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不倫全開の若き瀬戸内寂聴に驚くけど、その不倫相手の妻の寛大さが菩薩級だった『あちらにいる鬼』

【個人的な満足度】

2022年日本公開映画で面白かった順位:174/186
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★☆☆☆

【作品情報】

  製作年:2022年
  製作国:日本
   配給:ハピネットファントム・スタジオ
 上映時間:139分
 ジャンル:ラブストーリー
元ネタなど:小説『あちらにいる鬼』(2019)

【あらすじ】

1966年、講演旅行をきっかけに出会った長内みはる(寺島しのぶ)と白木篤郎(豊川悦司)は、それぞれに妻子やパートナーがありながら男女の仲となる。

もうすぐ第二子が誕生するというときにもみはるの元へ通う篤郎だが、自宅では幼い娘を可愛がり、妻・笙子(広末涼子)の手料理を絶賛する。奔放で嘘つきな篤郎にのめり込むみはる、すべてを承知しながらも心乱すことのない笙子。

緊張をはらむ共犯とも連帯ともいうべき3人の関係性が生まれる中、みはるが突然、篤郎に告げた。

「わたし、出家しようと思うの」。

【感想】

原作小説は未読です。今年の6月に瀬戸内寂聴のドキュメンタリー映画『瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと』(2022)を観て、彼女の半生に興味を持ったので鑑賞しました。いやー、男女共に「貞操観念とは」と思う内容でしたね(笑)この原作を書いたのが、その不倫の渦中にいた男の息子ってのもまたすごいですけど。

<ぶっ飛んだキャラクターを堪能する映画>

この映画、個人的にストーリー自体はあまり刺さらなかったんですよ。それは不倫がどうとか、そういうことじゃないんです。単純に話の展開に抑揚を感じられなかったんです。基本的には、みはると篤郎の奔放っぷりがメインに映し出されるので、ストーリーよりもこの2人のキャラクターを楽しむのが正解なのかなと思いました。

作家ってモテるんですよねー。太宰治もそうでしたけど。この映画でも、とにかく篤郎のモテっぷりがハンパなかったです。女性を惹きつけちゃう何かがあるんですよ、彼には。で、来た女性はみんな食べちゃう。食べちゃう。妻も娘もいるのにおかまいなし、欲望のままに生きてましたね。

まあ、それはみはるもあまり変わらないんですけど(笑)彼女、元々は最初の夫の教え子(高良健吾)と不倫して駆け落ちしたんですよ。その後に篤郎と出会って付き合うんですけど、別の若い男(佐野岳)ともアバンチュールを楽しんだりして。

そうやってお互いがお互いに自由にやりながらも、交際は依然として続いていきます。一見、それぞれの自由をお互いに認め合う仲なのかなと思いきや、いざ相手が別の人と何かあると嫉妬するっていう、意外にも自分勝手な関係性ではありましたね自分のことは棚に上げちゃって(笑)

<一番ぶっ飛んでいるのは篤郎の妻ではなかろうか>

そんなみはると篤郎の関係性がメインのはずなんですが、個人的にこの映画で一番すごいなって思ったのが、篤郎の妻である笙子ですよ。夫の火遊びを知っていながら、一切お咎めなし。むしろ、「そういう生き物だ」と言わんばかりの達観ぶりを見せてくれます。篤郎が妊娠させて2回も中絶させた女性に、お見舞いと謝罪に行きますし、別の女性が自宅に押し掛けてきたときも、篤郎と言い合っているのを横目にのどかにお茶をすするほど肝が据わっていました。ついには、出家を決めたみはるの元に「あなたがいた方がいい」と篤郎を送り出す始末ですからね。できた妻というか、もうね、器が大きすぎるなと。いや、器が大きいとかそういうレベルじゃない気もしますけど。挙句の果てに、みはるを自宅に招いて食事を振舞っちゃうんですよ。これもうアウトすぎる構図だろって。夫婦と娘2人の中に、夫の元不倫相手がいるんですよ?本人たちがいいならいいけど、、、ちょっと頭と心のネジが何本か取れてるんじゃないかって(笑)

<そんなわけで>

瀬戸内寂聴の若い頃が波乱万丈だったというエピソードを映像として観れる興味深い映画ではありました。寺島しのぶさんも豊川悦司さんも体当たり演技で見ごたえあるので、このお二方の愛と肉欲にまみれた妖美な絡みを観たい方はぜひ劇場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

ちなみに、みはるが元夫の教え子と住んでいた家、『月の満ち欠け』(2022)で瑠璃と正木が住んでいた家と同じじゃないかっていう。監督同じですし(笑)


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