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父親の狂気が世界チャンピオンを2人も生んだ『ドリームプラン』

【個人的な評価】

2022年日本公開映画で面白かった順位:10/30
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★★☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【ジャンル】

伝記映画
ヒューマンドラマ
スポーツ
テニス

【原作・過去作、元になった出来事】

・人物(ビーナス、セレーナ姉妹の父親)
 リチャード・ウィリアムズ(1942-)

【あらすじ】

2人の娘を世界最強のテニスプレイヤーに育てる夢を持つ父親リチャード(ウィル・スミス)。テニス未経験の彼は、娘たちが生まれる前から「常識破りの計画=ドリームプラン」を独学で作成。その無謀なプランと娘たちの可能性を信じ続けた父は、どうやって2人の世界チャンピオンを誕生させたのか?

【感想】

女性テニス界に革命を起こしたビーナス・ウィリアムズとセレーナ・ウィリアムズ。本作は、そんな彼女たちを育て上げた実の父親の伝記的な映画となっています。

<己の道を盲信して猛進する父親>

この映画、とにかく父親の狂気とも言える子育て手法がすごいんですよ。『二月の勝者 ―絶対合格の教室―』という漫画で、「中学受験は母親の狂気と、父親の経済力」なんて言葉がありますけど、本作に関しては「父親の狂気」そのもの。まあ、母親もそれに近しい雰囲気はあったんですけど、父親が突出してましたね。

バージニア・ルジッチというプロテニス選手がいるんですけど、彼女が4日間で4万ドル稼いだのを見たリチャードは、生まれてくる2人の娘をプロテニス選手にしようと決意します。そこから、その道のりを78ページのプランにまとめ上げたんですけど、軌道修正せず、愚直にその通りに進めていきます。

夜間警備の仕事をしつつ、娘たちには雨の日でも構わず練習させ、自分は無料でコーチをしてくれる人を探す日々。実績もコネも金もないのに、自分のプランに絶対的な自身を持ち、「将来ビッグになって大金を稼ぐからタダで教えて」という営業トーク。ほとんどの人から門前払いにされてました。

<参考にしたい父親のスタンス>

そんなぶっ飛んだリチャードですが、いくつか大事だなと思える部分があったので、3つほど記しておこうと思います。

①執念の営業

もうこれが一番ですよね。有名なコーチのアタックリストを作成し、断られても断られても次々に営業をかけていきます。直接、プロテニス選手の練習場にも赴き、強引に娘たちのプレーを見させて、ようやくコーチを引き受けてくれる人を見つけます。もはや執念の賜物だと思いました。自分だったら、あんな煙たがられるようなやり方できませんよ。自分の娘たちを信じてやまないその盲信っぷりには頭が上がりません。まあでも、娘たちに実力があったから成立する話ではあるんですけどね。プロを教えるコーチをうならせるだけの実力あってこその結果ではあります。

②洗脳かってぐらいのイメトレ

これも大切なことだと思いました。娘たちには常に夢や目標を口にさせるんですよ。「グランドスラムで優勝する」とか。で、リチャード自身も娘たちにポジティブな言葉を常に投げかけています。「おまえに勝てるやつはいない」って。ずっとそんなことを続けているためか、娘たちはいつも自身に満ち溢れているんです。インタビューアーに、「目指しているプロテニス選手は?」と聞かれても「私です」と答えるほど。本気で自分にならできると信じ切っているのは、常にそういったことを口にしているからだと思いました。ハッタリも言いまくれば真実になるなんて聞きますけど、まさにその通りですね。

③教えるのはテニスだけじゃない

もちろん、テニスの練習が基本ではあるんですが、優先するべきは学業だったりします。ゆーても、当時のビーナスもセレーナも子供ですからね。他のプロテニス選手のように、ジュニアの大会に出たり、練習だけの生活にしたりと、テニス漬けにはしませんでした。練習をキャンセルしてディズニーワールドにも行きますし、外国語も習わせ、メディア対応の練習さえも行います。

中でも一番印象的だったのは、「自慢はするな」ということでしたね。ジュニア大会で優勝して喜んだのも束の間、テニスが終わったらもうその話はおしまいなんですよ。喜ぶこと自体はいいんですけど、自慢に聞こえるようなことはダメ、謙虚であれと。人としてバランス感覚を持たせようとするのはよかったです。

<逆に参考にしたくない部分(笑)>

とはいえ、あまりにも自分のプランにこだわりすぎる余り、他の人の意見を一切聞かない頑固さもリチャードにはありました。育成はコーチに一任するも、必ず口を挟むし、試合に出たがる娘の意向も無視。自分のプランが絶対だと信じ切っているから、他の人の意見なんて聞かないんですよ。そのことで、コーチや妻と軋轢を生むこともしばしばありました。一般論として、もう少し柔軟性があってもいいのではとも感じましたね。

リチャードの子育てというか、娘たちの接し方って、完全に親の敷いたレールの上を歩かせているだけにも見えます。でも、本人たちは嫌がっておらず、むしろ前向きに捉えていることが多かったですし、実際に世界的な選手になったので、結果オーライではあるんですけどね。

ただ、この映画、ドリームプランの内容はわからないままなんですよ。てっきり、何歳までに何をどうやるのかってことが明かされると思ったんですけどね。テニス未経験のリチャードが、どういうプランを作ったのかは知りたかったです。

<そんなわけで>

姉妹で世界的な女子テニス選手になったビーナス・ウィリアムズとセレーナ・ウィリアムズ。その2人がどういう育ち方をしたのかが知れるという意味では、とても面白い映画だと思いました。ぜひご覧あれ。


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