日本人が束になっても敵わない美しさです。

そこに現れたビョルン・アンドレセン。これがもう圧倒的な顔面戦闘力で。「ああ、美しい男の子ってこういうことを言うのか」と、スクリーン越しにも見惚れちゃうほどでした。今から50年以上も前の映像なのに。もはや、セクシャルもエロティックも性別も、すべてを超越した存在でしたね。ちなみに、『ベニスに死す』では監督を含めて、スタッフのほとんどがゲイだったようで、「ビョルンを見るのは禁止」という決まりもあったらしいです。

彼の美しさはいろんな人にインスピレーションを与え、『ベルサイユのばら』のオスカルも実は彼がモデルでした。

画像1

<本人の意志とは関係なく事が進んでいく>

ベニスに死す』がヒットしてから、彼の運命は大きく変わります。世界中にその名を轟かせ、日本にも来日。空港で黄色い声援を浴びながら、番組やCMに引っぱりだこ。こう言ってはなんですが、意味不明なCMソングを歌わせられ(しかも日本語で!)、レコードまで発売。「この美しい顔に何させとんじゃ!」と思いましたけど(笑)

ただ、ビョルン本人はまったく状況を理解しておらず、言われたことを言われたままこなすのみ。まわりからの人気と自分の中での実感値がまったくリンクしないので、不安しかなかったそうです。それもそうですよね、だって、この前まで普通の学生生活を送っていた子が、いきなり美少年としてもてはやされるわけですから。

ヴィスコンティ監督にはパリのゲイ・コミュニティに連れて行かれたり、日本に来てからは連日のハードスケジュールをこなすために薬物を飲まされたりと、かなり大人に操られていたようで、彼の青春時代が自分の意志とは無関係に過ぎてしまったことは可哀想だとも思います。

直近では、『ミッドサマー』(2019)への出演が話題でしたね。だいぶおじいちゃんに見えますが、当時まだ64歳です。長く伸びたボサボサの髪とヒゲが実年齢より老けて見せますね。さすがにここまで来たら自分の意志での出演だとは思いますが、彼自身、俳優にはなろうと思ってなったわけではなく、気づいたらなってたという、ある意味羨ましいキャリアの築き方です。

<知られざるプライベート>

幸い仕事には恵まれたものの、父親は現在に至るまで誰かわからず、母親も自殺、祖母に育てられてきました。彼の美しいながらもどこか影のある雰囲気というのは、そういう環境も関係しているのかも、、、?なお、祖母は彼を有名にしたかったそうで、ビジネス的なことばかり考えていたそうです。あまり悪くは言われていませんでしたが、毒親ならぬ毒祖母みたいな感じだったんですかね、、、?特に、母親の死はかなりショックだったようで、その詳細は最近になってから知ったようなシーンもありました。

さらに、自身も30代で父親になっていますが、第二子である長男を乳幼児突然死症候群で失っており、それが原因で酒に溺れた経緯もあると話しています。すべては自分の愛情が足りなかったからだと、かなり自責の念に駆られているところが印象的でした。

今は恋人と暮らしているものの、家事に疎いのかちょっとだらしない生活が目立ち、恋人にも彼の配慮のない対応を非難される一幕もあります。

<その他>

「世界一の美少年」として一世を風靡したビョルン・アンドレセン。誰もが羨む美貌とキャリアを持っていましたが、すべてはまわりの大人たちが騒いでいただけで、本人の意志はそこにはありませんでした。彼の生き様と苦悩を知れるいいドキュメンタリー映画なのでオススメですね。


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?