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毒娘というか普通に毒親じゃね?って思った『毒娘』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:42/42
  ストーリー:★★☆☆☆
 キャラクター:★★☆☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★☆☆☆

【作品情報】

   原題:-
  製作年:2024年
  製作国:日本
   配給:クロックワークス
 上映時間:105分
 ジャンル:ホラー、スリラー
元ネタなど:なし

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
夫(竹財輝之助)と娘の萌花(植原星空)と3人で中古の一軒家に越してきた萩乃(佐津川愛美)。家庭に恵まれなかった彼女にとって、夢に見た幸せな家庭。

しかし、ある日外出中の萩乃に萌花の悲痛な声で助けを求める電話がかかってくる。

「ショートケーキとコーラ、買ってきて」

慌てて帰宅した萩乃が目にしたのは、荒れ果てた我が家と洋服をずたずたに切り裂かれた萌花、そして萌花に馬乗りになって大きな鋏を握りしめた見知らぬ少女の姿だった。

その少女の名前は<ちーちゃん>(伊礼姫奈)。かつてこの家に暮らしていたが、ある事件を起こして町を去ったはずだった。

彼女の存在が、一見幸せに見えた萩乃たち家族が押し隠そうとしていた「毒」を暴き出し、悪夢のような日々の幕開けを告げる…。

【感想】

壮絶ないじめに遭った挙句、家族を殺された主人公による復讐劇を描いた『ミスミソウ』(2017)。同級生をいじめて殺害しながらも、その後肩身の狭い生活を余儀なくされる少年と母親を描いた『許された子供たち』(2020)。いずれも精神的にえぐられるような想いをしたインパクト大の映画だったので、本作はそれらを手がけた内藤瑛亮監督の最新作ということで期待に胸を膨らませての鑑賞でした。がしかし、実際に観たら個人的には肩すかしを食らったような印象を受ける内容でしたね。

<やべぇやつのにヤバさが伝わってこないちーちゃん>

この映画はちーちゃんというやべぇ少女によってひとつの家族がズタボロにされていく話です。ちーちゃんは萩乃たちが引っ越してきた家の前の住人らしく、ある事件をきっかけに一家は引っ越したものの、ちーちゃんだけはその家に執着し、時々戻ってはそこに暮らす人たちにいたずらをしているという。わからないのがその動機なんですよ。なんでちーちゃんがその家に執着するのかが一切描かれないので、本当にただのやべぇやつにしか映りません。せめて「ちーちゃんは家族が大好きで」とかっていう設定でもあればいいんですけどね、そういうのもなく、ちょっともったいなく感じました。

なお、この映画は前日譚が漫画化されているんですが、それを読んでも先に書いた「ある事件」のいきさつがわかるだけで、ちーちゃんの人物背景についての理解が深まるわけではなかったです。それならもうただの快楽殺人者という設定にしてくれた方が潔かった気もするんですけどね(笑)ただ、その前日譚の方が内藤瑛亮監督作品っぽい感じがしたので、映像化するなら個人的にはそっちの方が観たかったです。

<見方を変えればこの映画は"毒親"の物語>

むしろ、この映画はそんなちーちゃんに感化された萌花の物語と捉えた方がいいかもしれません。ヤバいちーちゃんに目がいきがちですが、おとなしくていい子だった萌花が、だんだんとちーちゃんのように人の道を踏み外していく過程の方が見ごたえありますよ。萌花が抱えていた密かな鬱憤が、ちーちゃんというある意味暴力の権化によって解き放たれていきます。

それもこれも、元を辿れば萌花の父親に原因があったと言ってもいいんですよね。一見、いいパパに見えますが、その実態は自分勝手かつモラハラ気質であり、彼のせいで萌花の幸せな家族生活は幕を閉じざるを得なくなってしまうんですから(萩乃は父親の再婚相手です)。なので、この映画のタイトルは萌花の立場に立つならば、『毒娘』よりも『毒親』の方が自然に感じるんじゃないかなと。逆に言えば、『毒娘』というタイトルにするなら、もっと大人を翻弄する子供を描いた方がしっくりきたし、先に挙げた前日譚の方が『毒娘』というタイトルにふさわしかったかもしれません。

<そんなわけで>

ホラーというよりもスリラー寄りの映画でしたかね。ちーちゃんもハサミを持って大暴れはするものの、言うほどスプラッターではありませんし、幽霊や怨念といった超常現象の類でもありませんし、個人的にはそこまで怖さは感じませんでした。この映画を観る前でも観た後でもいいので、前日譚である『ちーちゃん』(2024)は読むことをオススメしたいです。ひとつのお話としても普通に面白かったので。


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